青木淳+西澤徹夫の設計で日本で現存最古の公立美術館建築「京都市京セラ美術館」が生まれ変わった。
2020年3月21日にリニューアルオープンした「京都市京セラ美術館」。ここはそれまで「京都市美術館」として知られ、そのルーツは、1933(昭和8)年に開館した「大礼記念京都美術館」に遡る。日本に現存する最古の公立美術館建築が87年の歴史を活かしてリノベーションを完成させたとして、建築業界のみならず世界中から注目を集める、その全貌とは一体?
生まれ変わった日本最古の公立美術館建築「京都市京セラ美術館」
昭和天皇の即位を記念した美術館建設として1933(昭和8)年「大礼記念京都美術館」の名で開館し、現存最古の公立美術館建築としても知られる「京都市京セラ美術館」。
格式ある歴史的建造物は、今回のリノベーションで、機能と巧みな建築美が調和し、そのモダンで美しい外観からも87年の歴史を感じることができる。
リノベーションを手掛けたのは、建築家・青木淳+西澤徹夫
2020年3月21日にリニューアルオープンし、美術界のみならず建築ファンからも熱い注目を集めている美術館「京都市京セラ美術館」。リノベーションを手掛けたのは、建築家・青木淳と西澤徹夫だ。さらに青木淳は、館長も務めるという異例の就任に世間を驚かせたことでも話題を集めた。
青木淳と西澤徹夫による今回の設計では、建造物自体のポテンシャルを活かしながら「建物の周辺エリアとの融合」を図る。鑑賞を目的にしていない人々も自由に通り抜ける環境にすることで、街へと大きく開かれた美術館へと進化した。
メインエントランスから左右に伸びる!「ガラス・リボン」 のファザード
美術館前から外観を眺めると、まず目を奪われるのは、地面に沿うように左右に伸びる窓ガラスのファザード。まるで面に美しいスリットが入ったようなその様は、重厚なレンガ建築とは対照的な、開放的な明るい雰囲気が印象的だ。
これは4年前、SANAAや隈研吾など日本を代表する建築家たちが参加した改修プロポーザルで、取り上げられた計画の1つ。広場を掘り下げ地下にエントランスを設けることで「歴史的建築の外観を残しながらも革新的なイメージをも持たせる」アイデアで話題になった。
外からも、奥に設置されたミュージアムショップやカフェを眺めることができ、美術館内の賑わいをリアルに眺めることができる機能は「美術館の内と外とを繋ぐ場」としても活躍している。
内部へ進むと、天井高16mの大空間「中央ホール」が迎える
内部の動線に沿って、天井の低い空間を抜けると現れるのは天井高16mの明るく真っ白な大空間だ。ここは美術館のハブとなる「中央ホール」。天井へ柔らかく繋がる美しい螺旋階段が躍動感を演出しながら、心地よく空間を印象づける。
構造や意匠を引き継ぎながらも、採光を重厚な漆喰壁に反射させて拡散する空間づくりは安心感があり、まるで訪れた人々の呼吸を整えてくれているようだ。
北回廊の中庭「光の広間」
これまで使われていなかった中庭は、光が差し込む室内空間に変化を遂げた。中庭らしいオープンでリラックスした空間を持たせつつも美術館としての機能を持って生まれ変わった多機能な大空間だ。
昭和初期の雰囲気がそのまま残った空間が美しく残る
館内では円形窓やステンドグラス、大理石の壁など、昭和初期の建造物がそのまま残される。これまでここで刻まれた歴史や過去を引き継ぎ魅せることで、深みある建造物へと進化したその空間は息を飲む美しさだ。
84年の歴史を大切に継承されつつも、現代の建築を代表する建築家によるアイデアやデザインが調和した京都市京セラ美術館は、ここでしか感じられない唯一無二の存在感がある。
新築の現代美術ギャラリー「東山キューブ」も併設
併設された新しいアートギャラリー「東山キューブ」は現代アートに対応し、クラシカルな本館とは対照的なホワイトキューブのアートスペースだ。日本の伝統だけでなく、海外からの注目も高い「京都」という地域性に相応しく、重厚感と近代感を持ち合わせた外観が印象的である。
屋上庭園「東山キューブテラス」は、日本庭園と雄大な東山を望む見晴らしを堪能することができる。
新設された展示空間「ザ・トライアングル」
東山キューブと同じくして、同時期に新設された展示空間「ザ・トライアングル」。軽やかに繋げられたガラス面のファザードと、重厚なコンクリート屋根が水平に伸びる外観は、京都らしい軽快さと威厳を併せ持った雰囲気がある。
形状が三角形であることと、「作家・美術館・世界(鑑賞者)」の3者を結ぶ拠点になることを意味して「ザ・トライアングル」と名付けられ、京都にゆかりある新進アーティストの展示を主に行っている。
「京都らしい艶やかさ」が残る美しい京都市京セラ美術館
青木淳が改修を手掛け、館長も務める京都市京セラ美術館 。リニューアルオープンしたこの美術館は、既存の建築を活かしながらもアートとコミュニティーを柔らかくつなぐ進化を遂げた「京都らしい艶やかさ」が残る美しい空間だ。
京都市京セラ美術館
営業時間:10:00~18:00 (月曜日・祝日の場合は開館)
URL : https://kyotocity-kyocera.museum
住所:〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町124