政策金利1%到達 31年ぶりの水準が不動産投資に突きつける「真の収益力」とは
2026年6月16日、日本銀行は金融政策決定会合で政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げることを決定しました。1995年以来、約31年ぶりの高水準です。わずか2年あまりのあいだに、マイナス金利の解除から始まった金利正常化の流れがここまで進んだことは、日本の金融市場における歴史的な転換点といえます。賃貸オーナーや不動産投資家にとって、この1%という数字が持つ意味は単純ではありません。返済負担が増すのか、賃料は上げられるのか、次の利上げはいつなのか。7月を迎えた今、改めて整理が必要なタイミングです。本記事では、政策金利1%到達が不動産投資に与える影響と、これから求められる「真の収益力」の考え方を解説します。
変動金利はいつ、どれだけ上がるのか

メガバンクは6月の変動型の住宅ローン金利を据え置いたが、日銀の利上げから返済額の増額までにはタイムラグがある。変動金利の見直しは多くの金融機関で4月と10月の年2回のタイミングで行われるため、今回の利上げの影響が返済額に反映されるのは早くても2026年10月以降と考えられます。今回の利上げを受け、市場・エコノミストの間では次回の利上げを年内(2026年10月・12月)と見る向きが大勢で、政策金利は最終的に1.5%〜2%程度へ向かうとの予想が多くなっています。ただし、物価面では、足元でイラン情勢の落ち着きによって原油高のトーンダウンが見られるほか、今後予想されるアメリカの利下げが円安に歯止めをかけ、輸入物価を押し下げる効果が期待されており、利上げペースには不確実性も残ります。賃貸経営においては「いつ上がるか」よりも「上がった場合の収支への影響をあらかじめ計算しているか」が重要です。
「金利コストを織り込んだ真の収益力」が問われる時代へ

2013年から続いた「金利のない世界」は、不動産投資の金利負担を最小限に抑え、レバレッジ効果を最大限に享受できる時代でしたが、今、投資家や事業会社は「金利コスト」を織り込んだ真の収益力が試される局面に立たされています。低金利時代には、利回りが薄くても節税や家賃保証を理由に成立していた投資スキームが、金利上昇によって実質的な収益を生まなくなるケースが出てきています。これからの不動産投資で求められるのは、金利が1%上昇した場合でも月々のキャッシュフローがプラスを維持できるかどうかという、シンプルかつ本質的な問いへの答えです。表面利回りではなく、実際の手残り額で物件を評価する習慣が、これまで以上に重要になっています。
利上げは「賃料上昇」も後押しする

利上げによるコスト増だけを見てネガティブに捉えるのは片面的です。実際、東京23区では家賃の上昇傾向が鮮明になってきており、2024年11月の家賃相場は前年同月比0.9%UPと実に30年ぶりの大きな上昇幅となりました。この動きは今後も金利上昇とともに継続する可能性があります。利上げの背景には賃金・物価の好循環があり、2026年の春闘において大企業から中小企業まで歴史的な高水準での賃上げが3年連続で確定しています。賃金が上がれば住居に払える金額も増え、家賃の上昇余地が広がります。返済コストの増加と家賃収入の増加が同時進行する環境において、高品質なファミリー向け戸建賃貸住宅は、家賃を引き上げながら入居者に選ばれ続けるポジションを確保しやすいと言えます。
日銀審議委員は「まだ緩和的」と明言している

2026年6月25日に日本銀行政策委員会審議委員の田村直樹氏は、「足もとの政策金利は、中立金利を下回る緩和的な領域にあります」と発言しており、「今のうちから政策金利を中立金利に近づけておくことが重要」との見方も示している。つまり、政策金利1%はゴールではなく、正常化の途中という位置づけです。今後も段階的な利上げが続くことを前提に、収支設計を組み直しておくことが長期的な賃貸経営を守るうえで欠かせません。「1%になったから様子を見よう」ではなく、「次の利上げが来ても耐えられる構造かどうか」を今のうちに確認することが、7月の重要なアクションです。
「本当に収益を生む構造かどうか」を問い直す転換点
政策金利1%の到達は、不動産投資が「本当に収益を生む構造かどうか」を問い直す転換点です。借入額を抑え、安定した家賃収入を確保し、シンプルな収支構造を持つ戸建賃貸住宅は、金利コストを織り込んでもなお競争力を維持しやすい投資手法です。市場の変化を追い風に変えられるかどうかは、今この瞬間の判断にかかっています。