コクヨとVUILDが共創した大型ベンチ「GGO Biomorphic Lobby Furniture」がイタリアの国際デザイン賞「A’ Design Award 2026」金賞を受賞

直線と静謐さで整えられたオフィスロビーに、全長16メートルにわたって有機的な曲線が横たわる。そのベンチは、植栽と一体となって生命感を帯び、人々が自然と足を止め、座り、語り合う「場」を生み出します。コクヨとVUILDが共創したこの大型什器「GGO Biomorphic Lobby Furniture」が、2026年5月、イタリアで開催される世界最大級の国際デザイン賞「A’ Design Award & Competition 2026」のFurniture Design部門で金賞(Gold Award)を受賞しました。

グラングリーン大阪のロビーに生まれた、生命感ある空間装置

この作品が設置されているのは、コクヨの新本社「KOKUYO HQ」が入居するグラングリーン大阪 パークタワー2Fのオフィスロビーです。直線的で静謐な建築空間の中に、自然環境と連続する躍動感をもたらすことを目的として、ベンチと植栽を一体化した大型の空間造作が計画されました。

全長16mと8mの2台のベンチ、および植栽ポッド1台で構成されるこの什器は、「単なる座具」という家具の役割を大きく超えています。人々の滞在・交流・回遊を自然に促す「場の装置」として機能することが目指されており、ロビーという通過の空間を、人が留まりたくなる場所へと変えています。

粘土の手触りから、6,120個の木製パーツへ

GGO Biomorphic Lobby Furnitureの設計プロセスは、デジタルからではなく、アナログから始まりました。人が本能的に心地よいと感じる有機的なかたちを追求するために、まずコクヨが手捏ねの粘土模型で造形を検討。その粘土模型を3Dスキャンし、パラメトリックに最適化するアナログとデジタルを融合させた手法で実施設計へと展開したのがVUILDです。

完成したベンチは、国産のナラ集成材から切り出した6,120個のパーツで構成されています。均質で扱いやすい木材ではなく、硬さゆえに加工難度が高いナラを選んだのは、その木目の美しさと仕上がりの質感を優先した判断です。VUILD独自のデジタルファブリケーション技術と職人の手仕上げを組み合わせることで、精緻さと温かみが共存する空間体験が実現しました。

「不可能な規模」を可能にした、プロセスの再設計

6,120個にわたる特注パーツと全長16mの滑らかな曲面は、従来の設計・加工手法では現実的に成立し得ない規模のものづくりでした。VUILDはこのプロジェクトにおいて、設計・エンジニア・加工・施工の各チームが密に連携し、プロセスそのものを再設計することで対応しています。

スキャンデータの補正処理を自動化するアルゴリズムの開発、3Dモデルから約8割の図面を自動生成しPDF出力する独自ツールの構築により、クライアントとの承認工程を大幅に高速化。設計形状を最終段階まで調整できる柔軟なプロセスを確立しました。

ナラ材の硬さに起因する「逆目ぼれ(ささくれ)」のリスクに対しては、素材特性を前提としたパラメーターをテンプレート化して一括適用できるツールを開発し、切削の段階から美しい仕上がりを実現。また、パーツを板材に効率よく配置する「ネスティング」の工程では、通常30分近くかかる処理を独自ツールによって5〜10秒にまで短縮するなど、工程のあらゆる場面で新たな技術開発が行われました。

施工においては、工場でパーツをあらかじめ長さ600〜900mmのユニット(計47本)として組み上げ、現場へ搬入する手法を採用。直線と曲線の接合部におけるわずかな歪みも一本ずつ確認しながら組み上げることで、全体の滑らかなラインが保たれています。

「A’ Design Award」が評価した、設計と技術の誠実な統合

A’ Design Award & Competitionは、建築・プロダクト・家具・グラフィック・サービスなど多様な分野を対象にイタリアで開催される、世界最大級の国際デザイン賞のひとつです。デザイン性に加え、革新性・社会性・機能性など多面的な観点から審査が行われます。今回の金賞受賞は、有機的な造形の美しさだけでなく、アナログとデジタルを融合した設計プロセスの革新性、そして6,000を超えるパーツを高精度に実現したものづくりの誠実さが、総合的に評価された結果といえます。

コクヨとVUILDという、異なる知性の融合

このプロジェクトの核にあるのは、コクヨとVUILDという二つの組織が担った役割の明確な分担と融合です。基本設計とコンセプトの粘土模型をコクヨが担い、実施設計と制作をVUILDが引き受けました。

VUILDはデジタルテクノロジーによって建築産業の変革を目指す設計・ものづくり集団として、デジタルファブリケーションを軸に複雑かつ大規模な木製構造物の設計・製作を手がけてきた組織です。代表・秋吉浩気のもと、設計者・デザイナーの自由な発想を形にするパートナーとしての役割を担ってきたVUILDの蓄積が、コクヨが手で捏ねた粘土の有機的なかたちを、6,120個の木製パーツへと変換することを可能にしました。

手でこねた粘土のかたちが、デジタルファブリケーションを経て6,120個の木のパーツへと変換され、人々が自然と足を止めたくなる空間へと育っていく。その過程そのものが、このプロジェクトの最大の成果かもしれません。

A’ Design Award & Competition 2026 Furniture Design部門 Gold Award

受賞作品名:GGO Biomorphic Lobby Furniture
受賞者:VUILD株式会社、コクヨ株式会社
基本設計:コクヨ株式会社
実施設計:VUILD株式会社、コクヨ株式会社
制作:VUILD株式会社
設置場所:グラングリーン大阪 パークタワー2F「KOKUYO HQ」オフィスロビー
受賞発表URL:competition.adesignaward.com/180101
技術プロセス詳細(デジタル編):note.com/vuild/n/naf0224ec9862
技術プロセス詳細(加工・施工編):note.com/vuild/n/nfbabeadc925b