フィンランドでアアルトが都市計画を手掛けたロヴァニエミに建つ自身最期の建築作品「ラッピアホール」

柔らかな曲線を持つ脚が特徴的なスツールやシンプルながら美しいフォルムを持つペンダントライトなど、温もりを感じさせる木材や有機的な曲線を多用した優しさを感じさせるデザインが特徴のアルヴァ・アアルト。そんな彼が亡くなる前に竣工した最後の建物がフィンランドに建つラッピアハウス。オーロラをイメージしたような造形の外観が特徴的な建築です。

アアルトによって計画された都市「ロヴァニエミ」

フィンランドの最北端に位置するラップランドの都市ロヴァニエミは、第二次世界大戦中に街の中心部の約90%が破壊されるなど甚大な被害を受けたことをきっかけに、アアルトに新たな都市計画を依頼しました。アアルトはロヴァニエミの町の中心部をこの地域を象徴する動物であるトナカイの頭部に見立てた都市計画を作成。トナカイの頭部をロヴァニエミの町の中心部に、スポーツスタジアムをトナカイの目とし、北、西、南へと延びる道がトナカイの角部分にあたるような構成としました。

アアルトが見届けた最後の建築

ラッピアホールはアアルトセンターとして知られる行政文化センターを、ロヴァニエミ市庁舎とロヴァニエミ市立図書館とともに構成する一つ。最初に完成したのは1968年の図書館で、ラッピアホールは1975年に完成。これがアアルトが亡くなる前に完成を見届けた最後の建築となりました。

残された市庁舎はアアルトの後妻であり建築家のエリッサ・アアルトによるプランに基づき、1986年に完成しました。

ラッピアホールはそれぞれ1960年代に建てられた放送局と音楽学校と、1970年代に建てられた多目的ホールの2つの部分から成り、全体としては1975年に完成しました。

現在ラッピアホールはロヴァニエミ劇場/ラップランドの地方劇場、地元のYle国営ラジオ局、ラップランド音楽学校に場所を提供しています。

オーロラのような波状の天井が特徴の外観

ラッピアホールのステージ部分は真っ直ぐなラインの建物正面より上に盛り上がっているため、建物の外側からもはっきりと認識できます。波状にうねった屋根の形は、自然豊かなラップランド地方の山々の景色のよう。夜になるとこれらの屋根のカーブがライトアップされてオーロラのような雰囲気に。

内部はブルーとホワイトを基調としたカラーリングが爽やかな空間。

カフェレストランもブルーを基調とした、大きな窓から差し込む光が気持ちの良い空間です。

館内には照明やスツール、テーブルなどアアルトが手掛けた家具が至る所で見られます。

ラッピアホールの多目的ホールには、80席のケロホールと100席のサヴィオホール、386席のティエヴァホールの3つのホールがあり、どのホールも幅広い種類のイベントに適応しています。

ラッピアホールは現在の用途への改善を組み込みながら、建物のオリジナルの形を保存するべく大規模な改装工事を実施、2015年に完了しました。

インテリアに施された変更は、劇場や音楽学校で働くスタッフの労働環境の改善という目的もありました。特徴的なラッピアホールの外観はそのまま引き継がれ、現在に至ります。

アアルト生涯のデザインを多角的に体感できる

アアルトが亡くなる前に完成を見届けられた、最後の作品である「ラッピアホール」。アアルトが手掛けた家具やプロダクト、生涯をかけて追求した建築のアイデアが数多く用いられた建築です。

ラッピアホール

所在地 : Jorma Eton tie 8 A, 96100 Rovaniemi
入館料 : free