建築家・神谷修平率いるKAMIYA ARCHITECTSによる、光の美しい人形師のための住まいとギャラリー「傀藝堂」
デンマーク、日本で実績を積んだ建築家・神谷修平。彼が率いる建築設計事務所「株式会社カミヤアーキテクツ」では、「世界に感動をゆり起こすクリエイティブな建築設計組織」をビジョンに、空間設計に限らずさまざまなクリエイティブでクライアントの課題解決を目指したソリューションを提供しています。
そんなカミヤアーキテクツが手掛けた、福岡の伝統工芸品の一つ「博多人形」の作り手をクライアントに迎えた住宅兼ギャラリー「傀藝堂」は、神谷ならではの繊細な光のデザインによって、人形の魅力を最大限に引き立たせた神聖な空間です。
100年以上の歴史を持つ博多人形のギャラリー
設計を依頼したのは、伝統工芸である博多人形を代々作り続ける中村人形。数々の賞を受けローマ法王にも作品を献上、博多祇園山笠の人形師でもある三代目・中村信喬氏と、東京藝術大学院を卒業後、伝統を重んじながらも現代的な解釈で新たな人形作品を生み出している四代目・中村弘峰氏の両名で活動しています。
建築は、下階を土留め擁壁を兼ねたコンクリート造のギャラリー、上階を木造住居とした、2階建ての建物です。
桜坂という「坂と擁壁」が多い地域性から着想を得た建築は、わずかな角度(鈍角)を持った三角形で立面が分割され、隣家壁と連なる立体的な擁壁のような構成です。
敷地が道路に向かってひろがった台形のため、空間の動線が偶然にも「人」という文字になりました。
このプランは回遊性を生み出し、来館者はじっくりと作品に向き合いながら滞在することができます。
人形の表情を最大限に引き出す照明計画
室内では、夜の時間が長く光のデザインに長けたデンマークでの経験を活かし、自然光と人工の光それぞれの強みを丁寧に掛け合わせることで、人形の表情を最大限に引き出しています。
また、「人」の頂点にあたるスペースには自然光が差し込む特別な展示空間を用意。
差し込む光は刻々と人形の表情を変え、時間ごとに異なる表情を味わうことができます。
「傀藝堂(かいげいどう)」の「傀」という字には、“人形師は何か大きなものによって作品を作らされている”事を後世の中村人形に伝えたいという想いが込められており、そこに“人が天に突き動かされて技を振るう”「藝」という字を合わせて、「傀藝堂」という名が冠されました。
計算された光によって人形の存在を引き立てた、神聖さが感じられる空間
100年以上の伝統を誇る博多人形師・中村人形のギャラリー「傀藝堂」。日本、そしてデンマークでの経験を活かした神谷ならではの光の哲学によって、人形の魅力を最大限に引き出した、地域伝統に根差した建築となりました。この先100年と続く、中村信喬、中村弘峰両人形師の作品をたっぷり味わうことができる貴重な場所となりそうです。
中村人形ギャラリー「傀藝堂(かいげいどう)」
所在地 : 福岡県福岡市中央区桜坂1-10-46 1F
営業時間:13時~17時
休廊日:公式サイトのカレンダー、または SNSをご確認ください。
入廊料:無料
TEL:092-791-5316
公式サイト:https://www.nakamura-ningyo.com/gallery/