ロンドンのジャパン・ハウスでNUNO須藤玲子のサステナブルな布づくりに注目する展覧会!

5⽉17⽇(⽉)から、その⾰新的な布作りで世界的に注⽬されるテキスタイルデザイナー須藤玲⼦の展覧会『MAKING NUNO Japanese Textile Innovation from Sudō Reiko 須藤玲⼦:NUNO の布づくり』がスタート。⽇本のテキスタイルへの関⼼の⾼さもあり、ロックダウン緩和が実施されたばかりのロンドンで現地の⼈々の注⽬を集めている。⼀部コンテンツは⽇本からオンラインでの参加・鑑賞が可能だ。

アイデアの源泉から⽣産⼯程までを明らかにする

London, UK, 20 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

永年独⾃の布づくりに取り組んできたテキスタイルブランドNUNO のディレクター、須藤玲⼦のアイデアの源泉から⽣産⼯程までを明らかにする。

London, UK, 20 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

この展覧会は2019 年に⾹港のアートセンターCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)で、⾼橋瑞⽊(CHAT エグゼクティブディレクター兼チーフキュレーター)のキュレーションにより⼤きな成功を収めた展覧会をベースにしながら、須藤のクリエイションのサステナブルな側⾯に特に焦点をあてたものだ。

会場ではアートディレクションを担当したパノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー)の齋藤精⼀による⾳と光、映像を交えたインスタレ−ションで⼯場での⽣産⼯程を再現するほか、アイデアの源泉となる素材、スケッチ、プロトタイプなどを展⽰し、その⾰新的な布づくりの全貌に迫るものです。

シルクの廃物利⽤「きびそ」プロジェクト

London, UK, 8 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

須藤のサステナブルな布作りに注⽬した本展のみどころのひとつが、鶴岡シルク株式会社(⼭形県)との「きびそ」をつかったプロジェクトの展⽰だ。

London, UK, 8 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

蚕が繭をつくるときに最初に吐き出す太くて硬い⽷である「きびそ」は、これまで織物には不向きとして捨てられていたが、同社は須藤のアドバスによりその「きびそ」を細い⽷に加⼯する技術の開発に成功。こうして無駄なく原材料を⽤いることで誕⽣した「きびそ」を⽤いたテキスタイルは、独特の張りと天然の保湿性、抗菌性を備え、環境負荷を抑えられるだけでなく、魅⼒あるあらたな素材としてその普及が進んだ。

⽇本の繊維産業の可能性を広げるサステナブルな取組み

London, UK, 20 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

⼀⽅、本展では伝統的な染織技術を最新の素材や製造技術と融合することで、独創的なテキスタイルを⽣み出す須藤の⼿法についても、持続可能性という観点から再定義を試みている。須藤による全国の⼯場や職⼈とのコラボレーションは、その多くが存続の危機に瀕している⽇本の染織産地の産業としての可能性を広げ、時代に即した技術の伝承を促すサステナブルな取組みであるといえる。

London, UK, 20 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

会場ではその事例として箔押しやちりめんの技法を独⾃の解釈で布作りに⽤いる京丹後での取組みや、熱によって収縮する⼯業⽤素材を活⽤した《ジェリーフィッシュ》の製造⼯程などを紹介。

海外で注⽬される⽇本の染織文化

London, UK, 8 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

着物によって発展した⽇本の⾼度な染織⽂化は世界に類をみない。また今日、世界的に着物のコレクションが盛んになるなど、欧⽶を中⼼に⽇本の染織⽂化への関⼼が⾼まっている。こうした背景もあり、本展のプレイベントとして開催されたパネルディスカッションでは、オンライン予約可能枠を越えるほどの人気を集めた。テクノロジーが急速に発展し、社会のあり方が大きく変化する今、現在進⾏系で持続可能な⽇本の布づくりを続ける須藤のクリエイションが、⽂化を越えて変化の時代を⽣きる人々のヒントとなるだろう。

鶴岡の「きびそ」の⼯場⾒学など、展覧会の⼀部コンテンツは⽇本からオンラインで参加・視聴が可能だ。

『MAKING NUNO Japanese Textile Innovation from Sudō Reiko 須藤玲⼦:NUNO の布づくり』

期間:2021年5⽉17⽇(⽉)− 7⽉11⽇(⽇)
会場:Japan House London
⼊場無料(予約制)

オンラインイベント『⼯場⾒学:サステナブルなテキスタイル「きびそ」』

「きびそ」の糸をつくる製糸工場をオンラインで結び、その生産の現場をライブで紹介。

参加無料(ZOOMのみ事前申込制)/ 一部英語のみ
出演:⼤和匡輔(鶴岡シルク株式会社 代表取締役)
清野 ⼒ (松岡株式会社 代表取締役社⻑ )
須藤玲子 (NUNO デザインディレクター)
サイモン・ライト(ジャパン・ハウス ロンドン企画局長 )
参加無料(ZOOMのみ事前申込制)/ 一部英語のみ

*詳細・視聴申込は以下のウェブサイトから
https://www.japanhouselondon.uk/whats-on/2021/kibiso-textile-sustainability-in-yamagata-workshop-visit-and-conversation/

『須藤玲⼦ テキスタイルイノベーション』

京丹後でちりめんを製造する田勇機業をオンラインで訪問しその製造工程を見学。

須藤 玲子 / Reiko Sudō

茨城県石岡市生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科テキスタイル研究室助手を経て、株式会社 布 の設立に参加。現在取締役デザインディレクター。英国UCA芸術大学より名誉修士号授与。2019年より東京造形大学名誉教授。2008年より良品計画のファブリック企画開発、鶴岡織物工業協同組合、株式会社アズのデザインアドバイスを手がける。2016年無印良品アドバイザリーボードに就任。 毎日デザイン賞、ロスコー賞、JID部門賞等受賞。日本の伝統的な染織技術から現代の先端技術までを駆使し、新しいテキスタイルづくりをおこなう。作品は国内外で高い評価を得ており、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ビクトリア&アルバート博物館、東京国立近代美術館等に永久保存されている。代表作にマンダリンオリエンタル東京、東京アメリカンクラブ、大分県立美術館のアトリウムのテキスタイルデザインがある。2018年 国立新美術館にて大規模なテキスタイルインスタレーション「こいのぼりなう!」、2019年 香港のCHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile) にてSudo Reiko: Making NUNO Textiles を開催。その他国内外の数多くの展覧会に出品。

齋藤精⼀ / Saitō Seiichi

パノラマティクス主宰 1975年 神奈川県生まれ、東京理科大学理工学部建築学科卒。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。Omnicom Group傘下のArnell Groupにてクリエイティブ職に携わり、2003年の越後妻有アートトリエンナーレでのアーティスト選出を機に帰国。フリーランスのクリエイターとして活躍後、2006年株式会社ライゾマティクス(現:株式会社アブストラクトエンジン)設立、2016年よりRhizomatiks Architectureを主宰。2020年組織変更によりRhizomatiks ArchitectureはPanoramatiksと改め、俯瞰的な視点でこれまで繋がらなかった領域を横断し組織や人を繋ぎ、仕組みづくりから考えつくるチームを立ち上げる。
現在では、行政や企業などの企画や実装アドバイザーも数多く行う。2018-2021年グッドデザイン賞審査委員副委員長。2020年ドバイ万博 日本館クリエイティブ・アドバイザー。2025年大阪・関西万博People’s Living Labクリエイター。

ジャパン・ハウス・ロンドンとは!?

London, UK, 8 April 2021 – “MAKING NUNO” exhibition at Japan House London.

ジャパン・ハウスは⽇本の多様な魅⼒や政策・取組を発信することにより、⽇本への理解と共感の裾野を広げることを目的に、外務省により世界の 3 都市(サンパウロ・ロサンゼルス・ロンドン)に設置された拠点。ジャパン・ハウス ロンドンは⽇本⽂化への関⼼が⾼まる欧州の拠点として、ロンドン市内の⽂化的・商業的建造物が多く所在するエリアの⽬抜き通りケンジントン・ハイストリートに 2018 年 6 ⽉に開館した。アールデコ調の歴史的建造物の中の 3 フロアにわたり、ギャラリー・ショップ・カフェ・レストラン・ライブラリーを備えた複合施設として、アート・デザイン・⾷・建築・テクノロジーなど⽇本の多様な魅⼒を通して、真の⽇本との出会いを現地の⼈々に提供している。

CHATとは!?

CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile) は、戦後から2008年まで操業されていた紡績工場、南豐紗廠(南豐テキスタイル)の近代産業遺産保存プロジェクトの一貫として創立された非営利のアートセンター。元紡績工場という建物の歴史を尊重し、忘れ去られつつある香港のテキスタイル産業の歴史を伝えながら、テキスタイルの素材、アジアにおけるテキスタイル産業の歴史、現在のテキスタイル産業の問題点を主題にした現代アーティストやデザイナーや、テキスタイルを実験的に用いるアーティストの展覧会を発表しているほか、来場者が体験できる布や糸を使ったワークショップ、アーティスト・イン・レジデンスプログラム、国際シンポジウムなども開催している。20

19年に本展のベースとなる展覧会 『Sudo Reiko: Making NUNO Textiles』を開催した。エグゼクティブ・ディレクター兼チーフ・キュレーターは元水戸芸術館主任学芸員の高橋瑞木。