久武正明建築設計事務所による「日本の伝統智」を活かした、サステナブルオフィスが奈良県に完成

久武正明建築設計事務所は、株式会社ナカガワの創業100周年事業である「ナカガワセンチュリ記念館」を設計監理し、2022年8月、外構工事を含め完成させた。

「ナカガワセンチュリ記念館」は、オフィスを中心とした複合施設で、日本の伝統智を活かしたサステナブルな建築。ニューノーマルにも対応し、ウェルビーイングな環境を実現している。

社員・業界・地域社会への貢献を目指す次世代に向けた施設

「ナカガワセンチュリ記念館」 は、株式会社ナカガワの創業100 周年事業として計画され、本部オフィスのほか、研修センター・ITセンター・カフェテリアを有する複合施設であり、次世代に向けて推進する新事業拠点にもなっている。

ここでは、人々が出会い、学び、ともに成長することができ、社員・住宅建設業界・地域社会への貢献が目指されている。この施設が次世代に向けてサステナブルなものであり、活動する人にとってもウェルビーイングな環境となることが望まれる。

日本の伝統智を活かしたパッシブな省エネによるサステナブル建築

この施設は、奈良大和高田にあり、万葉の時代から続く「自然」を日々感じながら活動できる場所を目指し、日本の伝統智を取り入れ、自然を五感で感じられるサステナブルな環境を実現。建築の設えによるこのパッシブな省エネは、高効率な機械によるアクティブ省エネや太陽光パネルなどの創エネと共に、カーボンニュートラルに向けて有効な手法だ。

この建物は南北におよそ100mの長さで、建物の中央と南北に各々庭があり、光庭やテラスにも緑や水盤を設けている。

中庭に面した部屋内には植栽を設けて緑を連続させ、水盤で冷やされた空気が流れ込む。

建物中央の光庭や階段室の吹き抜け、東西のスリット窓も風を呼び込んでいる。

中庭の下部には地下水のピットを設け、地下水温を利用した自然換気を行い、熱交換を終えた地下水は中庭の水景に利用。

この他、天窓や庇など日本の伝統的な智恵による設えにより、自然のエネルギーを活かし、建物に必要なエネルギーをおさえている。

自然を五感で感じるウェルビーイングなオフィス

この施設では、「吉野杉」が家具にふんだんに用いられ、やわらかい雰囲気と木の香が広がっている。

家具のベースとなる板材を、原木から切り出した10cmの幅はぎ材からつくり、ロスを減らし反りをおさえ、はぎ材はスギ材の白身(辺材)と赤身(芯材)がほどよくミックスされ、豊かな表情となっている。地元の素材を使用することで、地産地消にも寄与しているのだ。

そよ風が肌で感じられ、柔らかい日射し、緑の潤い、水音の心地よい響きなど自然を五感で体感でき、活動する人にとってウェルビーイングな環境となっている。

ニューノーマルに対応する 「スマートオフィス」

また、最新のIOTを活用したスマートオフィスにより非接触の環境とし、ニューノーマルにも対応。自然換気を促す開放的な空間、ゆったりとした家具配置、高い天井の空間(1階は5m) もウィズコロナに有効に機能している。

スマートオフィスの設備として、スマートデバイスによる照明・空調の制御/サウンドマスキング(「マスキング音」を使用し、会話をカモフラージュするシステム)/顔認証デバイス/非接触ボタン搭載エレベーターなどを採用している。

日本の伝統智を取り入れ、自然を五感で感じられるサステナブルな施設。人だけでなく地球にも優しいこの施設、今後も多くの人を魅了させるのであろう。

ナカガワセンチュリ記念館

所在地   :奈良県大和高田市曽大根1-1-16
延床面積  :1,713.90平米
規模・構造 :地上2階、 鉄骨造
事業主   :株式会社ナカガワ
設計    :久武正明建築設計事務所 株式会社
施工    :五洋建設株式会社