「静かなところで緑を見ながら音楽を作りたかった。」テイ・トウワの軽井沢での暮らしと音づくり

毎週月曜日に立山律子がお送りする福岡のラジオ放送CROSS FM「DAY+」。「#casa(ハッシュカーサ)」の枠に今回ゲストとしてお越し頂いたのは、DJ、音楽プロデューサー、アーティストでもあるテイ・トウワさんです。普段大切にされているデザインや、ご自宅がある軽井沢での暮らしについて伺いました。

幅広いシーンで活躍する音楽家テイ・トウワ

1990年、世界的ユニットDeee-Liteのメンバーとして米エレクトラよりデビュー。1995年より活動の拠点を日本に移し、1st Album「FutureListening!」でソロ・デビュー。DJとしてもビッグ・フェスティバルへの出演、各トップ・ブランド、VIPパーティーでの選曲等、精力的に活動中。ダンス・ミュージックを中心に、音楽の可能性を探求するアーティストです。

普段の生活で大切にしているデザイン

まずはじめに「日常生活の中で大切にしているデザイン」について伺いました。

「ここ20年間で最も長くいるのは自分の部屋なんです。自宅が軽井沢なのですが、2階が居住空間になっていて1階にはスタジオと僕の部屋があります。いわゆるスタジオって防音がしてあって、窓がなくて閉鎖的だったりするのですが、僕のところはどちらかというとアトリエのような感じです。南は一面窓にしていて、それはちょっとしたこだわりかもしれませんね。

自宅には特に意味はないんですが螺旋階段もあります。音響的には反射しちゃうのであまりよくはないのですが(笑)。そこを上がると本棚が並び、気が向いた時に画集を眺めたりできるスペースになっています。

また、温泉が好きで自宅周辺にいくつかあるので、運動不足解消に歩いたり、電車や車で行ってリフレッシュすることも多いです。」

音楽家という職業柄、自宅で過ごす時間が多いというテイさん。機能性を追求するのではなく、自分が思う心地よさを取り入れることで、作業中でも気軽に気分転換ができたり、暮らしと仕事の両立ができるのかもしれませんね。

生活拠点に軽井沢を選んだ理由

現在、軽井沢の自宅を拠点に活動されているテイさん。都内ではなく、あえて別荘地である軽井沢を選んだ理由はどういったものなのでしょうか。

「僕は都会に生まれ育ちましたが、東京にいると向かい側で工事が始まったり、取り壊されたりとかで騒音が目立つことが多いじゃないですか。そんなことがある度に昼間にサウナに逃げ込んだりしていたんです。そんな経験から静かなところで緑を見ながら音楽を作りたいと20年ほど前から考えていました。そんなきっかけで軽井沢を選んで、生活するようになりました。」

確かに、東京などの都会は人が多く賑やかなうえ、日々開発が進み騒音が響く場面も多く見られますよね。音を作り出す仕事柄、静かな空間を求めるのは自然な発想ですね。

新型コロナウィルスの生活への影響

クラブはもちろん、音楽フェスやイベントなど音楽を楽しむシーンにも新型コロナウィルスの影響はあるかと思いますが、テイさんの活動に変化はあったのでしょうか。

「在宅ワークでいうと、僕はこれまで30年間在宅ワークのベテランなので支障はないです(笑)。DJをしに東京に行ったり東京から様々なところに行ったりと、大きな移動がなくなったのは変化といえるかもしれません。軽井沢での日々は幸せだけど、単調に感じることもありますね。

また、週末はDJイベントなどで自宅を離れることが多かったのですが、より家族と過ごす時間が増えました。

それに、少しマインドが変わってきたところもあります。色んなことが面倒臭くなってきちゃうというか(笑)。今まで積極的だったところが、『コロナもあるしやめとこうか』と控える場面が多いです。よく訪れていたレコード屋にも行かずにイーコマースで購入していますし。もともと僕は外食など外出を好んでするタイプではないので、より一人で過ごす時間が多くなった気がします。」

自宅での音楽の楽しみ方

1階がスタジオ兼テイさんのお部屋で、2階にリビングなど居住空間があるとのことでしたが、ご自宅ではどうやって音楽を楽しんでいるのでしょうか。

「主に自分の部屋で自分の好きなものを聴くことが多いですね。2階では食事の際にメニューを確認して、聞こえるか聞こえないかくらいの音量でBGMを流しています。今の季節だと、少人数で演奏しているインドネシアのガムラン音楽だとか、三線を弾いている沖縄の音楽とかが多いかもしれません。カレーの時は必ずインド音楽ですね。まあ、どんな音楽をかけても奥さんは何も感想は言わないんですけど(笑)。」

食事の場という家族の時間を過ごす空間でのBGMを選ぶとおっしゃるテイさん。あくまでも聞こえるか聞こえないかといった小さな音量で、音楽が主体にならないように配慮している姿から、家族の会話や食事を楽しむ時間を大切にされていることが伺えます。

気になるレコードの収納方法

職業柄多くのレコードを所有しているテイさん。膨大な量のレコードの収納はいったいどうしているのでしょうか。

「自宅の東側一面がレコード棚になっているのですが、そこがもういっぱいになってきています。

いま、聴いてないレコードをしまうための箱を作っているところなんです。自分の部屋の中にレコード屋さんがあるイメージですかね。上からサクサク見えるようなものを目指しています。」

一面に広がるレコード棚が埋まってきているというテイさん。思い入れのあるレコードも数多くあると思いますが、断捨離はされないのでしょうか。

「しょっちゅうしてます。特に今年は新型コロナウィルスの影響で自宅で過ごす時間が多かったこともあり、友達や後輩のところに何も言わずにダンボールに入れて送りつけてます。(笑)。」

断捨離をしても次々と気になるものが出てくるのがレコードなのかもしれません。テイさんセレクトのレコードがもらえるなんて、ご友人たちが羨ましいですね。

空間に合わせて音楽を選曲するポイント

INTERSECT BY LEXUSのサウンドプロデュースもされているテイさんですが、空間に合わせて音楽をセレクトする際に意識するポイントは何でしょうか。

「まずはうるさくないということ。そしてLEXUSは南青山の閑静なエリアに位置し、片山正通さんが設計されたアダルトでラグジュアリーな雰囲気の非日常的な空間だと解釈しているので、キッチュとかうるさいものを避けて、高級感のある組み合わせを意識しています。

また、AIが個人の好みに合わせて音楽を提供するサービスがありますが、そうした人工知能には絶対できない組み合わせや繋ぎ方も気をつけているポイントですね。」

なるほど、その空間の立地やテーマに合わせて選曲されるんですね。AIとの比較もプロならではの視点です。

博多炉端 魚男 FISHMANのBGMもプロデュース

福岡にある居酒屋、博多炉端 魚男 FISHMANのBGMもプロデュースされているテイさんですが、こちらはどういった経緯で始まったのでしょうか。

「FISHMANのオーナーが友達の友達なので博多に行く際はいつもお邪魔しているんです。そんな彼から頼まれたのがきっかけです。居酒屋ってザワザワしているイメージがあるので、耳についたときに『なんだろこれ?』みたいな引っかかりのある選曲ができたらいいなと思いました。そこで4、50年代の比較的古い音楽を中心にしているんです。今でもモダンでかっこいいと思えるものって、10年後に聴いても古臭いと感じないと思うんです。僕らが居酒屋さんに求める音楽って、ほこり感というかあまり刺激的すぎない、トレンドすぎないものですよね。今の流行りをかけるようなお店ではなく、普遍的な良さ、普遍的な意外性を意識してみました。」

“ほこり感”という表現がテイさんらしいですね。どこか懐かしく居心地が良いなかに、ちょっと心惹かれる遊び心がある。お店に訪れた際はぜひ耳を傾けてみてください。

今後の活動

気になる今後のご予定について伺いました。

「今年でDeee-Liteが30周年になるのですが、今年は新型コロナウィルスの影響もあって過去30年間の中で一番音楽を作っているかもしれません。年末、遅くても来年中には色々皆さんにお届けできると思うので楽しみにしてください。」

自宅で過ごす時間が増えたことは音楽家にとっては、より制作に打ち込める良い機会にもなったのかもしれませんね。今後どんな音楽が聴けるのか楽しみですね。

テイ・トウワにとっての「LIFE IS 〇〇」

DJからプロデュース業まで様々な形で音楽家として活躍されているテイ・トウワさん。そんんなテイさんにとって「ライフ・イズ・◯◯」の空欄にはどんな言葉が入るのでしょうか。

「生きてるだけで丸儲け、ですね(笑)。」

名言をそのまま使うも、「DJなので(笑)。」とお茶目なテイさん。ウィットに富んだキャラクターが素敵な方でした。