「昭和の町工場のような使い込まれた雰囲気が好き」アヒルストア店主・齊藤輝彦が語る店内や自宅のインテリアについて

前編:「道端で引っこ抜いた雑草を屋上に移植するのにハマってます」アヒルストア店主・齊藤輝彦の大切にしているデザインとお気に入りの空間

東京・富ヶ谷に建つ、自然派ワインと焼き立てパンが楽しめるワインバー「アヒルストア」。ナチュラルワインを気軽に楽しめるビストロの先駆けとして、国内外からのゲストに愛され、連日開店前から行列ができるほどの超人気店です。今回はアヒルストア店主・齊藤輝彦さんに、ご自身が手掛けたお店の内装のこだわりやご自宅のインテリアについて伺いました。

一段下がった厨房が一番の特徴

Via : @ahiruani

斎藤さんご自身が手掛けた内装も素敵なアヒルストアですが、内装において最も重視したポイントはどういったところでしょうか。

「店内の中心にカウンターがあるのですが、カウンターを挟んで厨房と客席の間に20cmくらいの段差を設けています。この厨房側が下がったような形が、この物件を見つける前からイメージしていた空間だったんです。

どこで見たか忘れてしまいましたが、変わった構造のお店があって、自分で店をやるならそういう作りにしたいなと思っていたんです。

厨房って、配管を通してから床を敷くので、一般的には客席より一段上がるんです。現在の物件は元々地上から一段下がったような作りだったので、この空間なら思い描いていた画がそのままできるなと思って、現在の内装に至ります。」

力強いコンセプト設計が、全ての根幹になる

Via : @ahiruani

大学で建築を学ばれていますが、その時の経験が今の仕事に役立ったな、ということはありますか。

「コンセプトの考え方ですかね。コンセプトをバチッと決めるからこそ、しっかりとした骨格に枝葉というか、内装だったり料理のメニューだったりが決まっていくと思っていて。

コンセプトに基づいて全てが決まっていくので、明確なコンセプトがあることがいかに重要か、ということは、学生時代に学んだことの恩恵かもしれません。」

前回、料理修行の経験は無いけれども、“パン屋の片隅でワインが飲める”スタイルなら他の飲食店にはない魅力になるかもしれない、というアイディアから現在のアヒルストアが始まったとおっしゃっていましたが、それがお店のコンセプトなのでしょうか。

「コンセプトとしては、『自宅と職場の間の第3の場所を作る』ということを掲げていました。その場所を作るためにどうしたらいいか、というところで、“パンとワイン”というキーワードが出てくるんです。

コンセプトの話をするときに、例えば、『木の温もりが感じられるナチュラルワインが楽しめるお店』をコンセプトとして事業計画を作る人もいます。

しかし、それはコンセプトではなく枝葉の部分の話なんです。『木の温もりが感じられる』というのは内装、つまりハード面の話。『ナチュラルワインが楽しめる』というのはソフトの部分の話です。そもそもの、そのハードとソフトが「何故必要なのか?」という根本の理由が重要で、それがつまりコンセプトということになります。そこがしっかりしていると、例えばコロナみたいなことがあってもブレることがないというか、揺るぎようがないんです。飲食店も建物を建てるのと一緒で、そういう風に思考を構築する必要があると思っています。」

新築ながら昭和の町工場のようなイメージを目指した

Via : @ahiruani

開口部が控えめな、四角いコンクリートの塊のような無機質な雰囲気のご自宅も素敵ですが、建てられる際に重視した点はどういった点でしょうか。

「何故コンクリートにしたかと言うと、いわゆる“新築っぽい”建物にするのを避けたかったんです。自宅は、リノベーションではなく、完全なる建て替えを行なっているのですが、新築の住宅ってどうしてもピカピカしてしまうんです。

Via : @ahiruani

綺麗なものよりも、使い込まれて馴染んでいるような古いものが好きなので、新しくても素材の表情が出るコンクリート打ちっぱなしに惹かれました。ピカピカしていない、ザラザラしている感じにしたかったんです。」

Via : @ahiruani

内装のこだわりはどういったところでしょうか。

「プロダクトにあまり興味がないので、家具はシンプルなものが多いです。壁面にスリットをつけて、棚受けをつけて、板が乗っているような感じです。テーブルも木脚を並べてベニヤ板を置いているだけ。家具として作り込まれたプロダクトではなくて、そういうものを並べて自宅のインテリアは成り立っています。昭和の町工場みたいなイメージがあって、作家性が高いものよりかはインダストリアルな、町工場みたいな雰囲気を目指しました。」

仕事とプライベートの境界が曖昧ななかで生きる

論理的なコンセプトメイキングや独自の空間へのこだわりによって生まれた、連日大賑わいのワインバー「アヒルストア」を営む齊藤さん。そんな齊藤さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「“ワーク アズ ライフ”。生きるように仕事をする、です。日常の中であまり仕事と生活の間に段差がないというか、生活しているなかで感じる些細な気づきや感動みたいなものを新しいアイディアとして自分の仕事の中に落とし込んでいく、そういう感じで日々過ごしています。仕事とプライベートを切り分けずに、生きるように仕事をして、仕事をするように生きている。そんな曖昧な感じで生活しています。」

理性が裏付けする天邪鬼な視点が唯一無二の空間を生み出す

一段下がった厨房や町工場のような雰囲気に仕上げた自宅のインテリアなど、普通の裏をいく独自の視点がユニークな齊藤さん。コンセプトはしっかりと、ブレない軸を論理的に築いて作り上げたお店に、オリジナリティ溢れる視点が交わることで、アヒルストアはどこにもない超人気店へと成長したのかもしれません。