建築家・石上純也が手がける、時の移り変わりを体現するアートビオトープ那須「水庭」

建築家・石上純也は1974年神奈川県生まれ。2000年東京藝術大学大学院建築科修士課程終了。2000～2004年妹島和代建築設計事務所勤務。2004年石上純也建築設計事務所設立。主な作品に、神奈川工科大学KAIT工房・KAIT広場、Vijversburgビジターセンター(オランダ)、2019年サーペンタインギャラリーパビリオンなど。今回紹介する水庭では建築賞オベル・アワードを受賞している。その他、2009年日本建築学会賞、2010年ヴェネチア・ビエンナーレ第12回国際建築展金獅子賞、2010年毎日デザイン賞など受賞多数。

重なることのない木々が生み出す幻想的な風景

この「水庭」は、ホテル建設のため伐採される予定だった318本の木を移植して作られている。その周りには大きさの異なる大小160の池が配置してある。木々はどのポイントから見てもぴったりと重ならないように配置がされており、風光明媚に立ち並ぶ木々を池の水面が反射し、幻想的な風景を生み出している。本来であれば、池のすぐそばに木が生やすと根が腐ってしまうことから、池のすぐそばに木が生えることはありえない。しかし、底に防水シートを敷くことでそれを防ぎ、自然界では決して見ることのできない唯一無二の空間を作り出している。

時とともに移り変わる景色

池は最終的な構造として、そこに永久とどまるものとして設計されている。池の形が変わることはない。一方、木々は時間とともに色を変え、朽ち、再生する。時の流れで変化しないもの(池)と変化するもの(木々)。この対比が、自然の移り変わりを体現している。人工物とは思えないほど自然環境に馴染んでいることがわかる。