「飼い主さんが楽しくて楽に暮らせるように」ファウナ・プラス・デザイン代表の廣瀬慶二さん

ペットと人が快適に美しく暮らすことのできる住宅の設計を行う、ファウナ・プラス・デザイン代表の廣瀬慶二さん。

今回はそんな廣瀬さんにご自身のことや、ペットと暮らす住まいのことなど様々な角度からお話を伺いました。

犬猫専門建築家・廣瀬慶二

1969年神戸生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了。
ペット共生住宅の専門家として海外でも知られ、猫の環境エンリッチメントを実現した
「猫の家 The Cats’ House」はイギリスやフランスをはじめ7か国の新聞や雑誌で紹介された。
設計事務所ファウナ・プラス・デザイン代表。
住まいのリフォームコンクール国土交通大臣賞受賞

設計事務所ファウナ・プラス・デザイン:https://www.fauna.jp/

行動を促すデザインを重要視

はじめに、廣瀬さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。

「行動を促すデザインというものを重要視しています。例えば、ドアノブですね、きっと誰もが回したり押したりしますよね。そして階段なんかは、とりあえず登ってみようかなと思うと思います。それから動物。猫は教えていないのに猫砂があると、そこでトイレをしてくれます。さらにちょっと面白い話をすると、壁に20cm角の穴が空いていると、猫は必ずそこを潜るんですよね。大きくても小さくてもいけなくて、20cm角という大きさが行動を促すという感じで、人間を含めた動物の行動を促すようなデザインを心がけています」

好きな場所は階段

続いて、廣瀬さんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?

「階段ですね。階段というのは、必ず動きというか行動を伴いますし、登っていくと景色も変化していきます。特に古いビルの階段が割と好きです。例えば上野にある東京国立博物館のすごく大きな階段だとか、私が住んでいる神戸の旧居留地には、古いビルがいっぱいあるんですけど、とにかく階段が面白い!建物を見にいくと大体階段のところで、止まっています(笑)」

建築家を目指すようになったきっかけについて

廣瀬さんが建築家を目指すようになったきっかけは何だったのですか?

「元々小さい頃から建築が好きでした。身の回りって建築ばっかりですし、観光とかしに行くと、結局は建物を見に行ってるんですよね。見るだけなら、すごく安上がりな趣味なんですよ建築って。(笑)」

「ペットと暮らす住まい」に着目するようになった経緯

廣瀬さんは、「ペットと暮らす住まいのデザイン」などの著書も手掛けており、ペットと暮らす住まいを数多く設計されています。そもそもペットと暮らす住まいに着目するようになったきっかけについて教えてください。

「学校を出て、まずは設計事務所に就職しました。豪邸というか、いい家を設計させてもらってたんですが、犬や猫がいると、豪邸(家の中)がカオスになっていくんですね。当時からそれをどうにかしたいなと思っていましたね」

「あとは、2000年ぐらいから現在まで猫との暮らし方が変わってきたんです。以前は勝手に外に出て散歩していた猫が、完全室内飼育、家の中だけで暮らすようになりました。猫の世界が家の中だけになってしまったので、猫にとって家の中が街のような豊かさがないとダメなのではないかと思い、犬猫専門の設計事務所を20年前ぐらいに作りました」

廣瀬さんが考えるペットが暮らしやすい空間とは

そんな中、廣瀬さんはペットと暮らす住まいを数多く手掛けていますが、廣瀬さんが考えるペットが暮らしやすい空間、あるいはペットにとって良い住まいについてお聞かせください。

「20年ぐらいかけて動物専門学校の学生さんたちと、犬や猫と暮らす一般のご家庭の中を見させていただく、住まい調査をやっています。みなさん、すごく小さな工夫を自力でされているんです。例えば、百均で売っている金属のネットを買って、犬をキッチンに入れないようにフェンスを作っていたりだとか。窓辺に猫のための台が置いてあったり…。そういう飼い主さんの小さな工夫を、取って付けた仮設じゃなくて、きちんと建築で作り理論的で正しくて、見た目も美しくすると、犬や猫との暮らしがすごくスムーズで豊かにしてくれます。あらかじめインテリアのデザインとして作るように心がけています」

間取りや素材で気を配っているポイント

ペットと暮らす家を作る際に間取りや素材選びなど、気を配ることはどんなことでしょうか?

「間取りの話をしますと、人にとっての間取りと猫が認識する間取りっていうのを1つの空間の中で別々に考えるようにしています。レイヤーを重ねるという言い方をするんですけども、例えば人間にとって2階建ての家でも猫にとっては5階建てのように感じてもらえるような、ちょっと不思議なこともよくやっています」

「素材は、犬に関しては滑らない床材を選ぶということが結構大切ですね。猫に関しては、爪を研がないような、研ぎたくなくなるような壁材を選んで作っています」

「犬と暮らす家」「猫と暮らす家」それぞれ重視していること

犬と暮らす家、猫と暮らす家。それぞれどんなところを重視していますか?

「人にとって、心地よいスケール“ヒューマンスケール”という言葉は、みなさんよく聞かれると思うんですけども、猫には“feline(フィーライン)スケール”、犬には“canine(ケイナイン)スケール”といものがあります。“feline(フィーライン)スケール”というのは、猫の行動を促す寸法、先週お伝えした“20cmの穴”。それがそうですね。犬の方の“canine(ケイナイン)スケール”は、飼い主さんが困ってしまうような犬の行動をあらかじめ阻止できるような寸法。その“feline(フィーライン)スケール”、“canine(ケイナイン)スケール”を駆使して、飼い主さんが楽しくて楽に暮らせる。そして、家の美しさをずっと保てるようなそういう空間を重視して設計しています」

建築家からのアドバイス「ペットと暮らす家づくり」

これからペットと暮らす家づくりを考えている方に、建築家というお立場から、何かアドバイスをいただけますでしょうか?

「犬や猫の行動をずっと観察することが大事ですね。あとは犬と猫だけでなく、自分自身の行動、自分が家の中でどんなふうに振る舞っているのかということを記録しておくと家づくりのヒントになります」

「たとえば、犬や猫のために水飲みボウルなどがあると思うんですよ。水飲みボウルを置く場所というのは、大体キッチンの近くだと思うんですが、別に遠い場所でも水が出る場所があれば、そこでもいいんですよね。そういう犬や猫と暮らしていく中での自分の振る舞いを記録していって、スムーズな行動が取れるように考えるといいと思います」

そして、インタビューの最後、廣瀬さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is Journey」と答えてくれました。北海道や長崎まで全国各地からお仕事の依頼があるという廣瀬さんは、移動を多くしているそうです。

飼い主さんが楽しくて楽に暮らせる住宅を設計!ファウナ・プラス・デザイン代表の廣瀬慶二さん

コロナ禍で在宅時間が増える中、新規でペットを飼い始める人が増え、今もなおペットブームの昨今。癒しを与えてくれるペットと共に過ごす時間は、ペットも飼い主も快適に暮らせる住まいが理想ですよね。飼い主さんが楽しく楽に暮らせるように住宅の設計を行なっている廣瀬さんは、著書「ペットと暮らす住まいのデザイン」などを手掛けています。ペットとの暮らしを考えている方は、ぜひ手にとってみてはいかがですか?