奈良の100年余り前の古い5つの町屋をリノベーションした「奈良町宿」で“創造的休暇”を過ごす

取り壊されようとしていた奈良の紀寺町にある5つの町屋を、宿として息を吹き込んだ『奈良町宿』。奈良で大切に受け継がれ、根づいてきた文化を、宿泊することで存分に体験することができます。

奈良の日常を旅する「創造的休暇」

ここでは、100年前にタイムスリップしたかのような感覚と同時に、今風な町屋暮らしもリアルに感じとることができるでしょう。そんな奈良の日常を旅することで、「創造的休暇」がやってくるかもしれません。

しっとりと美しい前庭

今日は、その5つの町屋の中でもしっとりと美しい庭を愉しむことができる前庭の町屋をご紹介します。

前庭の町屋は入り口を開けた瞬間に、囲われたこじんまりとした庭が私たちを愉しませてくれます。

中央奥に見えるのは、古くから社寺仏閣や和風建築に利用されてきた鎖樋。雨が軒先から垂れて地面を掘り返すことを防ぐことや、建物自体を雨水の濡れから防ぎダメージや劣化から守る鎖樋は、四季のある日本の季節、情緒を表現する建材として進化しながら使われてきました。

しっとりと上品に演出してくれる和の植物と様々な形の石が配置され、下からライトアップされた植物の影が隣の町屋の壁に映ります。日本の四季を愉しむ心が前庭にあります。

寝室の大きなFIX窓は位置を低くして、歩いてくる人の目線は防ぎつつも、前庭を眺められるようになっています。まるで、絵のように穏やかで美しい前庭は、季節によって表情を変えるのでしょう。それもここで時を過ごす愉しみの一つです。

和モダンで過ごす寝室

前庭から見た寝室は、庭の土間とまるでつながっているような錯覚をします。サッシ枠がなく、床の面が同一面であることが、この寝室の透明感につがっているのかもしれません。

床は梁材と同じ色で落ち着いた印象のタイルが使われていて、土間や木材とは違ったぬくもりを感じることができます。梁越しの天井窓がこんなにもワクワクするのはどうしてでしょうか!

『奈良町宿』は朝食付きが基本となっていますが、コーヒーを淹れるのにぴったりなミニキッチンがあります。コンパクトで便利なキッチンの先には古風な和室が二間見えます。

木、土、石、紙。手入れをして受け継ぐ

実は、町屋などの古い建物を修復することは、時間と手間が大変かかることです。解体した方が効率は圧倒的によいでしょう。けれども、古くから伝わってきた素材を受け継ぐことでしか生まれない空間があります。

100年前の時間がここには残っています。襖、障子、土壁、そして木材は調湿機能があり、役割をしっかりと持ち、日本の暮らしになくてはならないものでした。

建物を残すことは、風景を残すことであり、文化や歴史を守ることにも繋がります。

庭の草木を眺めながら、筆をとり、食事をとり、湯舟に浸かる、贅沢さがこの前庭の宿にあります。

質素で無駄がなく、自然と調和した暮らし方を体験することで、現代の暮らしの中では浮かんでこないようなインスピレーションが浮かんでくるかもしれません。

すべての部屋から庭を眺められるようになっています。

土地のものを丁寧に頂く

滞在型の「縁側の町屋」以外の4つの町屋は、朝食つき宿泊となっています。丁寧にお料理をされた奈良の土地のものを頂くことができます。

土鍋やおひつ、カトラリーが入る竹のざる、そして器も…素材感が自然のものに統一され温かさを感じます。体験したことがなかったとしても、どこか懐かしく感じるのは、遠い遺伝子の記憶を呼び起こすからでしょうか。

お料理を愉しむ空間も自然の音がよく似合います。

古き新しい「奈良町宿」で創造的休暇

滞在型の「縁側の町屋」は国の登録有形文化財に指定されました。最大6泊までとなっていて、朝食は別途頼むことも可能です。薪を火を焚いて湯を沸かす「五右衛門風呂」を体験することもできます。5つの宿はすべて一人から宿泊できるます。古き新しい「奈良町宿」でいままで体験したことのないような創造的休暇はいかがでしょうか?