「不動産業は建築業界を支える立場でもある」アラウンドアーキテクチャー代表・佐竹雄太の好きなデザインや会社設立の経緯について

「建築のまわりで、建築をシコウする」をテーマに掲げ、“建築のまわり”を専門領域とするクリエイティブカンパニー 株式会社アラウンドアーキテクチャー代表取締役・佐竹雄太さん。建築系YouTubeチャンネル「ペリカンのナカミ」共同運営、不動産サイト「建築家住宅手帖」編集長など、幅広い形で建築にまつわる情報を発信しています。今回は佐竹さんに、お好きなデザインやアラウンドアーキテクチャー設立の経緯について伺いました。

株式会社アラウンドアーキテクチャー代表・佐竹雄太

株式会社アラウンドアーキテクチャー代表・佐竹雄太
photo : Koichi Tanoue

株式会社アラウンドアーキテクチャー代表取締役、不動産サイト「建築家住宅手帖」編集長。 東京理科大学理工学部研究科建築学専攻修了後、アトリエ設計事務所勤務などを経て、2016年に創造系不動産に入社。数多くの建築プロジェクトの不動産コンサルティングに従事し、2021年に独立。建築系YouTubeチャンネル「ペリカンのナカミ」共同運営、建築イベントの主催や建築ラップなど、“建築のまわり”で幅広く活動。自宅兼事務所の1階にて、ギャラリースペース付きのコーヒースタンドを運営している。

何事も“バランス”が大事

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「“バランス”が大事だと思っています。ものづくりにおいても全ての部分のデザインに気合を入れて取り組むというよりは、重要度の低いところはハズしてみるなど、全体が緩やかにまとまっていくようなバランスを常に意識しています。

ファッションもそうですが、気合を入れて全身着飾るというよりは、サイズ感をしっかり抑えればどんなものを着てもある程度サマになると思っていて。同じようなことが建築やプロダクトなどのデザインにも言えるのではないかと考えています。」

1日中移ろう光が心地よい自宅がお気に入り

photo : 千葉正人

職業柄多くの建築に触れる佐竹さんですが、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「約2年ほど前に建築家の工藤浩平さんに設計してもらった自宅が一番気に入っています。自分の趣味嗜好に合わせて作って頂いているので落ち着くのはもちろん、3階建+ロフトの間取りのなかで色々な方向に窓がついていて、1日中様々なところから光が入ってくるのがお気に入りです。」

設計を生かすためにも不動産業界は欠かせない

代表を務める株式会社アラウンドアーキテクチャーは、「建築のまわりで、建築をシコウする」をビジョンに建築周辺の領域で活動するクリエイティブカンパニーということですが、具体的にはどういった活動をされているのでしょうか。

「僕は元々建築業界で設計を担当していました。業界ではいわゆる花形と呼ばれるような職業なのですが、その周りの部分をしっかりしないと設計が生きてこないと感じたんです。そうした経験から、設計の周りにあたる不動産の仕事にたどり着きました。

一般的に、建築業界と不動産業界はそれぞれが異なる価値観や常識を持っているため、建築家が設計したものの価値やその進め方を不動産屋がきちんと理解せずに売買していることが多いんです。

そこで、“建築のことがわかる不動産屋”ということで、僕たちは設計などをあえてやらずに、不動産屋として家づくりをする人はもちろん、建築家と何かプロジェクトを行う人のサポートを広くしています。」

建築や不動産について気軽に話せる場を作りたかった

photo : 千葉正人

オフィスの一部でコーヒースタンドとギャラリーを自主運営されているとのことですが、これにはどういった意図があるのでしょうか。

photo : 千葉正人

「オフィス兼自宅を建てたところが旧川越街道という人通りが多い場所で、お店をやったら面白いかもしれないと思いついたんです。というのも、不動産屋と聞くと一歩入ると営業がうるさいような、ちょっとマイナスなイメージがあるじゃないですか(笑)。でも、建築や不動産はすべての人にとって身近なことなので、誰かと気軽に話せる場所があるといいなと感じていました。

そこで、コーヒーを淹れる数分間で建築や不動産に関する話をお客さんとできたらと思って、コーヒースタンドを始めました。」

不動産業界が建築業界を支えている

photo : 千葉正人

代表を務める株式会社アラウンドアーキテクチャーを始めたきっかけはどういったものでしょうか。

「“建築のまわり”といった広い領域を扱う会社を作ったのは、建築業界を支える事と合わせて広げる事の両方が必要と考えたことがきっかけです。

会社を始める前に不動産屋に勤務していたのですが、そもそも建築というものを多くの方に知ってもらわなければ、建築・不動産業界も盛り上がらないように感じたんです。そこで、現在のような広い領域で活動できる会社を作りました。」

“建築のまわり”を盛り上げることで建築自体の価値を上げる

設計者としてのご自身の経験から、建築自体の価値の向上を目指して不動産業にシフトし、幅広い形でその魅力を発信する佐竹さん。作り手だからこそわかる建築の魅力を、不動産の立場から住まい手にしっかりと伝えることで、建築業界を盛り上げています。

後編:「これまでにない出会いや発見を生み出す空間にしたい」アラウンドアーキテクチャー代表・佐竹雄太が語るYouTubeチャンネル設立の経緯や今後の目標について