「好きなものがあればあるほど、人生は豊かになる」文筆家・甲斐みのりの建築の楽しみ方と暮らしの視点

昨年放送されたドラマ「名建築で昼食を」の原作「歩いて、食べる東京のおいしい名建築さんぽ」をはじめ、旅や手土産、雑貨など女性が憧れを持つジャンルのエッセイが大人気の文筆家・甲斐みのりさんに、お好きな建築やおすすめの食べ物について伺いました。

文筆家・甲斐みのり

1976年静岡県生まれ。旅や散歩、お菓子に手土産、クラシック建築やホテル、雑貨と暮らしなど、女性が憧れるテーマを題材に、書籍や雑誌に執筆。「叙情あるものつくり」と「女性の永遠の憧れ」をテーマに雑貨の企画・イベントも行う。著書に『地元パン手帖』『お菓子の包み紙』(ともにグラフィック社)など多数。

お菓子の包み紙が気になる

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「お菓子の包み紙が大好きで本にもまとめているのですが、和菓子屋さんや洋菓子屋さんの包み紙を見て、そのデザインの意図や歴史を考えるのが好きです。昔ながらのまちのお菓子屋さんの包み紙を見ていると、なんだか愛おしい気持ちが湧いてきます。」

好きな空間はクラシックホテル

@minori_loule

建築物にも造詣が深い甲斐さん。お好きな空間はどういったものでしょうか。

「建築全般が好きなのですが特にクラシックホテルが好きで、宿泊しなくてもお茶を楽しんだりできるので、ちょっとした旅気分で立ち寄ったり、お休みにはゆっくりと宿泊したりと楽しんでいます。東京だと〈山の上ホテル〉、九州だと〈雲仙観光ホテル〉など、旅先でもクラシックホテルを探しています。」

確かに、モーニングやティータイムの喫茶を楽しみに訪れる人も増えていますよね。宿泊以外の目的でもホテルの楽しみ方はありそうです。

京都での出会いが建築に目覚めるきっかけに

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先日ゲストにお越しいただいた田口トモロヲさん、池田エライザさん主演のドラマ「名建築で昼食を」は、甲斐さんの著書「歩いて、食べる東京のおいしい名建築さんぽ」が原作となっていますが、建築にはいつから興味を持たれたのですか。

「大阪の大学を卒業してから京都に住んでいた期間があるんです。京都には昔ながらの建築が自然に街並みに溶け込んでいて、ある建物に立ち寄って解説を聞いたときに、そこで過ごした人の思いや建てた人の想いに深く胸を打たれたのがきっかけですね。

日本はヨーロッパとは違って建物の立て直しが盛んにされるので、だからこそ古い建物を大切にしたいと思っています。」

食事と繋げると、一気に建築が身近になる。

著書「歩いて、食べる東京のおいしい名建築さんぽ」は、どういった経緯で出版されたのでしょうか。

「出版したのが建築の専門書を出している出版社なのですが、建築って一般的に難しいイメージがあると思っていて。私も建築が好き、建物が好き、と言っても少し苦手意識があったんです。そんな中で出版社側から、軽やかな気持ちで建築に足を運んで、そこでさらに食事ができれば行きたい理由が増えるので、建築と食事を結びつけて本を書いてもらえないか、という依頼を受けたのが始まりです。」

確かに、名建築と言われると少し敷居が高いイメージがありますよね。食事が目的だと一気に親近感が湧くものですね。

「食事をするとなると、自然と椅子に座って天井を眺めたり、床のタイルに目がいったりと視線も変わるので、より建築を身近に感じることができると思います。ドラマでは映像を通して立体的に見て頂けたので、写真で伝わらないところまでお伝えできたり、トモロヲさんたちのセリフも相まって、より建物の魅力を紹介できたのではないかと思います。」

最近のおすすめの美味しいものは九州に多い?

Via : @minori_loule

お仕事柄様々な土地を訪れ、建築はもちろん食事も楽しまれている甲斐さんですが、最近のおすすめの食べ物はあるのでしょうか。

「最近だと北九州の〈Sandwich Factory OCM(サンドイッチファクトリー・オー・シー・エム)〉というお店のサンドイッチが美味しかったです。姉家族が下関なので九州に行く機会が多いのですが、小倉にある〈シロヤ〉というパン屋さんも美味しくておすすめです。

また、姪がうどん、特に九州のコシの無い柔らかいうどんが好きで、大学入学で上京してみたら、東京では全く食べられないと残念がっているんです。コロナ渦が収まったら一緒に九州うどん巡りをしようと約束しています(笑)。九州のソウルフードと呼ばれている〈資さんうどん〉を取り寄せたりしていて、まさに今うどんにはまっています。」

コロナ渦で見直した日々の暮らし

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新型コロナウィルスによって生活が変わりつつある現代。甲斐さんの活動にも影響はあるのでしょうか。

「取材をするために旅に出ることが多かったのが一変して、室内で過ごすことが増えました。そうすることでより自分の日常について考えることが増えた結果、より良い暮らしのためにキッチン用品を充実させたり、一生モノになるかどうか考えて調理器具や食器を買い替えたりする機会が増えました。現代では自分の内側に目を向けることが大切だと思います。」

室内で過ごす時間が増えたことで、日常を見直すきっかけになりましたよね。こうした経験を経たからこそ、また違った視点で旅先での発見を楽しめそうですね。

好きなものがあればあるほど、人生は豊かになる。

お菓子の包装紙や建築など様々なジャンルの知見に長けている甲斐さん。そんな甲斐さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか。

「“たくさんの好きなもの”です。好きなものがたくさんあればあるほど、日々の暮らしは豊かになるので、もっと自分の“好きなもの”を増やしていきたいなと思います。」

なるほど、まさに甲斐さんらしい視点でした。