世界最長の桜並木に寄付金総額4億5,400万円。もう一つの安藤忠雄作品「平成の通り抜け」
日本を代表する建築家、安藤忠雄は、ただ単に建物を建てるにとどまらず、積極的に市民参加型の植樹活動を行ってきた。大阪の「桜の会・平成の通り抜け」の他にも、「瀬戸内オリーブ基金」や、東京湾の「海の森プロジェクト」などがある。
安藤の呼びかけに予想を3倍も上回る寄付金が集まった。
「桜の会・平成の通り抜け」プロジェクトは、市民参加の植樹により、まちづくり意識への参加意識の向上を図るとともに、公民一体となったまちづくりを推進することを目的とし、市民等から寄せられた募金で、約1,000本の桜を植え、「造幣局の通り抜け」と並ぶ新しい大阪の桜の名所「平成の通り抜け」をつくろうとする事業として2004年12月から募金活動をスタートした。
2006年1月からは、桜の植樹エリアをさらに大阪市域・府域の公園等公共施設にも拡大して募金活動を継続し、寄付金総額は4億5,400万円を超え、3,000本の植樹を行った。
安藤は、自分が設計した建物、関わったプロジェクトや活動を見守り続けている。阪神・淡路大震災の被災地に植樹した花木も、毎土曜日、事務所の所員に水を撒きに行かせた。安藤にとって、「建築をつくること」と「森をつくること」は、場所に働きかけ、新しい価値をもたらすという点において、同じでなのある。
環境共生、循環型社会のシンボル「海の森」
2016年オリンピック東京招致を目標とした東京の都市再編プロジェクトにアドバイザーとして関わった安藤が、事業委員長として携わった海の森プロジェクト。東京港に浮かぶお台場のゴミの山を森に変える「海の森」プロジェクト。ゴミの埋立地に苗木約48万本の植樹を行った。
今では日比谷公園ほどの大きさの森になった。来年にはその倍に、数年後には明治神宮と同じくらいになるという。豊かさを求めて大量生産大量消費を続けた結果、負の遺産として残された場所に、都心に風を引き込む森が出現したのである。オリンピック招致が失敗した現在もなお、同プロジェクトは進められている。
「育てる」。建築との”真”の関わり方
植樹した樹木が育ち、真の意味で完成を迎えるのは、少なくとも5年がかかる。それを育てるのは、事業者だけでなく、利用者となる近隣住民でもある。安藤は植樹という建築と通して、地域の環境向上だけでなく、コミュニティの育成も狙っているのである。
打ちっぱなしのコンクリートが印象的な安藤の作品だが、その地域、土地に耳を傾け、持っている歴史を活かすことで、コンクリートのストイックさが、自然の美しさをより光らせていることに気づく。
環境づくりを建築と捉える安藤の視線を学び、それを当事者として育てていく意識を改めて強くさせられた。
桜の会・平成の通り抜け
住所:大阪府大阪市 <毛馬桜之宮公園~中之島公園>