インド・アーメダバードのル・コルビュジエによる成長する美術館「サンスカル・ケンドラ美術館」

サンスカル・ケンドラ美術館はユネスコ世界遺産に登録されたル・コルビュジエの建築作品の一つです。「成長する美術館」というコンセプトの元に設計された美術館で、近代建築様式を取り入れた新しい形の美術館として多くの人を魅了しています。

平和を願った2人によるユートピア的建築物

サンスカル・ケンドラ美術館は当時のアーメダバード市長の依頼によってプロジェクトが始まりました。この美術館の構想設計はポール・オトレとル・コルビュジエの2人によって行われ、彼らの深い思想が詰め込まれているのです。

ポール・オトレとは国際十進分類法という図書館の書籍分類方を発明した人物です。知識を体系化し統合することに優れ、あらゆる知識を統合する施設を作りたいという思いからサンスカル・ケンドラ美術館の着想が生まれ、近代建築の巨匠ル・コルビュジエが協力する形となりました。

ル・コルビュジエが設計した美術館は他にも東京の国立西洋美術館とチャンディーガルの美術館があります。これらはコルビュジエの美術館3兄弟と言われ、見た目も共通点を感じます。

サンスカル・ケンドラ美術館はこの中でも最も早く竣工しました。

ル・コルビュジエの構想した「成長する美術館」

「成長する美術館」とは何かというと、完成することなく時代の流れと共に増築を続ける建築であるということです。また美術品だけでなく書籍も集約される構想で、まさに知識や芸術が統合される施設を作ろうとしていたのです。

この美術館の外観が優美さに欠けるのは近代建築としての機能美の一面もありますが、予め増築することが決められ、目的が知識や芸術の統合だった為です。

増築の構想として建物は螺旋的に広がると考えれていたので、外観を作り込んでも次第に見えなくなるというのも関係しています。インドの建築物に多い外観の日除けが見られないのも、増築により意味をなさなくなるからです。

アーメダバードの建築に共通する豊かな空間設計

一階スペースにはピロティを設け、中庭にあるスロープを通じて2階のエントランスへ渡るという構造です。これはコルビュジエがアーメダバードで手掛けた繊維業会館にも共通します。

サバルマティ川という水源が近かった為、氾濫を想定し一階に重要な施設を作らなかったという機能面があるのです。

日本人にとっては馴染み深い、国立西洋美術館との繋がりなどを知った上で訪れてみると、また感慨深い建築なのではないでしょうか。

skar Kendrra – サンスカル・ケンドラ美術館