石川県小松市に日本遺産・元北前船藩主の邸宅を宿泊施設に再生した「安宅ノ宿 沖」がオープン!
歌舞伎十八番『勧進帳』の舞台として知られる石川県小松市・安宅町。日本海を見渡すこの港町に、かつて廻船問屋として栄えた「沖家」の邸宅が、現代の宿泊施設として新たな命を吹き込まれました。母屋と蔵をまるごと再生した全3室の宿「安宅ノ宿 沖(アタカノヤド オキ)」が、2026年5月1日にグランドオープン。
北前船が運んだ、文化と繁栄の記憶

江戸から明治にかけて、日本列島の西から北を結ぶ交易ルートを走った北前船。荷を売り、積んでは進み、物産だけでなく文化や美意識をも各地の湊へと運んだこの船の存在が、小松市安宅町を豊かに育てました。日本海側の海上交通の要衝として栄えたこの土地には、廻船問屋が軒を連ね、遠い地の風や味、見知らぬ文化が絶えず流れ込んでいました。

廻船問屋とは、江戸時代に荷主と船主の間に立ち、貨物の積み下ろし・保管・売買の斡旋・金融・船員の手配までを一手に担った港湾の問屋です。その中でもひときわ隆盛を誇った「沖家」の邸宅が、日本遺産にも認定された安宅の歴史を今に伝える建築として、静かに残り続けていました。

「安宅ノ宿 沖」は、この邸宅をただ保存するのではなく、かつての営みを現代の滞在体験として編み直すことで、地域の記憶を未来へとつなぐ場を目指した施設です。ホテル開発・空間プロデュースを手がけたのは、独自の視点で全国各地の宿を生み出してきた株式会社水星。設計監修には長坂純明(ひとともり)と田村翔(arinco architects)が名を連ね、建築の持つ歴史的な文脈を損なわず、しかし現代の感覚で住まいうる空間として丁寧に再生されています。
母屋と蔵が生まれ変わった、3つの客室

全3室という小さな規模に、邸宅のすべてが凝縮されています。それぞれの客室は、建物が持っていた空間の個性をそのまま活かしながら、異なる顔を持っています。

凪(Nagi) は、かつての母屋を活かした最も広い客室(169㎡・定員8名)。畳の柔らかな質感に包まれながら、ゆったりとした時間を過ごすことができます。サウナも備わっており、日本海の潮風を感じながら整う体験も可能です。グループや家族での滞在にも対応できる、邸宅の顔ともいえる一室です。

月明(Getsumei) は、蔵を再生した客室(66㎡・定員3名)。天窓から差し込む光が時間とともに表情を変え、壁の土壁と呼応しながら、静謐で詩的な空間をつくり出しています。蔵という閉じた構造の中に、光だけが流れ込む——そのような体験は、この客室でしか味わえません。

汀(Migiwa) も蔵を活用した客室(109㎡・定員4名)ですが、大きな縁側を持つ開放的な設えが特徴です。2階からは海を望むことができ、湊町ならではの風景が眼前に広がります。小倉織物のカーテン越しに移ろう光と風を感じながら、安宅の海と対話するように過ごせる空間です。
土壁の空間を彩る、九谷焼の美意識

共用部に設けられたギャラリーには、100年以上の歴史を誇る九谷焼の名窯「錦山窯」が監修した作品が並びます。伝統を現代に受け継いできた名窯が選び抜いた器や作品が、土壁の空間をしずかに彩っています。

九谷焼は石川県を代表する工芸であり、安宅の地とも深く縁を持つ文化です。この地に北前船が運んできた美意識の蓄積は、工芸という形でこの地に根を下ろし、今も息づいています。ギャラリーに並ぶ作品は観賞するだけでなく、気に入ったものはその場で購入することも可能です。宿に滞在することで初めて出会える、工芸との静かな対話の時間を楽しむことができます。
食と体験で編み直す、かつての暮らし

滞在の体験は、空間だけにとどまりません。朝食には地元の食材を用いた料理が提供され、この土地の日常に寄り添う食の時間を味わうことができます。中庭や縁側では、光と風の移ろいを感じながら、ただそこに在るだけの豊かな時間が流れます。

空間・食・しつらえのすべてを通じて、安宅という土地に積み重なってきた時間の流れを、五感ごと受け取るような滞在——それが「安宅ノ宿 沖」が目指す体験です。
北前船が運んだ文化と美意識が積み重なる「安宅ノ宿 沖」
北前船が運んだ文化と美意識が積み重なり、今なおその息遣いを感じられる安宅の地。「安宅ノ宿 沖」は、歴史的な建築の保全にとどまらず、その記憶を現代の暮らしの感覚で体験可能な形へと編み直した、新しいタイプの滞在施設です。古い蔵や母屋の空間が持つ静けさと、九谷焼の工芸、潮風に揺れる日本海の風景——それらが重なり合う時間を、ぜひその身で体験してみてください。
安宅ノ宿 沖(アタカノヤド オキ)
客室数: 全3室(凪・月明・汀)
開業: 2026年5月1日
所在地: 石川県小松市安宅町ワ35
アクセス: JR小松駅より車で11分/小松空港より車で6分
設計監修: 長坂純明(ひとともり)・田村翔(arinco architects)
空間プロデュース: 株式会社水星
運営: 株式会社リナシェンテ
公式サイト: https://nipponiakomatsu-atakanoyado.com
公式Instagram: @nipponia_atakanoyado_oki