「トラディショナルと現代」が交わる。ファッションデザイナー・池田雅の成人式の衣装がニューヨークで評価された理由

成人式という人生の節目に、自分らしさを最大限に表現できる衣装を届け続けている、ファッションデザイナーの池田雅さん。北九州の成人式文化を象徴するような華やかで個性的なデザインは、多くの新成人の心を惹きつけ、国内外からも注目を集めています。

一人ひとりの「こうしたい」という想いに寄り添いながら、唯一無二の衣装を生み出してきた背景には、これまでの経験と揺るがない信念があります。

今回は、池田さんの暮らしの中で大切にされているデザインやお好きな空間などさまざまな角度からお話を伺いました。

ファッションデザイナー・池田雅さん

Via:@miyabiikeda

1971年熊本県生まれ。1996年に北九州市でレンタル衣装やヘアメイクを手がけるブライダル事業をスタート。2003年には新成人に向けたオーダーメイド袴の制作をきっかけに、現在の成人式衣装デザインへと活動を広げています。現在は『みやび 小倉本店』の店長を務めるほか、ヘアメイクアーティストとしても活躍中。

暮らしの中で大切にしているのは「シンプルさ」

池田さんが暮らしの中で大切にされているデザインについて伺いました。

「大切にしているデザインは一言で言うとシンプルです。仕事では決定事項が多く、デザインも作り込むことが多いので、自分のライフスタイルではできるだけシンプルに生きていきたいと思っています。」

好きな場所や空間は公園

お好きな場所や空間はありますか?

「なかなか忙しく、ぼーっとする時間が取れないのですが、やっと休みが取れた際には、勝山公園や紫川あたりでゆっくり過ごすのが好きです。」

成人式衣装制作の原点は「金と銀」の依頼

Via: @miyabiikeda

ファッションデザイナーになったきっかけについて教えてください。

「もともとはブライダルのヘアメイクや着付け、撮影などをしていました。2003年に『全身金と全身銀で成人式に出たい』という新成人の方が来られたのがきっかけです。

衣装について、取引先のメーカーに10社くらい直接電話をかけて問い合わせましたが、全部断られました。そこでなんとかならないかなと思っていた際に彼らが毎月5000円ずつ、お金を持ってきてくれたので断れなくなり、彼らのためになんとかならないかなと思い、 断らずに生地から織って、 金銀の衣装を作ったというのがきっかけです。」

派手さの進化と向き合い続けた苦労

衣装制作をする中で、実際にどのような苦労をされましたか?

「先輩たちの衣装が基準になり、どんどん『もっとこうしたい』という要望が増えました。2003年に、金と銀の衣装を見た後輩たちは、普通の袴を着るんじゃないかなと思ってたのですが『先輩が金と銀だったから僕たちはこうしたい。ああしたい。』と、それぞれが自由なことを言うようになりました。」

限界突破するデザインへの対応

Via: @miyabiikeda

「2008年ごろにはレインボーが生まれ、虹キングと呼んでいるのですが、虹キングの彼らも1年前からやってきて、こんなのにしたいっていう絵を描いて持ってきてくれました。そのため、レインボーが生まれた際もとても苦労しました。」

注目とともに増えた葛藤

「2010年には、東京のメディアの方々がたくさん来るようになりました。そこで全国のネットに多くの情報が広がっていくがゆえに、さまざまなところから苦情やお叱りのお言葉などがネットとかで書かれることがありました。」

成人する子たちの願望を叶えてあげるという愛情がすごいですよね。

「そうですね。本当に成人式の日に派手にするだけで、普段は普通の人なんです。 その分、外野からはさまざまな声がありましたが、自分の目の前にいる一人ひとりのお客様が『こうしたい』とニコニコしながら話す彼ら、彼女らの要望に応えたいって思いました。

今までにないものをどんどんアイデアを一緒に共有しながらデザインを作っていくという形で広がっていったのがこの北九州の成人式のスタイルですね。」

一人ひとりの想いを形にするデザイン

池田さんは成人される方々の要望を叶える形で制作されていますが、池田さんご自身のデザインやこだわりはどういうところに反映されていますか?

「そうですね。まず、お客様の要望を聞いて、それをただやれば100%うまくいくわけではないので、 要望を聞きながら『それがどうすると本当に一番いいものになるのかな』というのを徹底的にプロファイルしながら考えていきます。

お客様の希望よりも絶対にちょっと上を狙います。上すぎるのは、違うものになってしまうので『要望通りだけれどすごい』というところまで努力します。私自身はできるだけフラットな状態で、それぞれの要望を具現化する形にいろんなテクニックを使いながら作っていきます。」

できあがった自分の衣装を受け取った子たちはどのような感想を言われますか?

「衣装を受け取った際には、本当にみなさんすごく感動してくれます。」

ニューヨークファッションウィークに呼ばれたきっかけ

Via:Miyabi Ikeda

「ニューヨークから呼ばれたきっかけは、目の肥えた海外の親日の日本文化が好きな方から、まず3着衣装を貸してほしいと言われ、ニューヨークで個展をしたのがきっかけです。

そこでみやび単独の個展をニューヨークですることになり、それからファッションウィークに行くという段階を踏んだ流れでファッションウィークに出させていただく形になりました。」

海外でも評価される成人式衣装というアート

ニューヨークファッションウィーク、初めて衣装を見るお客様も多くいらっしゃったと思いますが、皆さんの反応はどうでしたか?

「成人式の衣装をそのまま持って行ったのですが『とにかく素晴らしいアートだ』と言われました。 また、強烈に印象に残った言葉があるのですが、『トラディショナルな着物という伝統的なスタイルに、現代の若者の考えを入れて、素晴らしいものとして形作っている、それがアートになっている』と評価されました。」

これから作りたいものやチャレンジしたいこと

「いくつかあります。まず、今年はロンドンでの展示が決まっています。ジャパンハウスロンドンという、日本文化を発信する施設で、秋から来年初めにかけて4〜5ヶ月ほど展示を行う予定で、現在その準備を進めています。

また、今後はファッションショーにも取り組んでいきたいと考えています。さらに、これはまだ夢の段階ですが、日本や海外のアーティストの衣装制作にも挑戦したいです。」

Life is メモリー

インタビューの最後、池田さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is メモリー」と答えてくれました。

「成人式は人生の中で思い出作りというか、10年経っても20年経っても、成人の日になったら、自身の20歳の時のことを思い出すじゃないですか。

その際に『いい思い出が作れたな、自分の中のすごくいい思い出』というようにずっと幸福感を味わえること。それがすごくいいなと思っています。 」

一人ひとりの想いが生み出す、唯一無二の成人式衣装

成人式という特別な一日を一生の記憶にするために、目の前の一人ひとりの想いと向き合い続けてきた池田雅さん。金と銀の衣装から始まった挑戦は、多くの要望や試行錯誤、時には批判と向き合いながらも、独自のスタイルとして進化を続けてきました。

その根底にあるのは『要望をただ形にするのではなく、その一歩先を提案する』というものづくりへの姿勢です。だからこそ、完成した衣装は着る人の期待を超え、強く心に残る体験へとつながっています。

今後はロンドンでの展示や新たな分野への挑戦など、活動の幅はさらに広がっていきます。これからも池田雅さんのものづくりがどのように進化していくのか、今後の活躍に注目です。