時を繋ぎながら町を照らす空間、atelier umi/建築家・藤田時彦による「wine shop AZURE BLUE」

昭和の趣が残る中山道の町並みに寄り添い、過去と現在の記憶を鮮やかに繋ぎ合わせた 「wine shop AZURE BLUE」。手がけたのは、風景との関係性や時間の継承をテーマに活動する設計事務所 atelier umi・代表の藤田時彦。

既存の木製建具や昭和特有の混沌とした空気感をあえて残しながら、杉板や色漆喰、そしてハタノワタル氏による藍染和紙を重ね合わせることで、街並みと調和する新たな魅力を創出しました。

上下階を縦に繋ぐダイナミックなワインセラーや、飲み終えたボトルを素材として蘇らせた特注テーブルなど、随所に「過去と現在を繋ぎ、未来へ循環させる」設計思想が息づいています。

中山道の町並みに調和する、杉板と色漆喰の外観

Photo:Shotaro Kaide

中山道に面したこの建物は、2階部分の既存の木製建具を極力活かしつつ、外壁に杉板と色漆喰を用いることで周囲の古い町並みとの調和が図られています。

シンプルながらも素材の質感が際立つ佇まいに、店のテーマカラーを象徴する鮮やかな青いバナーが、新たな魅力を添えています。

過去と現在が交差する、昭和の趣を活かしたエントランス

Photo:Shotaro Kaide

1階のエントランスは、2017年のオープン当初から残る昭和の雰囲気と、どこか混沌とした心地よい状態をあえて壊さないように設計されています。

意図的に残された「過去」のディテールと、丁寧に施された「現在」の改修が混ざり合い、店主がこの建物に出会った当時の記憶を繋いでいます。

ガラス戸の奥に現れる、ワインセラーという意外性

Photo:Shotaro Kaide

店内の一角には、和の空間を思わせるガラス戸が設けられています。一見すると町家の一室へと続くような落ち着いた佇まいですが、ガラス戸を開けると、その奥にはワインセラーが広がります。

Photo:Shotaro Kaide

和の建具であるガラス戸と、ワインという異文化の要素が重なることで、この空間ならではの意外性が生まれています。伝統的な町家の構成を思わせる仕掛けの中に、現代のワインショップとしての機能が静かに組み込まれているのが特徴です。

階上から見下ろす、縦へと広がる空間の繋がり

Photo:Shotaro Kaide

床を抜いたことで生まれた垂直のラインは、空間に独特なリズムをもたらします。階上の隙間からセラーを見下ろすと、計算された木組みの美しさとそこに収まるワインたちが一つの風景のように広がり、建物全体でワインの存在を感じられる設計になっています。

藍染和紙が映える、ラワン材に囲まれたシェアスペース

Photo:Shotaro Kaide

2階のシェアスペースは温かみのあるラワン材の壁で構成され、一面にはハタノワタル氏による藍染和紙が設えられています。

Photo:Shotaro Kaide

この深い青は店のテーマカラーを表現しており、試飲やイベントの際に、集う人々を落ち着いた穏やかな空気感で包み込みます。

廃棄物から新たな物語を生み出した、特注のセンターテーブル

Photo:Shotaro Kaide

空間の中央に鎮座するセンターテーブルには、再生の物語が込められています。飲み終えたワインボトルとコルク栓を細かく砕き、モルタル研ぎ出しの中に閉じ込めることで、本来捨てられるはずの素材に新たな命を吹き込みました。

Photo:Shotaro Kaide

夜には柔らかな灯りが灯り、このテーブルを囲みワインのある日常がさらに広がっていきます。

町の記憶を継承し、未来へと繋ぐ「wine shop AZURE BLUE」

atelier umi・藤田時彦さんが手がけたこの作品は、昭和から続く建物の息づかいを尊重しつつ、現代の感性やサステナブルな視点を重ね合わせ唯一無二の場所へと生まれ変わりました。

現代の機能美と対比させる、その境界線に生まれた心地よさこそが「wine shop AZURE BLUE」という空間の魅力そのものです。

床を抜き、素材を砕いて再構築した空間は、ワインが熟成するように、これからさらに年月を経てこの町の風景へと深く溶け込んでいくでしょう。