現代アーティストと日本建築が交ざり合う個性豊かな空間体験を提供する宿泊施設「A&A」プロジェクト

ジェームズ・タレルによる新潟に建つ「光の庭」や、安藤忠雄氏が設計した「Simose Art Garden Villa」など、アーティストの作品自体に宿泊できたり、館内で作品鑑賞ができたりと、アートが楽しめる宿泊施設が近年人気を集めています。岡山県・出石町エリアに2019年10月にオープンした2つの宿泊施設「A&Aリアムフジ」と「A&Aジョナサンハセガワ」は、世界的に活躍する現代アーティストと日本を代表する建築家が出会い作り上げた、個性豊かな空間体験が楽しめる宿泊施設です。

現代アートと日本建築が交ざり合う空間を楽しむ

2つの宿泊施設は、岡山県で現代美術アーティストと建築家が一緒に宿泊施設をつくる「A&A」(Artist&Architect)プロジェクトの第一弾としてローンチ。このプロジェクトでは、ディレクターにギャラリストの那須太郎氏(TARO NASU代表)、アドバイザーに建築家の青木淳氏(青木淳建築計画事務所)を迎え、多くの国内外ツーリストが豊かな空間体験を通して、芸術を楽しめる滞在型都市岡山への発展を目指しています。

温暖化に警鐘を鳴らす気象学者の方程式をオマージュ

「A&Aリアムフジ」は、NYをベースに制作活動を行っているアーティスト、リアム・ギリックと、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)の両者によって完成しました。

建築には「The Manabe Equation House」という愛称がついています。これは、20 世紀半ばに地球温暖化について数々の功績を残した気象学者・真鍋淑郎が導き出した気象学的方程式にギリックが魅せられたことから、彼をオマージュしたと言われています。

岡山県産のヒノキ集成材を田の字に組んだフレームを軸に、立体的に空間が折りたたまれたような室内は、自分の位置を見失うほどに入り組み、複雑な空間となっています。

これはMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOがギリックの視点を、社会の盲信を揺らがせる「迷い」のトリガーであると解釈し、この宿泊施設を「迷いの空間体」として、滞在する人にも「迷いながら思索する」ことを期待したため。建築家の知見を生かした複雑な構成によって、アーティストの思考を体感できる空間です。

吹き抜けを持つ大きな構成の中で岡山のまちを再解釈

一方の「A&Aジョナサンハセガワ」は、ベルリンで制作活動を行なっているアーティスト、ジョナサン・モンクと、長谷川豪の協働によって完成されました。

「A&A ジョナサンハセガワ」は旭川越しに後楽園をのぞむ好立地にあります。青木淳建築計画事務所によるギャラリーとカフェと棟を同じくし、Wのかたちの構造体を共有しています。

大きなエントランスがない分、周囲の民家に馴染んでいる施設は以前に敷地内にあった民家を思わせます。

建築は3つの建物で1つの客室という構成。

大きな階段を中心に吹き抜けがあるエントランスが、1階の天井が低く落ち着いた雰囲気の寝室と2階にある後楽園を臨む浴室を繋いでいます。

「模倣」し、 再解釈することにより、新しい価値を生み出すという制作スタイルを持つモンクは、今回も「まち」を模倣して再解釈することで、新しい「岡山のまち」の魅力を見つけ出せる空間をつくることを目指しました。

長谷川も建築を通して新しい「まち」の発見を促し、相互作用による体験をつくり出しています。

岡山のまちに広がる、ユニークな感性と建築家の視点による豊かな空間体験

「A&A」では、岡山市内の歴史文化ゾーンおよびその周辺に、すべて1棟建てのプライベートタイプの宿泊施設を今後20年をかけて増設予定。現在、今回オープンした2軒に続いて、A&A ライアンアオキ(ライアン・ガンダー×青木淳建築計画事務所)、A&A フィリップフジモト(フィリップ・パレーノ×藤本壮介建築設計事務所)、A&A リクリットワン(リクリット・ティラヴァーニャ×アトリエ・ワン)が計画されており、さらに増えていく予定。今後も注目の一大プロジェクトです。

「A&Aリアムフジ
所在地:〒700-0814 岡山市北区天神町9-2-1
宿泊者数:最大4名

「A&Aジョナサンハセガワ」
住所:〒700-0812 岡山市北区出石町1-6-7-1
宿泊者数:最大6名

A&A公式サイト: https://a-and-a-hotel.com/