「日々光のある場所を探して暮らしています」カラーコーディネーター・遠藤慧の日常で大切にしているデザインや建築の世界へ進んだきっかけ

インテリアやカフェレストランの食事など、ホテルにまつわるさまざまなものの実測スケッチがSNSで人気を集めている一級建築士、カラーコーディネーター・遠藤慧さん。今回は遠藤さんに、日常で大切にされているデザインや建築の世界へ進んだきっかけについて伺いました。

一級建築士、カラーコーディネーター・遠藤慧

撮影:YUTA ITAGAKI KIENGI

1992年生まれ。東京藝術大学美術学部建築科卒業、同大学院美術研究科建築専攻修了。建築設計事務所勤務を経て、環境色彩デザイン事務所クリマ勤務。東京都立大学非常勤講師。建築設計に携わる傍ら、透明水彩を用いた実測スケッチがSNSで人気を集める。著書に『東京ホテル図鑑 実測水彩スケッチ集』(学芸出版社、2023)。講談社の雑誌『with』にて「実測スケッチで嗜む名作建築」連載中。

照明によって空間の印象は変わる

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「照明のデザインを大事にしています。家具やインテリアの色味も大事ですが、光の見え方によって空間の印象は全然変わるので。昼間は自然光がたっぷり入る部屋が、寝る前は真っ白すぎない暖かい色合いで暗めな照明が良いな、といったことを意識して暮らしています。自宅に天窓があるので、その下に机を置いてみたりと、日々光のある場所を探して暮らしています。」

カスタマイズされた自宅の仕事場が好き

自宅の仕事場

職業柄さまざまな建築に触れることの多い遠藤さんですが、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「自宅の仕事場がとても気に入っています。在宅ワークもあるので、ちょっとしたDIYをして自分にとってベストな机の高さや色、照明にこだわって、気持ちよく仕事ができる環境に整えています。」

ルイス・バラガンの手掛けた住宅に目を惹かれた

Via : 光と彩りを操るフォトジェニックな建築、メキシコの巨匠ルイス・バラカンによる「ヒラルディ邸」

高校卒業後、東京藝術大学美術学部建築学科に入学されましたが、建築の世界に進もうと思ったきっかけはどういったものだったのでしょうか。

「元々絵を描くのがとても好きで、小さい頃から美大や芸大に行きたいなとぼんやり考えていました。高校生になってから美大の中でも彫刻やデザインなど、どの分野にしようかと考えているときに、当時の先生が私が興味を持つのでは、と見せてくれた建築家の本に大きな影響を受けました。メキシコのルイス・バラガンという建築家なのですが、色鮮やかな住宅で、日差しの強い土地に映えて見えて印象的だったんです。

当時は建築家という職業について何も知らない状態だったところで、建築ってこんなに素敵で面白いものなんだと感じたのがきっかけです。」

芸大の卒展

建築学科は他の大学にもあると思うのですが、遠藤さんがご卒業された美術学部建築学科は他の所とどういった点が大きな違いなのでしょうか。

「設計の課題をやる点は他の所と同じですが、実務的な設計というよりかは、もっと建築の可能性を広げるような抽象的な課題が設定されることが多かったですね。」

その環境にふさわしい色を多角的に考える

大学院修了後は建築設計の事務所勤務を経て環境色彩デザイン事務所に入所されましたが、こちらではどのようなことを経験されましたか。

「今勤めているのは、色と素材のデザインに特化した会社で、環境色彩デザインという分野を専門に手掛けています。人間を取り巻く環境、具体的には建築の外装だったり内装だったり、街並みの色彩というものにどんな色がふさわしいかを考えるのが主な業務内容です。

そうした色って好き嫌いで決められているように思っている人も多いと思うのですが、実際はそうではなく、元々その土地がどういう色を持っているのか、歴史を調べて参照したり、色と色が組み合わさったときにどういう見え方をするのか、といったことを日々実際に研究して実際のお仕事に繋げています。」

心地の良い空間を支える色彩を考える

建築家ルイス・バラガンの色鮮やかな作品に心を惹かれて建築の世界へと進んだという遠藤さん。その場所にふさわしい色を考える環境色彩のお仕事はもちろん、柔らかであたたかな色彩が美しい実測スケッチにも、遠藤さんならではの色彩に対する独自の感性が生かされているようです。

後編:「独自のストーリー性に惹かれる」カラーコーディネーター・遠藤慧のホテル選びの視点や好きなホテルについて