光と彩りを操るフォトジェニックな建築、メキシコの巨匠ルイス・バラカンによる「ヒラルディ邸」

メキシコの建築家・巨匠ルイス・バラガンが手掛けた、住居用の建築「ヒラルディ邸」。ここは、世界遺産にも登録された世界的に貴重な「ルイス・バラガンの最高傑作」だ。バラガンの神技、色彩のコントラストと光彩のデザインが美しいその建築に足を踏み入れてみよう。

ルイス・バラガンとは?

「ルイス・バラガン」は、20世紀に活躍をしたメキシコの建築家であり、設計士、そして都市計画家である。

彼の建築の特徴は、水面や光を大胆に取り入れたデザインと、色彩豊かな壁面だ。

その独特なデザインと建築の経緯には、彼の学びに由来する。彼は元々、土木工学技士になるための勉学を大学で行っていた。そのため、建築やデザインについては全て独学で学びながら、アジアやヨーロッパで遊学をしたことで、彼の特徴でもある「型にはまらない建築デザイン」へと繋がったという。

直線や平面を多用しながらシンプルに整えながらも、プロダクトやカラーをうまく用いたインパクト。バラガンが創り上げる空間の魅せ方は、居心地のよさと高級感が適度に相まり、絶妙な表現で我々を魅了する。

ルイス・バラガン最後の作品「ヒラルディ邸」

1977年に完成した「ヒラルディ邸」。世界遺産にも登録され「ルイス・バラガンの最高傑作」と言う者も多い建築物だ。

ここは、広告代理店を経営していたパンチョ・ヒラルディ(Pancho Gilardi)とマルティン・ルケ(Martín Luque)が友人たちと過ごす場所として造られた邸宅だ。現在もLuqueファミリーが住んでいる。

ルイス・バラカンが依頼を受けた当初、既に建築家としての活動は引退していたために引き受けを拒否。しかし敷地に咲く紫色の美しいジャカランダの木に強く魅了されたことで、彼の建築人生最後の設計が始まった。

ピンクのスタッコ(化粧漆喰)で覆われたモダンな外観

ビビッドなピンクのレンガで造られた外壁が印象的な四角い外観。この建物の配色はメキシコの芸術家チューチョ・レイズ(Chucho Reyes)の絵画からインスパイアを受けている。

「色」と「光」を使って様々な感覚を感じる空間デザイン

中に入り奥に進むと迎えるのは明るいエントランスホール。密集した住宅地のため、外部には開いた開口はないが、トップライトと中庭からの開口で十分に採光を得ている。

階段には手摺りなど余計なものがなく、スッキリとしたデザインがモダンな空間と美しく絡み合う。

黄色い光で美しく照らされる、沈黙の廊下

まるで3Dのように美しい廊下は、金色に輝く。敢えて照明を設置せずに黄色いガラスで自然光を取り込んでいるため、機械的なギラツキはなく、心地良く照らされる輝きを感じることができる。

鏡のボールは光を拡散させる役割もあり、実に抜かりない採光技術は訪れた者の心を鷲掴みにして離さない。

メキシコの「青い空」と「乾いた赤い土」のようなコントラストがお洒落なスイミングプール

室内に設けられたスイミングプールは天窓から差し込む光彩を使ったデザインが印象的だ。赤い柱と青い壁がプールの水面から出るデザインは、まさに空間芸術。モダンな雰囲気をさらに強調させる凸凹な塗装の肌に光が当たると、様々な表情を見せてくれる。

プライベート用の中庭は、インテリアのセンスも光る

オレンジとピンクの大きな壁面を合わせて造られた中庭は、美しい青空も込みで考えられた柔らかなカラーリングが可愛らしい。飾られている金や銀の壺や塑像が広がる空間を上手く引き締め、高級感がある。

光と彩りを操る建築

ルイス・バラガンの特徴でもある「色合わせの奇抜さ」。モダニズム建築が定着していなかった当時、バラガンの作品がどれだけの衝撃だったのかも想像ができるだろう。

しかしそこには、ただ色を塗っただけでない、緻密な光彩設計やコントラストが鍵を握っている。色彩の間隔がまるで音楽のリズムのように我々を踊らせ、楽しませてくれる。各フロア、各空間で躍動と静寂が同居するその様は、絵画を見ているかのような感覚になる。

ヒラルディ邸 Casa Gilardi

開館時間 : 9:00~18:00(要予約)
電話 : +52 55 5271 3575
住所 : General León 84, Miguel Hidalgo, San Miguel Chapultepec I Secc, 11850 Ciudad de México, CDMX, Mexico