デザイナー・皆川明が考える心地の良い空間と〈ミナ ペルホネン/皆川明 つづく〉展の見どころ

前編:「長く愛される、暮らしに寄り添うようなものをデザインしたい」ミナ ペルホネン・皆川明のインスピレーションの源

日本を代表するブランド「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」。日本各地の生地産地との連携により生み出されるハンドドローイングによるオリジナルのテキスタイルが特徴です。「特別な日常服」をコンセプトとして始まった活動は、家具やうつわなどのインテリアへとデザインの幅を広げながら、日々に寄り添うものづくりを目指しています。今回はミナ ペルホネンのデザイナー・皆川明さんに、心地の良い空間や、4月23日から福岡市美術館で始まった展覧会〈ミナ ペルホネン/皆川明 つづく〉の見どころについて伺いました。

人が心地よく移動したり心地よく感じる空間に

「ミナ ペルホネン/皆川明 続く」展示風景
photo: Norio Kidera

ミナ ペルホネンではアパレルのみならず、インテリアやホテルといった住空間も手掛けられていますが、心地の良い空間作りに際して最も意識しているポイントは何でしょうか。

「もちろんそこに置かれるしつらえや家具といった“もの”も大切ですが、その空間の中にある視線や光の線、風の線、温度の流れ、人が動く時の動線といった、どちらかというと“線”をキーワードに、人が心地よく移動したり感じるということを考えながら作っています。」

 作り手の想いを衣装で表現する

「ミナ ペルホネン/皆川明 続く」展示風景
photo: Norio Kidera

最近ではダンス公演のビジュアルデザインや舞台衣装なども手掛けられていますが、そうした表現分野の衣装についてはどういった点を大切にされているのでしょうか。

「舞台については脚本や演出家の想いというものがありますし、そのストーリーに込められたコンセプトをできるだけ理解して、その作り手の思いに沿うような形を考えています。」

 自分たちのルーツに向き合い、良いものを広めていきたい

photo: Hua Wang

2019年馬喰町にオープンしたショップ、minä perhonen elävä Ⅱでは、北欧のヴィンテージ家具を中心に扱われていますが、イタリアやイギリスなど人気の家具の産地が多くある中で、特に北欧に注目された理由とは何でしょうか。

「私たちのミナ ペルホネンという言葉もフィンランド語からきていますし、多くのイタリアやイギリスの素晴らしい家具もあるのですが、まずはわたしたちのルーツであるフィンランドをはじめ北欧の国から家具のインスピレーションを得て、良いものを長く使っていただけるような調えをして、お客さまに紹介しています。」

ショップづくりには、昔からあったような距離感を大切にしたい

photo: Norio Kidera

先ほど触れた馬喰町に建つショップ、minä perhonen elävä。minä perhonen elävä Ⅰは、食品や暮らしの道具や器、アートピースを中心に、elävä Ⅱではアーカイブコレクションや北欧を中心としたヴィンテージ家具の販売を行うほか、リペアや家具に合わせたミナの生地張りなどの相談もできる人気のショップですが、それぞれ古いビルにショップが作られているのは、そこに歴史があるということに注目されて作られたのでしょうか。

photo: Norio Kidera

「私たちの直営店、京都や松本、金沢もおよそ100年前に作られた建物をリノベーションして作っています。その土地に根ざした建物というのはとても魅力的で、そのなかにわたしたちのショップを置いて、昔からあったような、そんな空気を大切にしています。」

洋服やものに積み重なる記憶を感じてほしい

「ミナ ペルホネン/皆川明 続く」展示風景
photo: Norio Kidera

2019年東京都現代美術館、そして2020年には兵庫県立美術館にて開催された〈ミナ ペルホネン/皆川明 つづく〉展が、今年4月に福岡に巡回しますが、こちらの見どころを教えていただけますか。

「ミナ ペルホネン/皆川明 続く」展示風景
photo: Norio Kidera

「こちらではいわゆるファッションの歴史というよりは、私たちがどのようにものづくりをしたり、どのような人たちと共にものづくりを進めているのか、そういったプロセスを原画や試作などを見ていただきながら皆様に感じられる展示になっています。

「ミナ ペルホネン/皆川明 続く」展示風景
photo: Norio Kidera

そして、最も重要だと考えているのは、ものの中に記憶が積み重なっていく、ということを感じられる展示です。そこでは長く着ていただいた服の中にどんな思い出が詰まっているか、ということをお客様に服をお借りしながら展示しています。」

「ミナ ペルホネン/皆川明 続く」展示風景
photo: Norio Kidera

ユニークな企画ですね。

「そうですね、洋服そのものというよりは、そこに込められている想いというものを中心にお客様に見ていただけると嬉しいなと思います。」

洋服を通してその方の生活が透けて見えるような、そんな企画ですね。

「そういった想いが、みなさまが着ている服にもあるんだということを感じていただけるかと思います。」

ライフイズ”ワンス”

様々なジャンルで活躍されている皆川さん。そんな皆川さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「ライフイズ “ワンス”。人生は“一度”だと思いました。全てにおいて人生は一度きりだと思うと、その時にやりたいことを選ぶだろうな、と思ってこの言葉にしました。」

ミナ ペルホネンは「せめて100年つづくブランド」を目指して当初始められたそう。一度きりの人生とはいえ、皆川さんの思想は一代のみならず何世代にも渡って受け継がれていきそうです。

ものに宿る想いを大切にする

4月23日より福岡市美術館で開催中の巡回展〈ミナ ペルホネン/皆川明 つづく〉では、服そのもの以上にそれが生まれる背景や、それに込められた持ち主の想いを感じてほしいと話す皆川さん。長く愛されるものづくりを目指すからこそ、ものへの愛情を大切にされているようです。

福岡市美術館で開催中の展覧会「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」

「ミナ ペルホネン/皆川明 続く」展示風景
photo: Norio Kidera

ミナ ペルホネンのデザイナー・皆川明さんは、流行に左右されず、長年着用できる普遍的な価値を持つ「特別な日常服」をコンセプトとし、日本各地の生地産地と深い関係を紡ぎながら、オリジナルの生地からプロダクトを生み出す独自のものづくりを続けてきました。

2022年4月23日(土)より福岡市美術館で展覧会「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」が開催中。生地や衣服に加え、創作の背景を浮き彫りにする作品や資料を併せて展示され、ミナ ペルホネンと皆川明さんのものづくりとその思考を紹介。

ミナ ペルホネン/皆川明 つづく

会期:2022年4月23日(土)〜6月19日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分※いずれも最終入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般 1600円・高大生 1000円・小中生 600円
URL : https://mina-tsuzuku.jp
場所:福岡市美術館・〒810-0051 福岡市中央区大濠公園 1-6
アクセス:地下鉄空港線・大濠公園駅より徒歩10分

皆川明さんのサイン本をプレゼント

2022年4月23日(土)より福岡市美術館で開催中の展覧会「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」の開催を記念して、今回CROSS FM『DAY+』に出演頂いたミナ ペルホネンのデザイナー・皆川明さんよりサイン本のプレゼントがあります。

展覧会の図録でもあり、「つづく」をキーワードにミナ ペルホネンの創作のプロセスや思考を綴じ込めた、特別な一冊です。お近くの書店、または、Amazonにてご購入できます。

サイン本をご希望の方は、メールフォームよりご応募ください。

サイン本プレゼント