「多様なメンバーとの化学反応で実力以上のものを生み出したい」NKS2 architects代表・末廣宣子が語るSUZAKI-KOEN STUDIOの魅力や福岡の街

前編:「性格の違う要素を組み合わせて空間をつくりたい」NKS2 architects代表・末廣宣子が語る大切なデザインや空間づくり

2022年に完成した〈010 BUILDING〉(ゼロイチゼロ ビルディング)や、日本建築学会作品選奨を受賞した〈銘建工業本社事務所〉などの商業施設やオフィスの設計から、公共建築、都市計画まで幅広いプロジェクトを手掛ける建築設計事務所・NKS2 architects。今回はNKS2 architects代表・末廣 宣子さんに、所属されているシェアオフィ〈SUZAKI-KOEN STUDIO〉の魅力や、これからの福岡の展開について伺いました。

様々なプロのコラボレーションで新しい魅力的なシーンを生み出す〈010 BUILDING〉

2022年12月 福岡・博多の那珂川沿いに、食とエンターテイメントを融合させて新たな体験を提供する文化複合施設〈010 BUILDING〉が開業しました。NKS2 architectsが設計管理とイマーシブシアターのインテリアを手掛けられていますが、どういった施設なのでしょうか。

「我々の事務所だけで完成させたものではなく、企画設計はニューヨーク在住の日本人建築家・曽野正之が所属するCLOUDS AOが担当されていました。そして現地の建築家ということで我々NKS2 architectsと、SUZAKI-KOEN STUDIOのメンバーでもある中原拓海さんの建築事務所とでチームを組みまして、一緒に設計を進めました。建物の内容は、レストランが2件、バーが1件と、イマーシブシアターと呼ばれるエンターテインメントレストランシアターによって構成されています。」

イマーシブシアターのインテリアはどのような雰囲気でしょうか。

「こだわりのインテリアが並ぶ、というよりは、エントランスには奥に何かあるような雰囲気が感じられる作りで、シンプルなロビーから進むと全く別の世界のシアターに辿り着くような動線となっています。インテリアというよりは中のパフォーマンスの音と映像の世界がメインなので、それを最大限引き出せるような形にしました。事業主であるゼロテンの榎本二郎さんは、福岡に新しい魅力的なシーンを作りたいということで、国内外のシェフやクリエイターなど様々な方を口説き落として〈010 BUILDING〉を作り上げたものと伺っています。」

住宅のようなホテルを目指した〈NOT A HOTEL FUKUOKA〉

NKS2 architectsでは福岡の薬院エリアに2023年夏竣工予定の、小山薫堂さん監修の都市型コンドミニアム〈NOT A HOTEL FUKUOKA〉も手掛けられていますが、こちらはどういった建築なのでしょうか。

「IMD Alliance株式会社が事業主で、SUZAKI-KOEN STUDIOに所属するaxonometricの佐々木慧さんとの協働でプロジェクトが始まりました。生活のパターンや働き方が増え、多拠点居住が一般化している中、『住宅のように感じられるホテルを作ろう』と、新しい生活シーンの創造に挑んだ空間です。」

化学反応を楽しむシェアオフィス〈SUZAKI-KOEN STUDIO〉

シェアオフィスSUZAKI-KOEN STUDIOを運営されていますが、こちらはどういったものでしょうか。

「我々のような建築設計事務所が何件か入居しているシェアオフィスです。〈010 BUILDING〉や〈NOT A HOTEL FUKUOKA〉も、そこで出会ったメンバーとの協働で進めてきたように、これからも多様なメンバーと化学反応を起こしながら、自分達でできること以上のことが生み出せるのではないかと考えています。オフィス内には打ち合わせコーナーがまとまって設けられているので、その空間でのイベントを通して、色々な刺激を与えたり受けたりできるような場になると良いなと考えています。」

空間のみならず、そこに込められた想いによって街は成熟する

NKS2 architectsでは、福岡を舞台とした多くのプロジェクトを手掛けられていらっしゃいますが、今後福岡はどのように変化していくとお考えですか。

「福岡はもともと独自で何かをやろうという気風がある街だと思います。事業主さんも福岡愛に溢れた方が多いので、プロジェクトに地元へのメッセージが込められていて、街に派生していくように感じています。

30年ぐらい前から福岡で大規模プロジェクトが続き、ここ数年その動きはやや落ちついていましたが、最近は天神ビックバンで、中心部も工事が進んできていますよね。とはいえ、建物単体でできることは限られていて、街が良くなっていくにはその次に繋げるメッセージが必要だと考えています。空間のみならず、そこに込められた想いによって、福岡の街がもっともっと成熟するのではないかと考えています。」

ライフイズ“次につなげるバトン”

様々なメンバーと共に、ユニークな空間づくりを目指している末廣さん。そんな末廣さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「ライフイズ”次につなげるバトン”です。自分がいる時間というのは設計をしたり、建物を建てたりと何かを常々やっているのですが、それらがどこかで活かされていると良いなと考えています。」

多様なメンバーとの化学反応で、新たなシーンを生み出す

〈SUZAKI-KOEN STUDIO〉をはじめ、国内外の多様なメンバーとプロジェクトを進行する末廣さん。これからも作り手の想いが込められた空間によって、福岡の街をより魅力的なものへと盛り上げるNKS2 architectsの活動に注目です。