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巨匠アルヴァ・アアルト自らが暮らした素朴ながら居心地のよい北欧の住まい「アアルト自邸」

ヘルシンキ中央駅から北西へ5km。アアルトの自邸は緑豊かな閑静な住宅地にあります。フィンランドの巨匠アルヴァ・アアルトが妻アイノ・アアルトと共に1936年に設計し、以後40年に渡り暮らした住宅。良き妻であり、建築家であり、優れたデザイナーでもあったアイノは、アルヴァにとって人生を分かち合うことのできる最良のパートナーでした。アイノ・アアルトなくしては、アアルト自邸もマイレア邸も生まれてはいなかったかもしれません。今回はこのアアルト自邸をご紹介します。

典型的なデザインの外観

白ペンキのレンガに、ダークブラウンの羽目板の2層の外壁。間伐材などの安価な木材を使って建てられた典型的なフィンランドの住宅デザインです。

北欧を代表する巨匠の邸宅とは思えないほどこじんまりとした印象ながら、飾らない落ち着いた雰囲気が魅力的な外観です。ファサードのアクセントにもなっている木製ドアの前には、石段と植栽があり、入り口への雰囲気作りの工夫が伺えます。

ハイサイドライトから差し込む自然光が照らす北欧らしい空間

アアルト自邸は上から見るとL字形の建物になっており、中央のリビングルームの西側には2層吹き抜けのスタジオがあります。リビングとスタジオの間仕切りには、大きな木製のスライドドア。日本を訪れたことはないというアアルトですが、ところどころに組み込まれた障子やふすまなどのアイテムをみると、日本の文化にインスピレーションを受けていたように思えます。

室内にはアアルトが実際に使用していた製図用具などと共に図面や模型も展示されているので、今日でもアアルトの気配を感じられます。配置されている家具はもちろんアアルト自身によるデザイン。絵画や雑貨などは北欧に限らず世界中から集めた物が並べられており、アアルトの創作物以上に彼のセンスが感じられる空間です。

おだやかな時間が流れる、ナチュラルなインテリアでまとめられたリビング

リビングには、妻アイノが好きだったというゼブラ柄のファブリックのタンクチェア(アームチェア400)とソファが並び、ポール・ヘニングセンがデザインしたピアノの上には、アイノの写真が飾られています。

美しい中庭から差し込むやわらかな光が、飾り気のないシンプルなリビングでの時間を豊かなものに感じさせます。内装や家具に用いられた木と、ところどころに配された植物のグリーンで、あたたかな印象を与えます。

棚やテーブル、椅子を背の低めなものに揃え、ペンダント照明もそれに合わせて低めに設定することで落ち着きが感じられます。また、窓にかけられたブラインドカーテンのようなものは実は日本の”すだれ”。ここからもアアルトの和風建築への関心が伺えます。

1階中央リビングの隣にあるダイニングはアアルトと妻のアイノのふたりが共同でデザインしたもの。クラシカルな印象を与えるダイニングチェアは夫婦でイタリアのヴェネチア旅行をした際に購入したものだそう。

アアルト自邸の1階スタジオのコーナースペースには、アアルトが仕事をしていたという机がそのまま残されています。窓の向こうには公園の様子が伺えます。

気取らず、心地よさを追求した部屋たち

自邸の2階への階段を上がると、そこはプライベートな家族の空間。リビングルームの暖炉を囲むように、夫婦の寝室と子供部屋、ゲストルーム、バスルーム、ルーフテラスがあります。これは写真手前に見える温かい暖炉の前に、家族や親しいゲストが自然と集まってくるように設計されています。

2階に昇るとさらに暖かみを感じるインテリアの空間が広がります。絶妙な窓の配置で外の視線を遮りつつ、自然光が多く入るような設計に。

モダニズム建築に見られるようなラフな空間の作り方ではなく、平面も断面も計算し尽くされた丁寧なデザインが伝わります。

自然と一体化する住まい

反対側の庭の方に回ってみると植栽が壁にまで這っており、まさに自然に溶け込んだ佇まいになっています。

ずっと昔からそこにあったかのような雰囲気。

大切なのは、豊かな暮らしがそこにあるか。

アアルトが理想とした住宅とは、人の生活が中心にあるべき建築。自然と調和し、愛するものとつつましく暮らすことができる空間です。アアルトハウスには、人を包み込むような、あたたかな雰囲気が感じられます。住み心地の良い家とは、広さや間取りでない。本当に大事なことは、そこで過ごす時間がいかに豊かに感じられるか。改めて住宅という建築について考えさせられる住宅です。

Alvar Aallon kotitalo – アルヴァ・アアルト自邸

開館時間:13:00~14:00(土・日曜日~16:00)
休館日:月曜日
URL : https://www.alvaraalto.fi/en/location/the-aalto-house/
住所:Riihitie 20, 00330 Helsinki, Finland

榎本綾

榎本綾

新しいものよりヴィンテージに惹かれます。

建築家は坂茂が好き。

design casa

建築家と建てる家。

家族のライフスタイルを尊重した、

家族のための「特別な住まい」をつくりあげます。