「性格の違う要素を組み合わせて空間をつくりたい」NKS2 architects代表・末廣宣子が語る大切なデザインや空間づくり

2022年に完成した〈010 BUILDING〉や、日本建築学会作品選奨を受賞した〈銘建工業本社事務所〉などの商業施設やオフィスの設計から、公共建築、都市計画まで幅広いプロジェクトを手掛ける建築設計事務所・NKS2 architects。今回はNKS2 architects代表・末廣宣子さんに、日常で大切にされているデザインや空間づくりでのコンセプトについて伺いました。

NKS2 architects代表・末廣宣子

1985年 日本女子大学大学院住居学専攻修士課程修了後、SKM設計計画事務所勤務。1992年から2年間ヘルマン・ヘルツベルハー建築設計事務所にて勤務。1995年にNKS architectsを立ち上げ、個人住宅を始め、民間オフィス、クリニック、公共の庁舎や学校、保育園、客船ターミナルなど、しなやかに機能する構造を持った建物を提案しています。

パートナーの母校との縁で福岡へ

京都府ご出身の末廣さんですか、何故福岡で活動を始められたのでしょうか。

「大学から上京し、東京の設計事務所に勤めました。その後オランダに渡り、パートナーである末廣 香織に彼の母校である九州大学から教鞭を取らないかとお声がかかり、そちらに移った流れですね。」

機能的であることはもちろん、ワクワクできるアイディアが大切

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「デザインというと人の手が入っているように感じられるものですが、自然界には機能的で美しいものはたくさんあります。そして、昔から今に至るまで残っているものは、優れたものだけだと考えています。優れたものは美しくて機能的であるが故に、社会の仕組みや生活さえも変えてしまいます。例えばiPhoneはデザインの塊みたいなものだと思うんです。

我々のデザインにおいても特に重視したいのは、機能的であることは当然のこととして、形だけではなく、それにワクワクしたり楽しくなるようなアイディアを詰め込むということだと考えて日々過ごしています。」

毎日異なる夕暮れが楽しめる水辺が好き

建築家として、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「日常で言えば、自宅の近くの御島崎という水辺があるのですが、夕暮れ時に毎日散歩しているといつも異なる風景に出会えるので気に入っています。

また、建物で言うとウィーンにある建築家・オットーワーグナーが建てた郵便貯金局のホールは、ずっと座っていたくなるような気持ちの良い空間だったので記憶に残っています。」

プロジェクトごとにパートナーと共により良い空間を目指す

末廣さんが代表を務めるNKS2 architectsについて、詳しく教えてください。

「福岡に移ってから1995年に末廣 香織と立ち上げた建築設計事務所です。2020年からは佐藤 寛之をパートナーに迎え入れ、3人体制となりました。手狭になった事務所の引っ越しのタイミングと同時期に、SUZAKI-KOEN STUDIOというシェアオフィスの立ち上げ話が膨らみ、そちらに事務所を移しました。我々の事務所の他にも、個人でお仕事をされている建築家さんだったり、福岡映画部さんだったり、異なる業界の方々も多い環境です。皆さんから良い刺激を頂けるので、これからも違う畑の人に入ってきてほしいなと考えています。
NKS2 architectsでは、プロジェクトごとにグループを組んで進行しており、様々なパートナーと共に個人住宅だったり庁舎、保育園大小様々な案件を抱えています。依頼主とキャッチボールをしながら進めていくイメージですね。」

異なる要素を組み合わせることで、より良い空間が生まれる

NKS2 architectsのコンセプトに「構造から考える」とありますが、具体的にはどういった点を意識されているのでしょうか。

「ここでいう構造とは、いわゆる橋とか梁といったハードなものを指しているのではなく、建物の構成だとか骨格だとか、建物を作っていくのに必要な場所とか、そういうものを全て含んでいます。できれば性格の違う要素を組み合わせて空間を作っていきたいと考えています。」

ヨーロッパの人々は建築への距離感が近い

末廣さんは大学院卒業後、日本の建築設計事務所での勤務を経て、オランダのヘルマン・ヘルツベルハー建築設計事務所に所属されておりましたが、そこでの経験はどのように生かされていますか。

「初めての海外での暮らしということもあり、鮮烈な記憶があります。日本である程度仕事を経験してから向かったのですが、とても物事が合理的に進んだりと、仕事の仕方が全然違いました。

オランダという国には東京のように突出して大きな都市があるわけではなく、同じくらいの性格の異なる都市がネットワーク化してできています。それらのどんな小さな街でも建築家がいて、その方々が直接世界を舞台に活躍されているんです。また、ヨーロッパの方々は日本より建築に理解が深いのも印象的でした。自分の街の建物について皆さん他人事ではなくて、日常的に市民の中で論議されている様子が見られました。」

異なる要素を組み合わせて新たな魅力をつくる

事務所のスタッフのみならず、様々なメンバーによってより良いアイディア・空間を目指す末廣 宣子さん。海外での経験も加わり、従来の思想に捉われない広い視野によって、注目の建築を生み出されているようです。

後編:「多様なメンバーとの化学反応で実力以上のものを生み出したい」NKS2 architects代表・末廣宣子が語るSUZAKI-KOEN STUDIOの魅力や福岡の街