「ちょっと新しいことをやってみよう」の実験精神。ビジュアルアーティスト・ディレクターの猪口大樹の作品づくり。について

現在、RED GEEKPICTURESに所属し、国際的に活躍するビジュアルアーティスト、ディレクターの猪口大樹さん。そんな猪口さんにご自身のことや、映像制作のことなど、様々な角度からお話を伺った。

暮らしの中で大切にしているデザイン。

はじめに、猪口さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺った。

「周りにある全てのものはなんらかのデザインがされているのではないか、デザインされていないものはないんじゃないかと思っています。なので、特定のデザインというよりも、その中で自分が好きなデザインを選ぶということを大切にしています。」

好きな場所は、「美術館や劇場」

続いて、お好きな場所や空間は、「美術館や劇場」。

頻繁に美術館や劇場に足を運ぶ理由として、「単純に作品を楽しむためという理由もありますが、日常では味わえない、非日常の空間や時間を楽しみにいっています。」と教えてくれた。

学生時代から、VJとして活躍。

学生時代から、VJとして活躍していた猪口さん。VJとして携わるきっかけなどについて伺うと、

「学生の時から、映像をやりたいなという気持ちはあったので、1番身近にあった入り口がVJでしたね。VJは、決まった処方、方法論というものがなかったので、自分で実験や、あれこれ工夫をしながらやっていました。そのため、この頃の“ちょっと新しいことをやってみよう”などの実験精神は、今でも生かされていますね。」と、当時の経験を振り返った。

西元祐貴さんとのコラボ「龍のキセキ」について。

2018年福岡美術館で、墨絵アーティスト西元祐貴さんとのコラボ作品「龍のキセキ」。白い板状のものに、西本さんが墨を使って書いていくと、そこを起点に色彩を伴って、変化をしていくというこのアート作品は、当時、数多くの人を魅了させた。

「あの作品も、かなりチャレンジしましたね。西本さんが書いている体の動きをモーションキャプチャーで撮り、そして、センサーをつけて筆の圧力も撮っているんですよ。西本さんが書いている時の体のデーターをビジュアル化して、作品だけでは見れない動きだとか、筆のスピード感、書いているときのライブ感みたいなものを映像で表現できないかという意図で作りました。」と、当時の作品作りについて教えてくれた。

続けて、「詰め込まれた静止画の絵画もすごくいいと思うけど、動きがあることで、時間軸の情報が見れるので、また新しい見方ができるんではないかと思っています。」と語った。

アートやデザインに対する日本と海外の違い。

現在、日本に止まらず、国際的に活躍する猪口さん。そんな猪口さんが感じる、アートやデザインの日本・海外の評価、価値観の違いについて伺うと、

「海外の中でも欧米とアジアでは、また違うと思っています。欧米はデザイン文化であり、デザインは、学問の1つ。専門家がやっているという認識です。そのためやっぱりデザインに対する地位がとても高いですね。例えばデザイナーが日本でいうお医者さんぐらいの地位があるんですよ。逆にアジアでは、まだそこまで評価はされていないのかなと感じます。」

「日本も、まだ軽視されているなという印象なので、今後はもっと日本でも評価されてほしいなと思っています。」と、願ったのだ。

印象派クリエイターとして参加中「イマーシブミュージアム」

現在、猪田さんが、クリエイターとして参加中の日本橋三井ホールで開催されている、イマーシブミュージアム。

モネやドガ、ルノワールの印象派の絵画を、日本橋ホールの壁や床に東映し、ただ鑑賞するというだけでなく、絵画の中に入り込むような体験ができる催しとなっているこの展覧会は、“日本初の没入体験型ミュージアム”と、名している。印象派クリエイターとして、参加している猪口さんに、イマーシブミュージアムについて伺うと、

「“かつて画家たちが目に残したかった物語が、動き出すということ”、と題しているように、お客さんが絵の中に入ったように見せたいというものがあり、なるべくそのような効果が出るように工夫して僕たちも作っています。」

具体的に工夫した内容について、「通常だと、絵を動かすときは、例えば人だったら人の輪郭に切り抜いて奥行きをつけたりするんです。しかし、今回はそういうことではなく、印象派の作家は光を描くスタンスの作家たちなので、人を描くとかでなく、光を描いていくので、そのような分け方をしませんでした。難しいんですけど、筆跡の1つ1つをなるべく細かく分解して、再構築するという手法にチャレンジしましたね。」と教えてくれた。

1本の物語として再構成

イマーシブミュージアムの中で、来場者に1番見てほしいところを尋ねると、

「全て見て欲しいです。(笑)単に絵を並べているというわけでなくて、1本の物語として再構成しているんです。スライドショーではなく、歴史的な流れや作家の考え方とかが、1本のムービーとして再構築しているので、1つ1つというよりかは、全体を見ていただけたらと思っています。」

「作品の解像度や、スケールも大きいので、すごくたくさんの方に参加していただき作りました。なので、かなりボリュームがあって、きっと楽しめると思います。」と語った。

歴史の背景を知ることから始めた作品づくり

また、イマーシブミュージアムの作品を作るにあたり、新たな発見や気づきはあったのかと伺うと、

「作品を作るにあたり、作家がどういう考えで書いているかなどのリサーチから入ったので、歴史の背景を知り、こういうこともあったんだなという発見はありましたね。知らなかったことに出会えました。」と、作品作りの裏話を教えてくれた。

LIFE is FUN.

インタビューの最後、川上さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is Fun」と答え、

「少し前まではチャレンジだったりとイケイケな感じだったんですけど、最近、モードが変わって、もっと色々なことを楽しんでいければいいなと思っています。」と話し、インタビューを終えた。

猪口さんは、今日も楽しみながら新たなことに挑戦していることだろう。そうして作り上げたものが、これからも私たちに、ワクワク、ドキドキする時間を届けてくれるのだ。