建築家・保坂猛によるクリスチャンのオーナーのための緩やかなゾーン分けが使い勝手の良い住まい「HOUSE IN KOZUKUE」
東京建築士会住宅建築賞を受賞した自邸〈LOVE HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。保坂さんが主宰する保坂猛建築都市設計事務所による住宅〈HOUSE IN KOZUKUE〉は、神奈川県横浜市に建つクリスチャンのご夫婦と小さなお子さん3人のための住宅。トップライトからの光が開放感を与えてくれる心地の良い住まいです。
様々な人が集う場でもあり、生活の場でもある住空間
クリスチャンであるオーナー夫妻の希望は、教会の友人や近隣で聖書を学びたい人が集まって勉強会を開催したり、日曜礼拝で弾くオルガンの練習ができるコモンルームが必要であること、また人を招く時も、毎日の生活にも自由に使うことができる、プライバシーが保たれた場所が欲しいというもの。これらを叶える空間を目指し設計が始まりました。
空間の解放性
敷地は緩い傾斜がある角地で、もとは長い間駐車場として活用されていました。その土地の一部に住宅を建て、月極の駐車場も5台残し、家族の駐車場2台と既存の自販機を残すことに。昼夜問わず不特定の人が飲料を買ったり、夜のテールランプや排気ガス、乗降時の話し声などの影響を考慮し、外壁で囲い込んだ平屋の内部に、半戸外の中庭を設置するプランを採用しました。こうして必要な閉鎖性を保持しながら、玄関ドアを1枚開ければ、道路や街から内部に緩く連続する解放感が感じられる空間となりました。
壁の中で等価に広がる中庭と居住空間
家の中は、ほぼ半分が外空間であり、室内でもっとも広くコモンルームがとられました。住宅で必要空間とされるようなリビング、ダイニング、キッチン、寝室、子ども部屋などの合計は全体の半分程度に。必要空間に対して余剰空間を多く持つことで得られる空間と時間が、この住宅の魅力となっています。
また、自然の光や風と共に神を学ぶ聖なる空間でもあり、生活空間でもある住宅であるため、平面全体に架け渡される木の柱梁フレームを茶色い塗装とし、その上にかかる小梁は白塗装とし、柱梁の交点が上からの光によって十字型の影を落とす天窓を平面全体に11ヶ所配置しました。
屋根の架かった外空間に面する屋内のスペースの窓を開けると、家全体は屋内と半屋外、野外が連続したグラデーションとなって諧調の中に区分がなくなります。余剰空間で食事をしたり本を読んだりしているということは、ダイニングや書斎は必要空間であることから解放され、必要空間と余剰空間が反転しているような状態になります。
必要空間と余剰空間が緩やかに繋がり広がる空間
クリスチャンであるオーナーの視点から生まれた、公共性と私的な空間を抱合した〈HOUSE IN KOZUKUE〉。屋内外、野外が溶け合い、空間そのものが必要や余剰を交代して分かち合っているような緩やかな空間性が特徴の住まいです。