建築家・保坂猛による、キャンプもガーデニングも欲張りに楽しむ住まい「COURTHOUSE IN NAGOYA」
東京建築士会住宅建築賞を受賞した自邸〈LOVE HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。保坂さんが主宰する保坂猛建築都市設計事務所による住宅〈COURTHOUSE IN NAGOYA〉は、名古屋駅近くに建つ、夫婦と子ども3人が住む平屋のコートハウスです。
欲張りなオーダーを詰め込んだコートハウス
オーナーの希望は「庭には大きな木を植えて畑をやりたい。そこで採れた野菜でバーベキューをして、子どもと星空の下キャンプもしたい。たくさんの洗濯物を庭に干して、風呂上がりのビールも楽しみたい」というもの。そうしたオーダーと、設計当初子どもたちが描いた家のスケッチから、多くのコーナーが多様なスペースを生成する平屋のコートハウスが導かれました。
屋内外を自由に跨ぐ多様なコーナー
建築は構成、スパン、経済性により木造を採用。天井高は均一となっています。庇の出具合によって負担差が生まれるため、負担の大きな箇所には4種類の柱が設置されています。
カクカクと折れ曲がる外周壁は40角形、中庭に面するガラス面は22角形、土間のラインは32角形、軒のラインは26角形をかたちづくり、これらのラインの重なり具合によって様々な中間領域が生成されます。
移り変わる季節や時刻とともに変化する居場所
季節によってカメやザリガニを「屋根付きの屋外土間」から「屋内の土間」に移動したり、洗濯物を「屋根付きの屋外土間」から雨上がりの「屋根なしの屋外土間」に移動したりとその時々によって適当な空間が移り変わります。
大きな庭もその場所によって特徴が異なり、大きな木を植えた芝生の庭やウッドデッキを有する庭、様々な野菜を育てる畑の庭など、それぞれが主役として混在し、土間や屋内と連動します。こうして様々な種類のコーナーが生まれ、多様なアクティビティに対応した居場所が存在するのです。
多様な中間領域が生み出す自由な暮らし
シンプルな形式でありながら、「屋内」と「中間領域」、そして「屋外」に跨がる領域が空間に多様性を生み出している〈COURTHOUSE IN NAGOYA〉。26角形の軒のラインは、周辺に建つ高層マンションや2階建の家が形作る複雑なスカイラインと調和して、周辺に見える景色を違和感ないものにしています。住む人の居場所や空間の役割を固定しない、のびのびとした住宅です。