眞木健一氏が未来の担い手に伝えたこれからの日本の住宅に必要な「スケルトン・インフィル」の重要性。
東京工芸大学の空間デザイン研究室学生による「暮らし方を考える」講評後、眞木健一氏から、カーサ・プロジェクトのこれまでの取り組みと、未来の担い手達に、これからの日本の住宅に重要な要素を伝えた。
【眞木健一】1967年福岡県生まれ。地元の高校を卒業後、アメリカの大学に留学。20代前半から工務店の仕事に取り組みながら、世界の住宅の性能を学び、日本の匠たちの職人技を大切に守る「遺す家」に取り組んでいる。『新築を超える中古マンションリフォーム』(書肆侃侃房)、『住宅革命』(WAVE出版)など著書多数。最新刊は2016年2月出版の『More Better Life 豊かに暮らすということ』(書肆侃侃房)。
「暮らしとデザイン」カーサ・プロジェクトの歩みと取り組み。
雑誌やテレビなどのメディアプロモーションを通じて「casa」シリーズの魅力や、「商品住宅」の意義などを伝えてきたカーサ・プロジェクト。「暮らしとデザイン」をテーマにした自社発信のウェブマガジン『#casa』でも「住宅のあり方」、「暮らしのあり方」などを伝えてきた。
お客様のどんな注文にも応えたいという想いから、イタリアでデザインしたものを、日本の職人・工場で作るという拘りの部材や、同じ家族構成であれば要望も類似する点に着目した、合理性とプロダクトを考えた「casa cube」の誕生など、カーサ・プロジェクトの幅広い取り組みと、これまでの歩みを伝える眞木氏。
日本の現在の住宅事情スクラップアンドビルドではいけないワケ。
そんな、住宅と共に住む人の「暮らし」を考えてきた眞木氏から、今後の日本の住宅は建てて壊す「スクラップアンドビルド」のままではいけないと話す。ずっと住まえる家、永く住まえる家とはどんな家なのか、環境に優しい家とはどんな家なのか、今回の「暮らしを考える」テーマ課題に更に問題提起を投げかけた。
また、空間デザインはどの視点からでも美しく、住みやすい空間こそが “ 良い家 ” につながるのだはと話す。例えば椅子に座った時も、キッチンからリビングを見渡した時も、どの視点に立っても快適さを感じることは重要だと話す。さらに、間取りだけでなく雑貨や小物で作る、空間造りも大切なのではと語る。
未来の担い手に伝えたい「スケルトン・インフィル」の重要性。
スクラップアンドビルドのない家を目指すためには、スケルトン(外側:変えられない構造躯体)とインフィル(内:ライフスタイルによって変わり続ける)に分けて家造りを考える必要があるのではないかと眞木氏は語る。
今回、学生の中には留学生も見られ、眞木氏から「日本の住宅って狭いと思いませんか?」と質問が出ると、「狭いけれど選択肢や条件で選べるところは良いと思った」、「狭い分、空間に無駄なスペースがない」、「フレキシブル」といった海外の視点から日本の住宅について意見を交わす場面も見られた。
日本の家もスケルトン・インフィルを意識してゆくことが、永く住まう家・空間には大切なのではないかと眞木氏は話す。スケルトン・インフィルの内装の配置に惑わされない躯体の設計には、風土にあった木造建築、光を通して風を通さない障子など、昔ながらの日本住宅の良さがポイントになってくる。未来の担い手達に新しい日本の住宅の在り方と、伝統の重要性を伝えた講義となった。