【casa cube 開発秘話】工務店の苦悩と葛藤の末に生まれた常識を覆す新発想

「家」は人生で一番大きな買い物といっていいだろう。そこで出てくる選択肢は「建て売り」か「注文住宅」か。世界に一つだけの自分の家(注文住宅)に憧れを抱く人も多いのではないだろうか。客の満足を叶えたいと注文住宅に力を注いできた眞木氏だが、それ故に客と工務店それぞれが抱える不も大きかったという。そんな中で生まれた「casa cube」と今までの常識を覆すような新発想とは?

 

【眞木健一】1967年福岡県生まれ。地元の高校を卒業後、アメリカの大学に留学。20代前半から工務店の仕事に取り組みながら、世界の住宅の性能を学び、日本の匠たちの職人技を大切に守る「遺す家」に取り組んでいる。『新築を超える中古マンションリフォーム』(書肆侃侃房)、『住宅革命』(WAVE出版)など著書多数。最新刊は2016年2月出版の『More Better Life 豊かに暮らすということ』(書肆侃侃房)。

【梶原清悟】1976年生まれ。大分県出身。2000年MAKIHAUS(株)入社2010年退社。2010年に独立しFANFAREco.,ltd.(株式会社ファンファーレ)を設立、同社代表取締役。福岡・博多を中心に活動中。

客の満足を一番に考えるが故の工務店の苦労

元々『世界に一つだけの家』100人いれば100棟の違う家をというのがコンセプトだったマキハウス。

客の満足を一番に考え、何度も打ち合わせを重ねることが正義だ!と信じる一方で、打ち合わせを重ねるごとに客の目は肥え、着工してもプランや仕様の変更が続く。その度にどんどん工期は伸び、いったいいくらになるのかわからないまま膨らんでいく建築費に、客の不満も募りクレームにつながっていく。それだけ手間暇かけたのに利益がほとんど残らないという報われない現状があった。

当初は工務がおらず設計がすべてを担っていたため予算の範囲でできていたが、回らなくなり工務部を作った。現場を知らない設計も沢山入ってきたことで、均整がとれなくなり、利益は下がる一方で社内は大きく荒れたと苦労を語ってくれた。選べる自由度が高いほど、こだわりが強くなるのも当然であろう。そんな不を少しでも解消するには、ある程度 『標準仕様』を決めて使うものを限定するしかない。

利益をできるだけ守るために「この額以下は受注しない」と営業ルールを敷いたり、「世界に一つだけの家」というコンセプトからできるだけ離れないように標準仕様もどんどん追加する方針で進めてみたりしたが、結局それも実際は曖昧で守られず、なかなか上手くいかなかったようだ。

いかにいい建物を、いかに自分らしい快適な住まいを、どれだけコストダウンするか

そもそもなぜ注文住宅を求められるのだろうか?建売はどうしてもコストダウンを図っているため、満足できるものではないからこそ客から手を加えたいと要望が出る。ではもし、自分のライフスタイルにピッタリ合っていて、住みやすく、本当に質のいい建物ならば注文にする必要はないのではないか?と眞木氏は発想を転換させた。

「いかにいい建物を、いかに自分らしい快適な住まいを、どれだけコストダウンするか」をテーマとなる。

良い材料でコストダウンするにはどうすればよいのか?

家造りにかかるコストは大きく分けて3つ「材料費・工賃・企業利益」だ。 従来の家はできるだけ材料でコストを下げようとするが、眞木氏はどうしても材料は良いものにこだわりたかったという。「工賃と利益をどれだけ抑えるか」に奮闘することとなる。

そこで着目したのがそもそもの構造。プレカット時に出る木材の無駄や運搬費、在籍数、効率を考えて、構造を四間真四角、田んぼの田というのはどうだろう?と思い立った。四角であれば構造も安定しているため強度も抜群だ。
これが後に「いいものをリーズナブルな価格で買える」というコンセプトの商品住宅『casa cube』の起点となるのだ。

一筋縄ではいかない堂々巡りの日々

期間を設けて四間真四角のプランを造らせたものの、やはり設計士たちは「家はお客に向き合って建てるものだ!」という『注文住宅』の思考から離れられず、せっかくコストを下げようとしているのに出てくるのは特殊なプランばかりだったという。

ならばと過去のプランを見直してみると、実際は間取りもデザインもよく似た図面ばかり。いくら客の要望を聞いても、設計士の能力に見合ったものしかできないのだと眞木氏は痛感したという。梶原氏(後に設計士としてカーサプロジェクトの中核を担う)の造るものと他の設計士が作るものは大きく違い、当然客はみな梶原氏のプランを選ぶ。

「じゃあマキハウスってどうなるの?マキハウスが出していく商品として考えなければいけないんじゃないか?」と不安を覚えたという眞木氏。その後新たな人物との出会いもあり、何か面白いマキハウスとしてのヒット商品をだそうじゃないか!と「客が満足できる商品住宅」に乗り出していく。

 

あなたが住宅に求めるものは何だろうか?普通とは違うお洒落なデザインか、機能性や安全性か、リーズナブルな価格か。その要件を叶え商品化したのが「casa cube」である。次回はどのように商品化されていったかについて語る。