ダウンリビングと吹抜けが居場所を浮かび上がらせる「ふわりと浮かび上がる住まい」のLDKとインテリア
オープンガレージのあるミニマルな外観が印象的な、鹿児島県薩摩川内市の「ふわりと浮かび上がる住まい」。前編で眺めたグレーの静かな佇まいの扉を開けると、一段下がったダウンリビングと開放的な吹抜け、ヌックやSTUDYといった点在する居場所が、グレーとブラックで統一された世界の中に広がっています。高低差が織りなす立体的な空間構成こそ、この住まいの核心です。
高低差が居場所を生む、吹抜けのあるLDK

約20帖のLDKに足を踏み入れると、まず目に入るのが床から一段沈み込んだダウンリビングです。フロアレベルを400mm下げることで、天井の高い吹抜けとの対比がいっそう際立ち、包まれるような安心感と伸びやかな開放感が同居する空間が生まれています。

大きな窓の先には芝生の庭とタイルデッキが広がり、腰を下ろした目線の高さから緑を眺められるのも、ダウンリビングならではの心地よさです。段差に沿って造作されたグレーのソファは、床の一部が持ち上がったかのように空間へ溶け込み、家具ではなく建築そのものが寛ぎの場をかたちづくっています。

リビングの傍らには、天井高を1,400mmに抑えたヌックがひそみます。あえて低く絞られた籠もり感のある空間は、読書や昼寝にちょうどいい距離感を暮らしにもたらします。

吹抜けを介して2階のSTUDYやホールともゆるやかにつながり、家族それぞれが別々の場所で過ごしながらも、気配だけはやわらかく行き交う。高低差とリズムによって程よい距離感が生まれ、距離があるからこそつながりを感じられる、立体的な空間構成です。
素材と色で統一された、静謐なインテリア

ダイニングキッチンは、ダークトーンの石目調ワークトップがテーブルへと連続するⅡ型のレイアウトです。ブラックのレンジフードや水栓、グレーの扉面材が、大判タイルの床と溶け合い、空間全体がひとつのグラデーションのようにまとまっています。天井に埋め込まれた一筋のライン照明が、夜にはやわらかな光の線を描き、ミニマルな空間に静かな表情を添えます。

吹抜けには、大きさの異なる3つの球体ペンダントが高さを変えて吊るされ、ハイサイドの窓から注ぐ光とともに、垂直方向の広がりを際立たせています。

鉄骨のささら桁に木の踏板を重ねたスケルトン階段は、光を透かしながら上下階をつなぐ、彫刻のような存在です。

洗面室では白いサブウェイタイルにマットブラックの壁付け水栓を合わせ、三面鏡の裏や下部のオープン棚に収納をまとめたすっきりとした造作洗面が、朝の身支度を心地よく整えます。スイッチやコンセントプレートにいたるまでマットブラックで揃えられ、細部のディテールが一貫した世界観で貫かれています。
暮らしを支える収納と動線

キッチン背面のパントリーや壁一面の可動棚、たっぷりと衣類を掛けられるウォークインクローゼットなど、収納計画も充実しています。生活感の出やすいものをしっかりと隠せるからこそ、ミニマルな空間の美しさが日常の中でも保たれます。

ランドリールームから洗面、クローゼットへと連なる家事動線もコンパクトにまとめられ、洗う、干す、しまうの一連の流れが最短距離で完結。デザイン性だけでなく、日々の暮らしやすさを静かに支える工夫が随所に息づいています。
日々の暮らしに豊かな余白をもたらしてくれる住まい
ダウンリビングと吹抜けが織りなす立体的なLDKに、グレーとブラックで統一された静謐なインテリア。高低差が生む程よい距離感の中で、家族それぞれの時間が層のように重なり合い、居場所がふわりと浮かび上がる。建築家の設計力が、日々の暮らしに豊かな余白をもたらしてくれる住まいです。