起業家としても活動する建築家・谷尻誠のインスピレーションの源とは!?

「豊かな生活」を追求する。建築家であり企業家の谷尻誠氏が考える、暮らしのデザインや生活の豊かさについて知るインタビュー後編。今回は、実際に彼が手掛けた作品を例に、そのインスピレーションや様々な仕掛けの意図について語ってもらった。

「絶景不動産」で感じた暮らしの変化

Via : https://zekkeisite.com

「最近は問い合わせがめちゃめちゃ多いんですよね」。そう話すのは、谷尻氏が手掛ける不動産業「絶景不動産」。絶景のある場所を不動産として仲介し、絶景の見える家を建てるというものだ。

彼曰く、問い合わせの多い理由に「コロナの影響もあり、自然な場所に身をおきたいという意識が高まっている」ことが挙げられるという。場所に囚われない仕事スタイルが日々確立しつつある中で、自分自身のための豊かな暮らしを求める者が多くなっているのだろう。

広島県・尾道市の複合施設「Onomichi U2」

写真:矢野紀行

Onomichi U2は、尾道市で戦時中に建てられた海運倉庫をリノベーションして造られた新しい複合施設だ。敷地内には地元の食材や生産品を販売するセレクトショップやレストラン、カフェやカフェ、サイクリングショップや雑貨屋などが広がる。

写真:矢野紀行
谷尻氏は、U2のインスピレーションについて「日帰り観光の町というのは言い換えれば、みんな帰ってしまう町」と話始めた。日帰り観光では、その町で夜ご飯を食べて飲食店が賑わったり、お土産を買ったりだとかという可能性が減る。
写真:矢野紀行
つまり彼は「来場者数よりも在泊数を増やすこと」がすごく重要だと目を向けたのだ。だからこそ「商業施設とホテル」を複合して尾道に長く滞在する仕掛けを作り、「建物単体を作ること」が町づくりにつながるように設計した。
写真:矢野紀行

その地域の経済までを考えてデザインする。これが彼が後に話す「建物に働いてもらうこと」の1つなのだろう。

谷尻誠自身が手がけた自邸 「House T」

写真:矢野紀行

谷尻氏の自邸である「House T」は、しっとりとした室内から外を眺める「光と影」を大切にした作品が印象的だ。そのインスパイアの由来について、元々、五右衛門風呂がある家で育ったという谷尻氏には、薪を焼べて火を焚いたり、暗い室内から明るい庭を見ることが原風景にあるという。

写真:矢野紀行

それが以前はコンプレックスであったが、今では「気がつくと追い求めている」「やりたいことに変わっていた」と話す。

写真:矢野紀行

昔に戻りながら自然のエネルギーを使って生活することに取り組んでみようと創り上げたこの邸宅は、当時水を打って涼しさを感じていたように、水を使って結露させて室内を冷やす実験をするなど、自然エネルギーだけで快適な空間を創りあげている。

レンタルスペースやアトリエなど、複合的な住宅をつくる意図

写真:矢野紀行

常に家を建てるということは、ローンを組む不安がある。そこで谷尻氏は「経済がある時に、全体として事業として成り立たせるか」を考える。事業性を考えながら自分の作品性を考え、分けずにどうやって並走させるかを重視しているのだ。

建物に働いてもらう「リアルAI」

写真:矢野紀行

大家業の人たちがやっていた様に、お金を生み出す家の提案を谷尻氏は「リアルAI」と名付けている。彼は「魅力ある建物を作れば、建物がちゃんと働いてくれる」と実際に話し、これからの時代、建物に働いてもらう形をアドバイスしているという。

どんな時代になっても自然のことを考えながら未来を想像していく

写真:矢野紀行

キャンプブームなど「自然に還る」ような行動が注目される昨今。世の中便利になると考えなくても行動できるが「敢えて不便にすることによって色んなことを考え、知恵が育まれる」と考える谷尻氏は、少しくらい不便でも自分が愛着が持てる家の方が大事だと述べる。

「LIFE IS NATURE」

谷尻氏は、インタビューでの「LIFE IS 〇〇」とは?という問いに対しても「LIFE IS NATURE」と解いた。その理由に「自然に耳を澄ますことが進化の元にある」と話すその先には、どんな時代になっても自然のことを考えながら未来を想像していきたいという思いがあるという。

本当の意味での「豊かな生活」の本質を、便利な今の時代だからこそ考え、向き合う。谷尻誠の様々な活動や建築設計、暮らしのデザインは、改めてこれからの時代の暮らしの本質を考える鍵となるだろう。