暮らしを楽しむ仕掛けが随所に——「1/fの家」が実現する、豊かな家族の時間
前編:喧騒から離れた寛ぎの住まい——分譲地に建つ、光と壁が織りなす「1/fの家」
神奈川県に建つモダンな住宅「1/fの家」。建築家・スタジオキチ合同会社が手がけたこの住まいは、インパクトのある外観デザインだけでなく、家族4人が豊かに暮らすための実用的な工夫が随所に施されています。
動線と収納が充実した、家事がラクになる1階の設計

1階の中心にあるLDKは、キッチン・ダイニング・リビングが一直線につながる開放的なプランです。ピアノベトン(コンクリート調)の扉材が印象的なアイランドキッチンを中心に、ダイニングとリビングがゆるやかに連続します。大開口のサッシから隣接するウッドデッキと中庭が見渡せ、昼間は外の緑と空が室内に飛び込んできます。夜になればデッキに設置されたライトが幻想的な表情を演出し、昼とはまた異なる豊かな表情を見せます。

キッチン背面にはパントリーが設けられており、食材や調理道具、家電類をすっきりと収納できます。見た目にも機能的にも整った状態を維持しやすく、忙しい日常の家事ストレスを軽減する工夫です。キッチン横の手洗い空間は動線上に自然に設けられており、外から帰ってすぐに手が洗える衛生的な設計となっています。

玄関には広いシューズクロークが隣接しています。可動棚が壁面いっぱいに整然と並び、家族4人分の靴だけでなく、アウトドアグッズや傘・ベビーカーなどの外出用品も余裕をもって収納できます。「土間空間が広く、外用のものを収納しやすい」という設計の意図が、そのまま日々の暮らしやすさへとつながっています。
2階は家族のプライベートと生活動線を一か所にまとめた設計

階段を上がると、2階は家族のプライベートな空間が機能的にまとめられています。
階段を上がった正面に広がるのが、セカンドリビングとしても活用できるオープンスペースです。将来的には子供室として使える仕様になっており、現在は折れ戸で仕切ることもできます。マスタードイエローのビーンバッグソファと観葉植物が配置され、書斎や趣味のスペースとして、また子どもたちが自由に遊ぶ場所として、フレキシブルに活用できます。

その隣に設けられた子供室は、コンパクトながらも機能的に整えられています。造り付けのカウンターが壁に沿って設けられ、学習スペースとして活用できます。細長い横長の窓から外光が差し込み、圧迫感を感じさせない明るい空間です。

主寝室は、床を一段上げたフロアベッドスタイルが印象的です。ベッドを置かずとも充実した寝室空間を演出するこのアイデアは、「主寝室の床を一部上げてベッドなしで充実した寝室空間を演出する」という建築家のこだわりから生まれました。足元には間接照明が仕込まれ、寝室全体に落ち着いたムードが漂います。横長のスリット窓から柔らかな外光が差し込み、寝室特有のプライバシーを保ちながらも換気と採光を確保しています。

主寝室に隣接するウォークインクローゼットは、ゆったりとした広さが確保されています。ハンガーパイプと可動棚が組み合わさり、夫婦2人の衣類や小物類を整理しやすい仕様です。2階には脱衣室兼ランドリースペースも設けられており、「室内干しが出来る脱衣兼ランドリーにすることで家事が楽になる」という設計の配慮が、洗う・干す・しまうという一連の家事動線を2階でひとまとめにしています。
昼と夜、それぞれの表情が楽しめる住まい

この住まいの魅力は、昼と夜で大きく表情が変わることにもあります。

昼間、LDKにいると斜めに切り取られた外壁の隙間から降り注ぐ光が、時間の流れとともにゆっくりと角度を変えながら室内を動いていきます。その様子は、まさに森の中の木漏れ日のようだと建築家は表現します。自然のリズムが家の中にまで届いてくるような感覚が、暮らしに豊かさと安らぎをもたらしてくれます。

夜になると、アップライトに照らされたV字の外壁が街路から浮かび上がり、周囲の建物とは明らかに異なる存在感を発揮します。ウッドデッキ越しに見えるLDKの温かな灯りは、通りに向かって静かに語りかけるように輝いています。
建築家の真摯な提案が詰まった住まい
分譲地という、ともすれば画一的になりがちな環境の中で、この住まいはたしかな個性を持ち、豊かな暮らしを実現しています。この家には分譲地に住みながらも自分らしい暮らしを楽しみたい家族への、真摯な提案が詰まっています。