かたちはミニマル、暮らしはのびやか。原田収一郎(しう)/moarによる「箱の家」
「箱の家」は、福岡を拠点とする原田収一郎(しう)の建築設計事務所「moar」が手がけた住宅です。明快な箱型のボリュームによって構成された住まいで、シンプルな形態の中に豊かな空間体験がつくり出されています。整った外観の印象とは対照的に、内部には多様な居場所が広がり、日常の暮らしを受け止める空間が丁寧に計画されています。
明快な箱型が生み出す住まいの骨格

「箱の家」の特徴は、建物全体がひとつの箱のような明快な形で構成されている点にあります。整った輪郭を持つ外観は周囲の環境に穏やかに溶け込みながら、住宅としての存在感を静かに示しています。

単純な形態とすることで内部空間の自由度が高まり、生活に応じた多様な使い方が可能になっています。

箱型の構成は建物全体をひとつのまとまりとして感じさせ、落ち着いた居場所を生み出しています。
光と奥行きを感じる内部空間

内部空間は、ところどころに配された開口部によって光が取り込まれ、穏やかな明るさが保たれています。外部からの光が壁や床に落ちることで、時間の変化に応じた表情が生まれています。

室内には視線が奥へと続く構成が取り入れられており、実際の規模以上の広がりが感じられます。ひとつながりの空間の中に複数の居場所がつくられ、日常のさまざまな過ごし方に対応できる住まいとなっています。

単純な形の中に変化のある空間体験が組み込まれることで、日々の暮らしが穏やかな高揚感とともに積み重なっていく、奥行きある時間へと育まれていきます。
暮らしに寄り添う緩やかなつながり

「箱の家」の内部空間は、明確に区切られた部屋の集合というよりも、ゆるやかに連続する場の重なりとして構成されています。それぞれの場所は用途に応じた性格を持ちながらも、完全に独立することなく視線や気配が行き交う関係が保たれています。

家の中にいながら家族の存在を自然に感じられる距離感が保たれており、同じ空間を共有しながらも、それぞれが思い思いの時間を過ごすことができます。開放性と落ち着きが共存するこうした構成は、日常の暮らしを無理なく受け止める器として機能しています。
シンプルなかたちに宿る、豊かな暮らしの器
「箱の家」は、明快な箱型という潔いフォルムの中に、のびやかな広がりと多様な居場所を内包した住まいです。整った外観が静かな存在感を放つ一方で、内部には光と視線の抜けが織りなす奥行きが広がり、日々の時間にさりげない変化をもたらします。ゆるやかにつながる空間構成は、家族の気配を感じながらも、それぞれが心地よい距離感で過ごせる関係性を育みます。単純だからこそ自由で、静かだからこそ豊か。そんな住まいのあり方を体現する「箱の家」は、暮らしを受け止める“器”の本質をあらためて問いかけています。