暮らしと舞踊が共鳴する家──建築家・工藤浩平が手掛けた「バレエ教室のある家」

「バレエ教室のある家」は、建築家・工藤浩平が設計した、1階に住居、2階にバレエスタジオを備えたユニークな住宅です。この家は、都市部から1時間圏内のベッドタウンに位置し、変化を続ける街の風景と調和しながら、家族の暮らしとバレエ教室の活動を支える空間として誕生しました。

暮らしとバレエが共存する合理的なレイアウト

バレエ教室のある家
Photo : Tomoyuki Kusunose

かつて駅前でバレエ教室を営んでいた娘とともに暮らす住まいを計画するにあたり、建て主はその教室を自宅に組み込むことを決めました。ただし、バレエ教室や親子の同居が将来も継続するかは定かでなく、家族構成や用途の変化にも対応できる柔軟なつくりが求められました。

バレエ教室のある家
Photo : Tomoyuki Kusunose

そのため、1階を住居、2階をスタジオとする構成を採用。将来的には2世帯住宅への転用も視野に入れた、可変性の高いプランとなっています。

無柱空間が生む、自由なバレエスタジオ

バレエ教室のある家2階
Photo : Tomoyuki Kusunose

2階のバレエスタジオは、木造とフィーレンディールトラスによる無柱空間が特徴です。この構造により、広々とした開放感あふれるスペースが確保され、バレエの練習に最適な環境が整えられています。

バレエ教室のある家
Photo : Tomoyuki Kusunose

トラスの隙間にはハイサイドライトが設けられ、北側から安定した自然光が室内に降り注ぎます。

バレエ教室のある家天井
Photo : Tomoyuki Kusunose

天井は全艶の塗装仕上げとされ、光が柔らかく拡散することで、明るく心地よい空間を演出しています。

多様な余白が暮らしに豊かさをもたらす

バレエ教室のある家外観
Photo : Tomoyuki Kusunose

この住宅では、建物のボリュームをいくつかに分割し、軒下空間やピロティのような余白を随所に配置しています。1階と2階のヴォリューム差を利用して設けられたテラスは、家族の憩いの場としても機能します。

バレエ教室のある家
Photo : Tomoyuki Kusunose

1階のリビング・ダイニングは天井高2,700mmの開放的な空間。テレビボードやソファを低めに揃えることでより広々とした印象に。

バレエ教室のある家
Photo : Tomoyuki Kusunose

南東側に大きな開口部を設け、テラスと連続的につながるデザインとなっています。

将来を見据えた柔軟な設計

バレエ教室のある家外観
Photo : Tomoyuki Kusunose

バレエスタジオは将来的に間仕切りを設けて2世帯住宅として利用することも可能です。また、駐車場として設けられたスペースは、将来の増築や減築にも対応できる柔軟な設計となっています。

バレエ教室のある家
Photo : Tomoyuki Kusunose

中心を持たない建築構成は、社会や家族の変化に応じて自在に変化できる寛容さを備えており、常に新しい価値を生み出し続ける住まいです。

暮らしと地域、未来をつなぐ住まい

「バレエ教室のある家」は、家族の暮らしとバレエ教室、さらには変わりゆく街並みとを柔軟に結びつける建築です。今だけでなく未来の可能性にも開かれた、多様な価値観と調和する住まいのかたちです。