メタボリズムの建築家、槇文彦や大高正人の建築もいっぱい!有名建築家が手がけた千葉県の建築10選。

千葉県には、歴史的建造物の再生から最先端のモダニズム建築まで、多様な建築的魅力が詰まっています。今回紹介した10選は、それぞれの建築家が持つ哲学や、時代背景、そして地域の特性が色濃く反映された傑作ばかりです。

1.ホキ美術館/日建設計

ホキ美術館
Via : Wikipedia.

千葉市緑区に位置するホキ美術館は、日本初の写実絵画専門美術館として2010年に開館しました。設計は日建設計が手掛け、特に目を引くのはその独特な外観と構造です。地上11.5mまで伸びる長さ30mのキャンチレバー(片持ち梁)構造は、まるで宙に浮いているかのような大胆なデザインで、見る者を圧倒します。内部空間は、絵画鑑賞に最適な環境を追求し、自然光を巧みに取り入れています。展示室はそれぞれ異なる採光計画がなされ、作品の魅力を最大限に引き出すように設計されています。例えば、天井から光を落とすトップライトや、壁面からの間接照明など、光の演出が随所に凝らされています。また、細部までこだわり抜かれた内装は、オーク材や特注のガラスなど質の高い素材が使われ、落ち着いた雰囲気の中でじっくりと絵画と向き合える空間が創出されています。

ホキ美術館

開館時間:10:00~17:30
休館日:火曜日
URL:https://www.hoki-museum.jp/
住所:〒267-0067 千葉県千葉市緑区あすみが丘東3丁目15

2.DIC川村記念美術館/海老原一郎

DIC川村記念美術館
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佐倉市にあるDIC川村記念美術館は、DIC株式会社が収集した近代美術コレクションを展示するため、1990年に開館しました。設計は海老原一郎が担当し、広大な敷地の自然と調和した建築が特徴です。美術館は、周囲の豊かな森や池の景観を最大限に活かすように配置されており、ガラス面を多用することで、内部からも四季折々の自然を感じられる設計となっています。展示室は、絵画の鑑賞に集中できるよう、シンプルな空間構成でありながら、細部にまで上質な素材が用いられています。特に、モネやルノワールといった印象派の作品が展示される部屋では、自然光が柔らかく差し込み、作品の色合いを美しく際立たせます。また、美術館の外に広がる広大な庭園には、彫刻作品が点在し、散策しながらアートを楽しめる工夫も凝らされています。

DIC川村記念美術館

住所:〒285-8505 千葉県佐倉市坂戸 631

3.幕張メッセ/槇文彦

幕張メッセ
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千葉市美浜区に立つ幕張メッセは、国際的なコンベンション施設として1989年に開業しました。設計は世界的に著名な建築家、槇文彦が手掛け、そのデザインは現代日本のランドマークの一つとして高く評価されています。複数の展示ホール、国際会議場、イベントホールからなる大規模複合施設でありながら、各棟が連続性を持つようにデザインされています。特に、シンボリックな屋根のデザインは、近未来的な印象を与えつつ、周辺の景観との調和も図られています。内部空間は、大空間を活かした開放的な設計が特徴で、自然光を取り入れるトップライトや、シンプルながらも洗練された素材使いが随所に見られます。来場者がスムーズに移動できるよう、サイン計画や動線設計も綿密に計画されており、機能性とデザイン性が高い次元で融合した建築と言えます。

幕張メッセ

住所:〒261-8550 千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1

4.佐倉市立美術館/坂倉準三

佐倉市立美術館
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佐倉市立美術館は、佐倉市の歴史的建造物である旧川崎銀行佐倉支店(1918年築)を保存・活用し、増築部分を加えて1994年に開館しました。増築部分の設計は、モダニズム建築の巨匠、坂倉準三が担当しました。既存の歴史的建造物と、増築された現代的な空間が見事に融合している点が最大の魅力です。旧銀行棟の重厚な雰囲気とは対照的に、増築部分はガラスとコンクリートを基調とした、開放的でシンプルなデザインが特徴です。特に、光が降り注ぐ吹き抜けのエントランスホールは、旧銀行棟の趣と増築部の現代的な美しさが共存する象徴的な空間となっています。内部空間は、展示室ごとに異なる性格を持たせながらも、全体として統一感のあるデザインを保っています。地域の歴史を大切にしつつ、新しい文化を発信する拠点として、市民に親しまれています。

佐倉市立美術館

住所:〒285-0023 千葉県佐倉市新町210

5.千葉市立打瀬小学校/小嶋一浩・小泉雅生/シーラカンス

千葉市立打瀬小学校
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千葉市立打瀬小学校は、1995年に開校した新しいタイプの小学校として注目されました。設計は小嶋一浩と小泉雅生が率いるシーラカンスが担当し、従来の学校建築の概念を打ち破る、開放的で多様な学習空間を提案しています。特徴的なのは、教室を細かく区切るのではなく、廊下と一体化した「メディアスペース」や「オープンスペース」を積極的に設けている点です。これにより、子どもたちは学年やクラスの枠を超えて自由に活動できる環境が生まれています。また、中央に配置された中庭や、自然光が降り注ぐ階段室など、外部空間とのつながりを意識した設計も特徴です。カラフルな色彩や、子どもたちの目線に合わせたデザイン、そして木材を多用した温かい雰囲気は、子どもたちの創造性やコミュニケーション能力を育むことを目的としています。

千葉市立打瀬小学校

住所:〒261-0013 千葉県千葉市美浜区打瀬1丁目3−1

6.千葉県立美術館/大高正人

千葉県立美術館
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千葉県立美術館は、1974年に開館した千葉県を代表する美術館です。設計は日本の現代建築を牽引した建築家の一人、大高正人が手掛けました。直線的で力強いフォルムと、コンクリート打ち放しの外壁が特徴的なモダニズム建築です。外観は重厚感がありながらも、美術館としての格調高い雰囲気を醸し出しています。内部空間は、展示室が多様な構成を持ち、企画展やコレクション展に合わせて柔軟に対応できるような設計がなされています。特に、自然光を効果的に取り入れる工夫が随所に見られ、作品の鑑賞に最適な光環境を提供しています。また、展示室間の移動もスムーズに行えるよう、動線計画が綿密に練られています。周囲の緑豊かな公園と一体となるように配置されており、建物自体がアート作品のように、周辺環境と調和しながらも存在感を放っています。

千葉県立美術館

開館時間:9:00~16:30
休館日:月曜日
URL:http://www.chiba-muse.or.jp/ART/
住所:〒260-0024 千葉県千葉市中央区中央港1丁目10−1

7.千葉県立中央図書館/大高正人

千葉県立中央図書館
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千葉県立中央図書館は、1968年に開館した千葉県の中核図書館であり、千葉県立美術館と同じく大高正人が設計を手掛けました。美術館と同様に、コンクリート打ち放しの力強い構造が特徴のモダニズム建築です。外観は、周辺の景観に溶け込みながらも、その存在感を主張しています。内部空間は、利用者が快適に利用できるような工夫が随所に凝らされています。特に、高い天井と広々とした閲覧スペースは、開放感と落ち着きを両立させています。自然光を豊富に取り入れるための大きな窓が設けられ、明るく心地よい読書空間が提供されています。また、書架の配置や案内表示なども利用者の視点に立って計画されており、機能性が重視されています。建築そのものが図書館としての役割を最大限に引き出すように設計されており、長年にわたり多くの県民に利用され続けています。

千葉県立中央図書館

住所:〒260-0855 千葉県千葉市中央区市場町11−1

8.東京キリスト教学園チャペル/磯崎新

東京キリスト教学園チャペル
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印西市に位置する東京キリスト教学園チャペルは、世界的建築家である磯崎新が設計を手掛け、1990年に竣工しました。磯崎建築特有の、幾何学的で抽象的な形態が際立つ建築です。特に目を引くのは、緩やかなカーブを描く屋根と、コンクリート打ち放しの壁面が織りなす独特なフォルムです。内部空間に入ると、外部の力強い印象とは異なり、光と影が織りなす神秘的で厳かな雰囲気に包まれます。天井から差し込む間接光や、祭壇に光が当たるように計算された開口部など、光の演出が非常に巧みです。礼拝堂の座席配置や素材選びも、静かで集中できる空間を創り出すことに貢献しています。訪れる人々に精神的な安らぎと、建築そのものの美しさを感じさせる、磯崎新らしい哲学が込められた空間と言えるでしょう。

東京基督教大学 チャペル

住所:〒270-1347 千葉県印西市内野3丁目301−5

9.千葉市美術館・中央区役所/大谷幸夫

千葉市美術館・中央区役所
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千葉市美術館と中央区役所の複合施設は、千葉市中央区の中心部に位置し、1995年に開館しました。設計は大谷幸夫が担当し、現代的な美術館機能と行政機能が一体となった、ユニークな建築です。特徴的なのは、歴史的建造物である旧川崎銀行千葉支店(1927年築)を保存し、その上部に新しい建物を重ねる「積層型」のデザインを採用している点です。これにより、歴史と現代が共存する、印象的なファサードが形成されています。内部空間は、美術館部分と区役所部分でそれぞれ異なる表情を見せます。美術館は、多様な展示に対応できるよう、柔軟な空間構成が特徴で、企画展ごとに最適な展示環境を提供します。一方、区役所は、市民が利用しやすいように、効率的で明るい空間が確保されています。街の中心で、文化と行政が融合した新しいタイプの建築として、市民に親しまれています。

千葉市美術館・中央区役所

住所:〒260-0013 千葉県千葉市中央区中央3丁目10−8

10.千葉大学・医学部記念講堂/槇文彦

千葉大学・医学部記念講堂
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千葉大学医学部記念講堂は、1992年に竣工した槇文彦の設計による建築です。大学キャンパス内に位置しながらも、その洗練されたデザインはひときわ目を引きます。特徴的なのは、緩やかな弧を描く屋根と、ガラスや金属パネルを組み合わせた外壁が織りなす、軽やかでシャープな印象です。内部空間は、講堂としての機能性を追求しながらも、槇文彦らしいエレガントなデザインが随所に光ります。自然光を豊かに取り込む大きな窓や、木材を多用した内装は、温かく開放的な雰囲気を生み出しています。また、音響効果にも配慮されており、講演や発表に最適な環境が提供されています。大学の教育・研究拠点としての役割を果たすだけでなく、訪れる人々に建築の美しさを感じさせる、槇文彦の哲学が凝縮された建築と言えるでしょう。

千葉大学・医学部記念講堂

住所:〒260-0856 千葉県千葉市中央区亥鼻1丁目8−1

千葉県にある建築家によるユニークな建築

ホキ美術館の挑戦的なキャンチレバー構造、DIC川村記念美術館の自然との一体感、幕張メッセや千葉大学医学部記念講堂に共通する槇文彦の洗練されたデザイン。また、佐倉市立美術館や千葉市美術館・中央区役所のように、古いものと新しいものを融合させるユニークなアプローチも千葉の建築の特徴と言えるでしょう。