「エンジニアリングで作る価値を人間的なものにする」デザインエンジニア・田川欣哉の影響を受けた人物やデザインとエンジニアリングのバランスについて

前編:「立体になった時の調和が大切」デザインエンジニア・田川欣哉の好きなデザインやものづくりへのこだわり

プロダクトデザインからブランディング、企業のビジネスデザインまで、多種多様なものづくりに取り組むデザイン・イノベーション・ファームTakram。今回は、代表取締役でありデザインエンジニアの田川欣哉さんに、影響を受けた人物やデザインとエンジニアリングのバランスについて伺いました。

影響を受けたのはジェームズ・ダイソン

デザインエンジニアとしてジャンルを超えて様々なプロジェクトに取り組まれていますが、個人的に特に影響を受けた方はいらっしゃいますか。

「掃除機で有名な『ダイソン』の創業者、ジェームズ・ダイソンです。ジェームズはデザインとエンジニアリングの間をいくハイブリット型の先駆者的な方です。どうやったら新しいものを一般の方々にも喜んでもらえる形で仕上げられるのか、そうした視点で素晴らしい製品をたくさん生み出されています。」

良くなっていく過程にワクワクする子どもだった

子どもの頃はどんなお子さんでしたか。

「校庭から泥を集めて作る泥団子にこだわっていました(笑)。自分で試行錯誤しながら、工夫しながら、とてもすべすべで硬いクオリティの高い泥団子を一生懸命作っていました。一つのもののクオリティが高くなっていく過程にワクワク、ドキドキしていました。」

二重人格の自分が会話をしているような感覚

デザイナーとエンジニアの仕事は異なるものですが、普段のお仕事での切り替えはどのようにされているのでしょうか。

「頭の中にデザイナーとしての自分と、エンジニアの自分が二重人格みたいにいて、頭の中で会話しているような感じですね。無意識に感じられるほど高速で切り替えが行われていると思います。」

技術を引き出すデザインが世界的にも評価されている

H3ロケットの飛行状況をリアルタイムで可視化するシステム「H3 Flight Status Indication System for Public (H3 FIP)」のデザインと開発を担当

テレビでアートディレクションをされた「ミミクリーズ」やTAMRON一眼レフ交換レンズ「SPシリーズ」のプロダクトデザインなど、多くの作品で様々な賞を受賞されていますが、ご自身の作品が世界で評価される理由は何だと思いますか?

「世界の中で見ても、デザインをやる人たちで、エンジニアリングやテクノロジーに理解が高いメンバーによって構成されたチームは珍しいと思います。技術やエンジニアリングを理解して、それを引き出すデザインに繋げている面が評価に繋がっていると思います。」

デザインは生活者とテクノロジーを繋げる役割

一つのプロダクトを手掛ける中で、デザインとエンジニアリングに優先順位はあるのでしょうか。

デザインもエンジニアリングもどちらが先と言うことはあまりないです。エンジニアリング視点だけで設計されただけだと、一般のユーザーにとっては使い勝手が良くなかったり、生活の空間に溶け込まなかったりすることが多く、そうしたプロダクトが世の中に溢れていくのは寂しいと思います。デザインは生活者とテクノロジーを繋ぐ役割として、どうすればユーザの使い勝手が良くなるか、心地が良くなるのかなど、細かい部分までケアしていくことが大切です。エンジニアリングとしっかり協力して、テクノロジーの価値を人間的なものにする、それがデザインの役割だと思います。

デザイン面でのケアがこれからの世界ではより重要になる

スマートファニチャーのプラットフォーム「Kachaka」。プロジェクトの初期からプロダクトのローンチまで、コンセプトメイク・R&Dサポート・アプリUIデザイン・VIデザイン・ローンチウェブサイトなどの一連のデザインを担当

様々なものがデジタル化されて総合的なネットワーク化が進んでいますが、今後Takramではどういった展開を考えられていますか。

「様々なプロダクトがネットやAIと接続することで、便利になることが増えてくると思います。20年ほど前まではポケベルや掲示板を用いて人と待ち合わせをしていた時代もあるわけで、ここから20年でも大きな変化が起こっていき、現在のスタイルが古臭く感じられていくはずです。その中で、一般のユーザーにとってテクノロジーがネガティブな結果に繋がらないように、人々の生活に寄り添えるように、デザイン面でケアすることがより重要になると思います。」

学び続けることで人生をより良いものにしたい

デザインとエンジニアリング双方の視点によって、一気通貫したものづくりを行う田川さん。そんな田川さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「ラーンフォーライフ、『人生是学び』ですね。生きているうちにどんどん新しいことを学ぶことで、古いやり方だけを信じるのではなく、どうやったらより良い暮らしや進め方ができるのかを探す旅、と言うのが人生だったり暮らしだと考えています。」

日々アップデートされる技術を、より良い暮らしに繋げる

デザインとはテクノロジーと生活者を繋げる役割だと話す田川さん。日々進化する技術を、分野を越境した高い視座によって良い暮らしに繋げるTakramの活動に、今後も注目です。