120ヘクタールの広大な土地にオスカー・ニーマイヤーによるブラジル・サンパウロにある「イビラプエラ公園」の建築群

ブラジルを代表する建築家オスカー・ニーマイヤー。女性の身体に例えられるように有機的で自由な曲線を特徴としたデザインからは、ブラジルの自然が持つ生命感とモダニズムの幾何学の見事な融合を感じ取ることができます。2012年に104歳で亡くなる直前まで精力的に設計を手がけていた彼の作品は、プリーツカー賞・アメリカ建築協会ゴールドメダルなど数々の建築賞を受賞。その成功は建築という概念を超えてブラジルの名を世界に知らしめる多大な貢献を果たしました。

ブラジルのサンパウロにあるオスカー・ニーマイヤーが設計した公園「イビラプエラ公園」

そんなニーマイヤーが、環境デザイナーのホベルト・ブーレ・マルクスとともに、サンパウロ市政400周年の記念事業の一環として造営したのが「イビラプエラ公園」。南米ブラジル最大の都市サンパウロの南部に位置する120ヘクタールの広大な市営公園であるこちらには、「イビラプエラ劇場」や「サンパウロ近代美術館」、「ルーカス・ノゲイラ・ガルセス州知事パビリオン」などニーマイヤーが手掛けた作品が一同に集結しており、見どころ豊富なスポットとなっています。

赤い庇が目を引く音楽ホール・イビラプエラ劇場

サンパウロのランドマークのひとつ「イビラプエラ劇場」は、イビラプエラ公園の中心に建つオスカー・ニーマイヤーの建築作品で、2005年に完成しました。

三角形の白い建物から舌のように伸びた赤い庇が印象的な約196坪の音楽ホールで、生前に「建築にとってアートはとても大切」と語ったというカールマイヤーらしく、上空から見るとその全貌は台形をしています。

建築の裏側には屋外用のステージが設けられています。

ブラジルの青い空に白と赤のコントラストが映える外観はとても印象的ですが、内部は流れるような赤い曲線で彩られており、こちらも見る人を魅了します。1階がエントランスと800席の観客席、ステージから構成されており、下階には音楽学校やバー、アーティストのためのドレスルームなどが配されています。

Auditório Ibirapuera – イビラプエラ劇場

所在地:Av. Pedro Álvares Cabral – Vila Mariana, São Paulo – SP, 04094-050 Brasil
URL : http://www.auditorioibirapuera.com.br

高床式の構造がユニークな美術館・サンパウロ近代美術館

「MAM」の愛称で親しまれている「サンパウロ近代美術館(São Paulo Museum of Modern Art)」。

南米の近代美術館の先駆けとして、1948年に設立された「サンパウロ近代美術館」のコレクションは13世紀から現代まで約8000点もあり、ルノアール、ゴッホ、ピカソなどの有名作家の作品も多く収蔵しているため「奇跡の美術館」とも呼ばれ賞賛されました。建築は4本の巨大な赤い支柱で支えられ、ガラスとコンクリートで造られた現代高床式の構成となっています。

1993年には敷地内にロベルト・ブリュー・マークスがデザインを手がけた彫刻庭園もオープン。建物内外で作品を楽しめます。

館内にはカフェやビュッフェレストランも併設されており、壁面はガラス張りになっているので公園と地続きのような開放感が感じられる心地の良い空間です。

Museum of Contemporary Art (MAC), University of São Paulo – サンパウロ現代美術館

所在地:Av. Pedro Álvares Cabral, 1301 – Vila Mariana, São Paulo – SP, 04094-050 Brasil
開館時間:10:00~21:00
休館日:月曜日
URL : http://www.mac.usp.br

日本政府と日系コロニアが寄贈した日本館

日本庭園の最高傑作と評される京都の桂離宮をモデルに、あらゆる資材を日本から持ち込んで作られたというイビラプエラ公園の「日本館」は、日本の建築学界の大御所である堀口捨巳博士によって設計された本格的な日本庭園です。サンパウロ市政400周年を記念して、ガルサス湖のほとりに造営されたもので、書院造りの日本家屋を中心に、320匹の錦が泳ぐ池や盆栽などが見られます。数寄屋造りの中には歴史博物館もあり、古墳時代の埴輪や縄文時代の土偶をはじめ、鎧兜や国歌に詠まれている「さざれ石」など、歴史美術品が展示されています。

UFOのような多目的施設、ルーカス・ノゲイラ・ガルセス州知事パビリオン

UFOが降り立ったような造形の建築は「ルーカス・ノゲイラ・ガルセス州知事パビリオン」という施設。公園がオープンした1954年当時にサンパウロ州知事を務めていた人物「Lucas Nogueira Garcez」の名を付しています。

中はニーマイヤーらしいシンプルで近未来的な造形となっています。

当初は航空博物館や民俗学博物館だったものの、現在では展示場として使われています。

Lucas Nogueira Garcez Pavillion – ルーカス・ ノゲイラ・ガルセス州知事パビリオン

所在地:Av. Pedro Álvares Cabral, S/n – Portão 2 – Vila Mariana, São Paulo – SP, 04094-050 Brasil
URL : http://www.museudacidade.prefeitura.sp.gov.br/quem-somos/pavilhao-oca/

広大な空間を生かした建築・アフロブラジル博物館

公園を奥に進むと「アフロ・ブラジル博物館」というブラジルの黒人の文化や歴史を伝える博物館があります。

ニーマイヤーの他にイタリア生まれのブラジルのモダニスト建築家・リナ・ボ・バルディによるデザインの家具も展示。

内部はV字の柱と大きなスロープが印象的な作りとなっています。

平面的に広い空間だからこそできる、ダイナミックな構成がユニークな建築です。

Museum Afro Brazil – アフロブラジル博物館

所在地:Portão 10, Av. Pedro Álvares Cabral, s/n – Vila Mariana, São Paulo – SP, 04094-050 Brasil
開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日
URL : http://www.museuafrobrasil.org.br

ファサードが印象的な建築・ブラジル文化パビリオン

ブリーズ・ソレイユのような日除けをファサードにあしらった「ブラジル文化パビリオン」。どことなくニーマイヤーが影響を受けたと言われているル・コルビュジエの建築のような雰囲気も感じられる建築です。

Pavilhão das Culturas Brasileiras – ブラジル文化パビリオン

所在地:Av. Pedro Álvares Cabral, s/n – Ibirapuera, São Paulo – SP, 04094-000 Brasil
URL : http://www.museudacidade.prefeitura.sp.gov.br

各施設を緩やかに結ぶ回廊もユニークなのびのびとした公園

それぞれの建築を繋いでいるのが、平面で見ると不定形な回廊。回廊はブラジルの強い日差しを遮りつつ公園の中でアクセントになるようなスペースになっています。屋台が出ていたり、サッカーをする人がいたりとラフな使い方がブラジルらしく、観光客のみならず地元民にも愛される公園です。

Parque Ibirapuera – イビラプエラ公園

所在地:Av. Pedro Álvares Cabral – Vila Mariana, São Paulo – SP, 04094-050 Brasil
開館時間:5:00~24:00
URL : http://www.prefeitura.sp.gov.br/cidade/secretarias/meio_ambiente/parques/regiao_sul/index.php?p=14062