スペイン・バレンシアにある建築家サンティアゴ・カラトラバが手掛けた美しすぎる音楽ホール「ソフィア王妃芸術宮殿」

スペイン・バレンシアにある複合施設「芸術科学都市」。この場所には、建築家サンティアゴ・カラトラバによる近代建築が立ち並ぶことでも注目を集めている。

バレンシア生まれの建築家サンティアゴ・カラトラバ

構造エンジニアでもあるバレンシア生まれの建築家「サンティアゴ・カラトラバ」。彼は、「芸術科学都市」のほとんどの建築を手がけたことでも知られ、生物の骨格を組み合わせたような斬新な建築デザインで世界的にも有名だ。

構造エンジニアとして培った工学技術を駆使し、複雑な構造計算によって創られる建築物の数々は、まるで「骨や翼」を思い起こさせるような独特かつダイナミックな造形である。

芸術科学都市敷地内に併設される音楽ホール「ソフィア王妃芸術宮殿」。14 階建てという大規模な建物の中には、1481席もあるオペラハウスや1500席あるメインホール、500席ほどある2つのホールの計4つのホールを持つ。

サンティアゴ・カラトラバの設計により 2005 年に一般公開され、バレンシアの文化拠点として認知されている。

まるでSF映画の世界に入り込んでしまったかのようなデザインが印象的な外観は、訪れるものを驚愕させる。宇宙船のような曲線的な屋根を持つファザードは、アントニ・ガウディの「グエル公園」で見られるような不定形なタイルを敷き詰めた仕上げだ。

実際にもサンティアゴ・カラトラバは、ガウディのタイルの意匠を「カタルーニャの伝統」と捉え、それを踏襲したデザインにしたのだという。

全面ガラスと、サンティアゴ・カラトラバのデザインらしい「白い骨格」のような柱・曲線で設計された内部空間。柔らかく光を取り込みながらも空間全体をカーブの造形が包む。

まるで宇宙船の中にいるような未来的な内部空間と、外に並ぶサンティアゴ・カラトラバの建築物・美しく照らされた水辺が相まり、非現実的な感覚を持たせている。

オペラ作品やコンサートを上演するために造られたメインホールは1,470 席を備え、世界有数の巨大オーケストラピットを誇る。全体が連続する骨格のような柱と梁に覆われた空間が美しい。

座席の背面の壁には、絵画が描かれたタイルの仕上げを起用。ポルトガルだけでなくスペインでもこう言った仕上げが伝統としてあることを表現している。

メインホールの外は、自然光が入る開放的なホワイエがある。生物の骨格の中に取り込まれたような内部空間は、どこを見渡してもフォトジェニックだ。

各階の通路がRC構造でカーブを描いて連なり、まるでニューヨークにあるフランク・ロイド・ライトによる「グッゲンハイム美術館」のファサードをも連想させる。

上階へとぐるぐると伸びる螺旋階段は、RC構造で重厚感がある中にも緩やかに空間を広げている。

500席ほどの規模でできたステージホールは、後部へと伸びる梁と間接照明のデザインが斬新だ。歴史も感じる解放的で明るいメインホールに対して、独創的で斬新なデザインは先進性を感じる。

連続する柱と梁のデザインが、まるでスターウォーズのような雰囲気のバックヤードは、光がトップライトから注がれ心地良い。封鎖的な空間にもかかわらず、サンティアゴ・カラトラバの知識による軽やかな設計技術でスペース全体に開放感がある。

本館から地下で繋がるホールや屋上の外壁などにも、ガウディのタイルの意匠を踏襲したと思われるデザインが目を引く。不定形のタイル仕上げが、サンティアゴ・カラトラバ建築の近代的な世界観にも違和感なくぴったりと交わり、その空間を独特に引き立てている。

エレベーターで地下から一気に屋上に昇ると広がるのは、空とのコントラストが心地良い屋上空間。この屋上では、レセプションパーティーなどのイベントが開かれることもあるそうだ。地中海らしい外構デザインが、サンティアゴ・カラトラバの世界感と合わさって、どこか高貴な雰囲気も感じる。

「芸術科学都市」の最も北側にある「ソフィア王妃芸術宮殿」は、訪れる者を巨大な迫力や造形で驚愕させる。サンティアゴ・カラトラバの建築で見られる造形や空間デザインをふんだんに使いながらも、所々にはスペインやカタルーニャ、あるいはガウディの要素を取り入れている点が独特だ。

周りに立ち並ぶ彼の建築物の中でも、また違った「サンティアゴ・カラトラバの振り幅」を感じられる興味深い建築こそ「ソフィア王妃芸術宮殿」である。

電話：+34 961 97 58 00
URL : https://www.lesarts.com
住所：Avenida del Professor López Piñero, 1, 46013 Valencia, Spain