プリツカー賞受賞した理論的建築家・磯崎新の初期の作品「アートプラザ・磯崎新記念館」

大分役所の向かいにはコンクリート打放しの大きな梁が飛び出したような一際目立つ建築があります。人目をひくこの建築は「アートプラザ・磯崎新記念館」です。1998年2月に開館してからアートのため幅広い用途で利用されています。そして特筆すべきはその設計。一目見るために世界中から人が訪れます。

プリツカー賞を受賞した磯崎新という建築家

Via : Wikipedia.

まず、「建築界のノーベル賞」とも紹介されるプリツカー賞をご存じでしょうか。正式名称は「プリツカー建築賞」。この賞は、アメリカのホテルチェーン、ハイアットホテルアンドリゾーツのオーナーであるプリツカー一族運営の「ハイアット財団」が、「建築を通し人類や環境に貢献した人物」に送る賞です。日本人ではほかに丹下健三や安藤忠雄など名だたる建築家が受賞しています。

この賞を受賞した磯崎新はもちろん世界的に著名で理論的な建築家と言われています。時代の激動にあたり世界中で建築のありようが変化する中、自身の建築や批評を通してポストモダン建築を牽引したと人物と評されています。その影響力は大きく、磯崎新が手掛けた建築を目的に世界中から人が集まるほどです。1980年以降は日本国外を中心に活躍しています。

紆余曲折の歴史をもつ「アートプラザ」

アートプラザは最初からアートプラザという名で建てられた訳ではありません。はじめは1966年に「大分県立大分図書館」として建築されました。その後、県立図書館の新築移転に伴い大分県から大分市へ土地・建築の譲渡が行われ、1998年に新しく「アートプラザ」・磯崎新記念館として活用されることになったのです。

しかし、活用されるまでには紆余曲折がありました。図書館としての役目を終えた「大分県立大分図書館(現アートプラザ)」は、当時取り壊しの話が出ていたのです。

しかし国内外の人々が保存運動を起こし、取り壊しは無くなりました。保存を求めた人々のなかに多くの建築関係者がいたことから、建築の専門家からも残すべき建物として大事にされていたことがわかります。

初期の代表作を構成するコンセプトと光

アートプラザは磯崎新の初期の作品です。構想にあたり「プロセス・プランニング論」を使いながら、その方法論を確立させたと言われています。「プロセス・プランニング論」とは大まかにまとめると、時間によるあらゆる変化を計画段階から想定して設計することです。

具体的には改修、増築、そして用途の変化などを想定しています。実際に図書館からアートプラザへ用途は変化しましたが、現在も色あせることなく人々に愛されています。

また、訪れた人々は建物に入ったときの光の美しさに感銘を受けると言います。その理由は外光を巧みに取り入れた設計です。

ロビーでは天窓から光が「上から下」に落ち、観覧室では水平窓から「横」に光が差し込みます。ただ光を取り込むだけではなく、あらゆる角度から取り込まれた光が室内を彩っています。

建築と自分の距離が縮まる展示たち

アートプラザ3階にある磯崎新建築展示室では、磯崎新が手掛けた建築の模型や資料が展示されています。世界各地にある、磯崎新が手掛けた建築の模型を360度でぐるりと見ることができます。

模型自体が美しく、資料という見方だけではなく作品としても見応えがあります。設計資料は建築の成り立ちやコンセプトを知ることができるため、建築をより具体的に感じることができるでしょう。磯崎新がどういう目線で、どう考えていたかを垣間見ることができる展示空間です。

そして展示室の入り口には、なんとたくさんの本が並んでいます。並んだ本は磯崎新が寄贈したもので、建築関係に限らず、磯崎新が集めたあらゆる本が並んでいます。また、じっくりと本を読みたい方に向けて、本棚の近くには磯崎新が設計したテーブルも置かれています。

一目は見ておきたい建築「アートプラザ」

アートプラザは、写真だけでもひときわ目をひく建物で、成り立ちやコンセプトを知ると実際に体験してみたくなるでしょう。時間による変化が想定された設計であるアートプラザは、未来の使い方をも想像させてくれる建築です。

アートプラザ・磯崎新記念館

開館時間: 午前9時~午後10時
2F ミュージアムショップ 午後5時まで
3F 磯崎新建築展示室 午後6時まで
休館日:年末年始(12月28日~1月3日)※イベントが開催される場合は開館
URL: http://www.art-plaza.jp/
住所: 大分県大分市荷揚町3-31