沖縄・読谷村に建つ、建築家・松山将勝が手がけた場所性から導かれる住宅 「海辺のすみか」

福岡を拠点に活動する建築家・松山将勝。沖縄県読谷村に建つ「海辺のすみか」は、家族4人のための住宅です。家族の趣味であるマリンスポーツを楽しめる土地を探してたどり着いた土地に建てられた、自然の移ろいと家族で過ごす時間を豊かに楽しめる工夫が詰まった住まいです。

環境を最大限に生かし、暮らしを楽しむ平屋のような空間構成

Via: https://www.matsuyama-a.co.jp/ | 撮影:石井紀久

敷地は西海岸の風光明媚な集落の中に位置した海辺という立地ではあるものの、グラウンドレベルから海を望む事は出来ない環境でした。家族は趣味のマリーンスポーツが楽しめる土地を探して辿り着いたこの場所で、海面が移り変わる表情や潮風を感じながら過ごす事ができる日常と、家族が寄り添いながら時間を共有できる暮らしを求めました。

そこで、家族が望む暮らしを可能とすると同時に、この場所が持つポテンシャルを最大限引き出す建築手法について検討を重ねた結果、井桁状の構造形式による空中の平屋のような空間構成となりました。

理想の暮らしと気候特性に応える構造形式

Via: https://www.matsuyama-a.co.jp/ | 撮影:石井紀久

また、漁港やその先の東シナ海まで望める高さで決定された建築の骨格は4本の柱によって支持されており、下階(基礎面積)を最小限に留める事でコストへの対応を図りながら、上階は4辺均等に持ち出された構造形式によって生活の機能が集約されています。

Via: https://www.matsuyama-a.co.jp/ | 撮影:石井紀久

具体的には、生活の殆どの機能を配置した上階には、リビングダイニングを中心に居室やテラス、さらには緑のボイドが取り巻くように構成され、南西側に広がる海側の風景を享受しながら開放的な空間へと導かれます。

Via: https://www.matsuyama-a.co.jp/ | 撮影:石井紀久

下階の必要最小限に留めたヴォリュームによって生み出された大きな軒下空間は、家族が希望する屋根付きのガレージやライフワークスペースといった半屋外の機能も兼ね備えています。これは亜熱帯気候という厳しい環境への対策を講じる目的と同時に、密度の高い周辺環境に対して、グラウンドレベルを大きく開放する事で、公の場が拡張するような場の状態を創り出す事を意図しているのです。

立地が導く住宅のかたち

「海辺のすみか」は家族が選んだ”海辺”というまさに場所性から導かれた建築です。下階の軒下空間では子供たちが縦横無尽に遊びまわり、上階では彼方へと広がる水平線と対峙しながら豊かな暮らしが育まれる。環境を最大限に活かしながら、家族の理想の住まい方を実現する住宅です。