建築家・遠藤克彦による屏風型の形状によって生まれる視界と動線がユニークな別荘「軽井沢千ヶ滝の家」

2022年2月に開業した〈大阪中之島美術館〉や公共建築賞にて優秀賞を受賞した〈豊田市自然観察の森ネイチャーセンター〉などの公共施設から住宅といった様々な空間設計を手掛ける建築家・遠藤克彦。遠藤による、中軽井沢から北に広がる浅間山麓の別荘地に建てられた「軽井沢千ヶ滝の家」は、ユニークな屏風型の形状によって生まれる視界と動線が暮らしを楽しくする住宅です。

山々に包まれたサテライトな住宅

中軽井沢から北に広がる浅間山麓の別荘地に計画された「軽井沢千ヶ滝の家」。敷地は東南側への傾斜地であることもあり、旧軽井沢の湿気の多い地域と異なり軽井沢特有の濃霧に囲まれることは少なく、敷地から見える山々が常に視界の大きな部分を占めていました。

オーナーは東京近郊都市に住まうご夫妻で、以前より現敷地近傍に別荘を所有していたこともあり、新たに計画する建物へのオーダーは、「別荘という非日常」をふまえた「サテライトな住宅」としての機能と、敷地を最大限活かした眺望を楽しむ空間とのこと。またオーナーは仕事柄、海外からの来客を迎えることも多く、この住宅にはゲストハウスの役目も要されていました。

周囲の自然と調和するモダンな建築

建築は屏風のような折れ曲がりを持ち、周囲に溶け込むような黒い外観です。正面からみると、開口部は建築下部に小さく設けられているのみで、美術館のような閉鎖的な印象を受けます。若緑や真紅など、四季によって移り変わる周囲の木々や花々の色味が、黒い建築によって引き立ちます。

自然に溶け込んだような一体感を感じるLDK

エントランスは建築の端に織り込まれた可動壁の向こうに配置されています。中へと進むと、外観とは対照的に内部は壁・天井とも白に統一されており、明るく柔らかな印象を与えます。そして、全面開放可能な5枚の引戸によってリビングからデッキへ、そしてそのまま外の自然風景の中へと視界は流れ、外部から内部に向かって段々と開放感が強まります。

山々に包まれたようなビューが魅力のLDKは、高さ4ｍの天井高を有し、吹抜上部は全てトップライトとなっているため、昼夜共に広がりを感じられる空間となっています。読書をしたり食事を楽しんだりと、ゆるやかな時を過ごせそうです。

屏風型の形状によるパブリックとプライベートのゾーニング

また、こちらの住宅では屏風のように折れ曲がった形状によって、パブリックスペースとプライベートスペースを緩やかに切替え、その時々の用途によって空間を使い分けることができます。自身の別荘としてはもちろん、ゲストハウスとしての役割にも、屏風型の形状が有効的に生かされています。

ユニークな形状によって機能性を生み出した住宅

屏風のような折れ曲がった形状によって、パブリックスペースとプライベートスペースの繋がりを作り上げた「軽井沢千ヶ滝の家」。別荘地ならではの開放感と、個性的な形状が生み出す機能性がユニークな住宅です。