ミラノデザインウィーク2022に出展したアップカミングな若手日本人デザイナーの作品たち

2022年6月7日(火)から12日(日)の期間、イタリア・ミラノで家具見本市ミラノ・サローネと共に世界最大とも言えるデザインイベントミラノデザインウィーク2022が開催された。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で例年通りの4月から6月へと開催が延期されましたが、コロナ禍前の2019年ほどとは言わないまでも大盛況のうちに幕を閉じました。

世界を目指す若きクリエイターらを輩出する「bud brand(バッドブランド)」は、3年振りにミラノデザインウィークに出展。今回はフォーリサローネと言われるミラノサローネとしてフィエラ本会場以外で最も注目度が高く、来場者数の多い場所であるトルトーナ地区の路面会場に出展しました。

3年振りにbud brandが出展

DESIGNART TOKYO  2022では、2016年よりミラノデザインウィーク出展を支援しつづけているプロジェクト bud brand AWARD 受賞作品も参加。注目の作品群を展示しました。

例年はトルトーナ地区の日本のグループが多く出展するSuperstudioに出展していましたが、今年はより多くの人が行き交う路面に面した会場を選択。ミラノサローネ本会場以外では最も来場者数が多いと言われるトルトーナ地区でも、一際賑わいをみせていました。

bud brand(バッドブランド)とは?

高い技術力や日本特有の繊細さ、若く斬新な想像力で世界を目指す若きクリエイターらは、日々“日本のデザイン”に誇りを持って創作に取り組んでいます。日本の“ものづくり”の未来を考えたとき、国内のみならず世界でリアルに情報発信できる場所が必要とされています。

bud brandの名前には「つぼみ(bud)+綺麗に咲かせる(brand)」の想いが込められており、才能あふれる次世代のクリエイター達が “日本のデザイン”を世界へ発信できる場として、2016年よりミラノデザインウィークへの出展支援を行なっています。

若きクリエイター達の挑戦をさらに後押しするべく、2020年からはクラウドファンディングを実施。多くの企業・個人の協力のもと、日本の若き才能が世界へと挑戦しています。

2022のテーマは「␣ 」(間・余白)

bud brand AWARD 2022のテーマは“ ␣ ”(間・余白)。テーマの選定には以下の想いが込められていました。

私たちは、“ ␣ ”(間・余白)というものに美学や美意識を持った文化があります。この感覚を活かし現代の状況をポジティブに捉え、“ ␣ ”を中心に、日常がより楽しめるもの、笑顔あるコミュニケーションが生まれるもの、人の気持ちや想いを伝えるもの、豊かさや幸せ癒やしを感じるものなど、世界共通で再定義されつつある“ ␣ ”に新たな(改たな)アイデアとユーモアあるデザインをテーマとしました。

今回見事アワードを受賞しミラノデザインウィークに出展されたプロダクトのほか、多くのユニークなアイディアが注目を集めました。

kagikakko.

机が散らかっていて、集中できなかったり、探しているものを見つけられなかったりして困ったことは誰でもあるもの。Toda Rinaによる「kagikakko.」は、モノとモノの間に置くことで、自分だけの間と余白を作ることができるアイテムです。「 」は日本でのみ使用されている引用符のため、日本らしさを演出すべく、素材にケヤキを用いています。

夢を更新するだるま

伝統的なダルマは、願いを込めて左目を入れ、願いが叶った後、右目を入れるプロダクト。Aoyama Kie,Shimizu Masaharu,Kinoshita Shotaroの3名による「夢を更新するだるま」は、そんなダルマの全体をホワイトボード化したプロダクトです。ダルマの目を本来のダルマが持つ「余白」と捉え、夢を何度も書き換えられるようにすることで、新しい夢の見方を提案しています。

Love 炭

炭を時間をかけ一粒一粒、丹念に削り・磨き、様々なハートのフォルムに整えた、Satake Toshihikoによる「Love 炭」。新型コロナウィルスの影響で失われつつあった「相手を想い合う余白」や「調和」を生み出す火種として、真っ赤に燃えゆくハートの火が、心と心の距離をそっと近づけ、絶えぬ笑顔を灯してくれるようなプロダクトです。

ArrayPolar

Ishigaki Junichiによる、再生フェルトで構成したストレージテーブル「ArrayPolar」。幼い子供たちがどこでも遊び場にしてしまう自由奔放な姿から着想を得た、使い方に余白のある家具です。軽く、床を傷つけず、使い方の自由度が高いため、使い手の想像力を沸き立てます。

cross

Nishihara Kaiによる、日本の伝統的な組木技法である「地獄組」を用いたパーテーション「cross」。視線の角度によってパーツの隙間から見える景色が変化し、空間を緩やかに仕切ることで曖昧な境界を創り出すことができます。また、パーツ同士を無数に連結させることで、空間のスケールに合わせて拡張させることができるため、一つに限定されない用途の余白も魅力のプロダクトです。

tokinari

日本人の持つ「間」という感覚は、非常に曖昧なものですが、大切なものとして意識されてきました。Kondo Chinatsuによる「tokinari」は、時間の「間」をお香と音を使って感じることの出来るプロダクトです。お香は消えても「かおり」は漂い、tokinariの鳴らす音にも余韻が残ります。tokinariは、時の区切り(終わり)をやさしく余韻をもって伝えてくれるプロダクトです。

本棚の句読点

句読点は、文章を読みやすくするために『間』を可視化する記号です。Kamitani Tomoeによる「本棚の句読点」は、本棚を句読点で整理するプロダクト。本棚に句読点が入ることで「間」が生まれ、本を整理することが楽しく、並びの意図が明解になります。

紡ぎ紙

書き連ねた文字、修正のために引かれた二重線など、手書きには、その人の心や背景があらわれます。Ikoma Tomokoによる「紡ぎ紙」は、感想をカバーに残すことで、時間を超えた「心の伝達」を可能にするプロダクトです。作者と私(読み手)、私と未来の私、私と大切な人など、書き込むことでこころがつながるブックカバーです。

世界へ羽ばたくアップカミングなデザイナーたち

独自の視点と、日本らしい感性が生かされた作品が多く見られたbud brand AWARD 2022。コロナ禍を経て、豊かな暮らしを見つめる視点がより研ぎ澄まされた若き才能が生み出すアイディアは、クリエイターのみならず、多くの人にとって気づきと学びを与えてくれる存在となりそうです。