建築家・プロダクトデザイナー黒川雅之が考える「デザイン」の意味とは?
毎週月曜日に2週に渡ってゲスト対談をしている福岡のラジオ放送CROSS FM「ライフスタイルメディア #casa」。今回は建築家・プロダクトデザイナー黒川雅之氏をゲストに迎え、仕事への想いや黒川氏が考えるデザインについて語っていただいた。
「美しいもの」と一緒に過ごしたいと語る黒川雅之
黒川氏は建築家として、またプロダクトデザインやインテリアまで幅広く活動をしている。本人曰く、「まだ若者と変わらないつもりで仕事をし続けている」とのこと。
暮らしの中で大切にしているデザインは何かと伺うと、「美しいもの」と回答した。「何がというよりも、美しいものと一緒に過ごしたい。モノでも風景でもそうだが、役立つもの・役立たないものに限らず、美しいものに尽きる」と説明した。
幼い頃から田舎で暮らし、小川や畑、神社などの近くでずっと過ごしていたことから、基本的に自然が大好きなんだそう。泥だらけになり、太陽を浴びて真っ黒になって過ごしていた少年時代。「自然が一番居心地がいい。田んぼのずっと先に山があって、毎日真っ赤な夕日は降りる姿が感動的だった」と語る。
好きなことをやり続けて、今の道へ
建築家の父の元に生まれた黒川氏は、父の影響や血を色濃く受け継いでいるという。「自分の血の中に、興味や関心、人間好きなところなどがDNAの中に濃厚に潜んでいるのだと思う」
親の職業に反抗する子どもも多いイメージだが、黒川家は兄と弟も建築家になり、3兄弟全員が建築家という職に就くことになった。
近年はドイツの古い城をホテルのリノベーションなど多岐にわたって仕事をしている。その黒川氏にあえて分野を超えた仕事を選んでいるのか問うと、「自分がやりたいことや興味が拡大していった」からなのだそう。
「建築の中には、都市も家具も、小さなプロダクトデザインまで全部含まれている。人間の解剖学から飛行機の設計まで何でもやったレオナルドダヴィンチのように、今は”なんとか屋さん”と専門職にして限ってる方が不自然」
そして黒川氏は、それが「人をデザインする」ことにつながってくると話す。
「ありがたいことに、ずっと好きなことをやり続けている。貧乏したとしても、困難な問題にぶつかったとしても、命を燃やしながら仕事できる。生きてる実感を味わいながら、好きなことやらないといけない」と仕事に対しての価値観を語った。
デザインをしないデザイン
世界の有名な美術館に永久コレクションとして所蔵されてるものが多い黒川氏だが、特に有名なものが 「GOM」シリーズだ。黒川氏によると、「デザインをできる限りしない、デザインを目指している」とのこと。
いい形を作ろうと思わずに、素材の美しさに着目する。そっと素材や材料に語りかけながら作るそうで、それが人間のファッションや心の深いものにあるところと共鳴するのだという。
地面の凹凸による振動を少なくするためにオートバイに使われているショックアブソーバーにヒントを得て、ゴムに着目。「振動を制御するためにゴムが使われていると聞いて、ゴムに対して親密な気持ちになった」そうで、ゴムと語り合いながらモノづくりをしてきたと話した。
インターネット・スマホによる変化をどう捉える?
最近では、中国での仕事も増えているという黒川氏。日本と中国では資本力や作り方、設計の仕方などに障壁を感じることもあるそうだ。
世界もグローバル化が進み、情報が発達した今は「中国に行くみたいにパリも行くし、世界中が1つとして動いている」実感があるという。
地球の反対側に存在する文化も、簡単にすぐ隣で感じることもある。「違う文化と一緒に過ごすことが普通になり、グローバル化と多様性によって人間そのものが大きな刺激と変化を受けるようになっている」と語った。
黒川雅之の「LIFE IS 〇〇(人生とは)」
最後に「LIFE IS 〇〇(人生とは)」を尋ねると、黒川氏は「ウィンド」と答えた。「爽やかで、流れて、自然で止まることがない風のように生きたい」と、これからの未来に意欲を見せた。