灯りと木がつくるあたたかくて心地の良い小さな図書館「セイナッツァロの役場図書館」

前編:光と影を生かした表情豊かなアルヴァ・アアルトによる傑作建築「セイナッツァロの村役場」

アアルトの傑作のひとつでもある「セイナッツァロの役場」。現在は役場の機能が移転となり使用されていないものの、当時食堂として使用されていた部分が図書館としていまもなお活用されてます。今回はその図書館をご紹介します。

サッシがアクセントとなったリズミカルな外観

針葉樹の森の中に佇む赤いレンガの外装の建築。赤い壁面が周囲の樹々の緑と美しいコントラストを生み出しています。高さのある中庭を中心に、コートハウスのようにコの字型に配置された役場棟と南側に配置された図書館棟で構成されています。写真右手の建物の1階部分が図書館。一番光が入る向きに縦方立の連続サッシが並び、他の棟に比べて軽やかな印象を受けます。

木がつくりだすやわらかな空間

中に入ると明るく開放的な雰囲気。日本の図書館のような静かで薄暗い印象はなく、まるで住宅のような心地よさが感じられます。

家具はartekのものでまとめられ、本棚などの造作家具も木でつくられた温かみのあるデザインで、心地よい雰囲となっています。

机の高さに合わせて調整された窓に代表されるような、インテリアを考慮した建築にアアルトらしい細やかなデザインが伺えます。

読書をサポートする照明計画

子ども用のスペースも配され、小さなチェア66が並ぶ様子がとても可愛らしい空間です。天井から吊るされたペンダントランプに加え、卓上の間接照明で子どもの目に優しく、読書に集中できるようにされています。

天井部分には斜がかかっており、連続する柱と梁とその間に設けられたハイサイドライトが「アアルト・アトリエ」とも似ており、取り入れた光が白い天井面で反射され、やわらかな自然光が空間全体を包みます。

等間隔に並べられた照明もデザインが効いていて、シンプルながらもこだわりが伺えます。格子窓や本棚など直線が目立ちがちなデザインながらも、色味や材質をナチュラルにまとめることで、無機質な印象になることなく、親しみを感じられるものとなっています。

光を活用した心地よい読書空間

北欧の光が差し込む窓と、取り込んだ明かりを最大限に活かす斜のかかった白い天井。そこに白木の家具が加わり、いつでも誰でもあたたかみを感じることができる心地の良いアアルトらしい空間が広がっていました。

Säynätsalon kunnantalo – セイナッツァロの村役場

会館時間:12:00~17:00
休館日:火曜日
入館料:€8
URL : https://www.tavolobianco.com/ja/top/
住所:Parviaisentie 9, 40900 Säynätsalo, Finland