世代や国籍を超えた人々を魅了中!tupera tupera 中川敦子さんが語る、作品作りについて。

パートナの亀山達矢さんと絵本やイラストレーションを中心にいろいろな活動をしている「tupera tupera」の中川敦子さん。

そんな中川敦子さんに「tupera tupera」のこと、現在開催中の展覧会「かおてん」などについて、お話を伺った。

暮らしの中で大切にしているデザイン

はじめに、中川さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺った。

「自宅兼、アトリエにしている家かなと思っています。東京を拠点にずっと活動していたんですけど、6年前から京都に移住しまして、その京都で家を作りました。友人の建築家と一緒に時間をかけて作ったので、色々なスケッチを書いたり、こういう部屋の内装がいいな、など細かくアイディアやプランを練って作った家なので、とても気に入っています。」

自宅で仕事をしているため、ほとんどの時間を家で過ごすという中川さん。やっぱり重要だと思ってこだわって時間をかけて作り、愛着が湧いているようだ。

窓から鴨川が見える「自宅兼アトリエにしている家」

続いて、中川さんのお好きな場所や空間は、やはり、自宅兼アトリエにしているお家。

「窓から、京都の鴨川がすごく見えるところなんです。水の流れとともに、季節の流れも感じられて、雨が降っていても、雨が嫌に見えないんです。雨は、雨の景色としてすごく景色として楽しめるし、幼稚園の子供たちが和やかに散歩したりする姿が見えたりとか、その景色がすごく気に入っています。」

「tupera tupera」の役割分担について

Photo : Ryumon kagioka

2002年の活動開始以来、絵本、イラストレーション始め、工作、ワークショップ、アートディレクションなど幅広い活動をしている「tupera tupera」の亀山達矢さんと中川敦子さん。それぞれの役割分担については、こう教えてくれた。

「私たちはパートナーで夫婦なんですけど、役割分担がないのが特徴だと思います。一つの絵を作るのは、コラージュと言って紙を切って貼ってという作業で主に作っています。例えば一つの顔を作るのに、目を亀山が付けたとしたら、次に鼻を私が切って付けて、次は口を亀山がつけて…など、一つの画面の中で二人の手が入って仕上がっていくみたいな感じですね。」

「まあでも、違う人間の二人なので、今年で20周年なんですけど、長くやっていくと、得意分野みたいなところは見えてきますね。アイディアを出したり、ワークショップなどその場の空気などでバッと作ったりするのは亀山の方が得意で、私はテキスタイルなども勉強していたこともあるので、割と空間をレイアウトしたりだとか、色々なバランスを見ながら、デザインしていくような仕事が好きだったりします。得意な方がなんとなく二人の中でリーダーという感じになっています。」

そんな中でも、必ずどこかでお互いの意見が入っている形で、二人で作品作りを進めているそうだ。

海外でも人気作品「しろくまのパンツ」

2019年、やなせたかし賞大賞を受賞したのをはじめ、わくせいキャベジ動物図鑑、数々の賞を受賞した「しろくまのパンツ」は日本国内のみならず、フランス版、アメリカ版など実に10か国で出版されている。その理由や、反響についてどんな風に捉えているのだろうか?

「嬉しくて本当にありがたいことです。ただ私たちの作品は、自分たちの内にある思いを芸術作品としてどうだというよりかは、相手がいて、誰かに届けたいなあ、びっくりさせたり、和ませたりしたいなという、そういう思いで作品を作っているので、賞をいただいたこと=たくさんの人に届いたからそういう賞をいただいているんだなという結果だと思うので、それがすごく嬉しいなあと思います。」

「海外は、実際どういう風に楽しんでいただけているか、まだ見に行くことができていないんですけど、自分たちよりも先に絵本たちが知らない国に出かけて行って、会った子もないような親子だったりの間に入って、笑顔を生んだりだとかどうしているのかなと思うと、自分たちが逆にその絵本にジェラシーを感じてしまいますね(笑)」と、話し、励みになっていることを教えてくれた。

現在、福岡市美術館で開催中「かおてん」の内容や見どころ

2022.07.01〜08.21まで福岡市美術館にて行われている展覧会、「かおてん」。

内容や見どころについて伺うと、「かおをテーマにした展覧会になっていて、今回は絵本原画も、かおを切り口にした視点で選んでいます。普段私たちがどのように作っているかというところも間近で見てもらえると嬉しいです。また、立体作品のようなものもあって、のぞいて見たりとか、表と裏であっと驚くような仕掛けがあったりとか、普通に見せるだけでない工夫もしています。」

「そして今回は、大きな立体作品やアニメーションにも挑戦していて、見にきた人が体感できるような展覧会になっています。来場者は、かおシールを顔に貼って、普段とは違う自分に変身して会場にはいり、“かおルーペ“を使って会場内にあるたくさんの顔を探したり。大きな顔の一部になって写真が撮れたり。色々自分から参加できるような形の展覧会です。」

見るだけでないは展覧会は、来場者の胸を高ならせていることだろう。

一人一人違う、顔の魅力

「tupera tupera」にとって顔はアイディアの源泉であるそうだが、具体的に顔のどのようなところに面白さを感じているのだろうか?

「なんでも顔に見れちゃったりだとか、1つものがあるとそこに顔をつけてみたくなったりだとか、“顔病”みたいなものになってしまっているんですけど…(笑)。改めて、この展覧会をやってみて、顔って本当に面白いなと思いました。顔は、一人一人違うわけですよね、絶対同じ顔はいなくて、生まれてきた時に顔を選ぶこともできない。誰でも、自分の顔が好きだとか嫌いだとかあると思うけれど、同じ顔の人でもその時の気分によって違うように見えたり、生き様とか、これから自分がどういう顔で生きていきたいかは自分で決められるじゃないですか。そういうところが顔の魅力、面白いところだなと思っています。」

コロナ渦によっての活動の変化

数々の人々の生活を大きく変化したコロナウイルス。中川さんたちは、コロナ渦によって活動はどのように変化したのだろうか?

「この“かおてん”は、全国を巡回中なんです。東京でスタートした時がちょうどコロナが始まったときでした。やはりイベントや展覧会、そういうことはしばらくは難しかった時期もありますが、『お家時間が増えたから、お家時間で楽しめる何かアイディアはありませんか?』とかそういう形でいろいろな企業やお仕事先で依頼をもらったりだとか、オンラインなどを使ってやってみたりだとか…。そういうことを続けてきたので、世の中的にはコロナで色々なことが変化したけど、私たちはすごく困ってしまったり、活動が止まったことは特になかったですね。」

そういう状況の中で、HAPPYになれること、面白がれることを探しながら、続けてきたそうだ。

LIFE IS “出会い”

インタビューの最後、中川さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると「Life is 出会い」と答え、

「今はそれこそ顔の見えない出会いなどもありますが、やはり私たちは顔が見える出会いが好きで、人と人だったり、人でなくても、“もの”に出会ったりとか、音楽に出会ったり…。やはりそういう生の出会いが好きなんです。そういうことによって自分たちも活動を広げてきたし、人生が豊かになっていくことを経験してきたので、こういう時代だけどこれから先の子供達が、そのような“生の出会い”が増えていってほしいなと思っています。」と話し、インタビューを終えた。

こうして、中川さんと亀山さんが作りあげた絵本や作品たちが、世代や国籍を超えた様々な人々の心の中に生き続けているのであろう。