【casa cube 開発秘話】プロダクトデザインの発想でニーズに応えた新発想の商品住宅

注文住宅のコスト・労力・工期問題に苦労し続けた末、「住みやすく、本当にいい建物が低価格で買えるなら、注文住宅じゃなくていいのではないか?」という考えから住宅の商品化に乗り出した眞木氏。デザイン性や快適に暮らすための機能性など注文住宅の良さはそのままいかしながら、建売のように商品化(規格化)することでリーズナブルな価格を実現している。「casa cube」がどのようにデザインされていったのかを開発者の眞木氏と設計士の梶原氏が語ってくれた。

 

【眞木健一】1967年福岡県生まれ。地元の高校を卒業後、アメリカの大学に留学。20代前半から工務店の仕事に取り組みながら、世界の住宅の性能を学び、日本の匠たちの職人技を大切に守る「遺す家」に取り組んでいる。『新築を超える中古マンションリフォーム』(書肆侃侃房)、『住宅革命』(WAVE出版)など著書多数。最新刊は2016年2月出版の『More Better Life 豊かに暮らすということ』(書肆侃侃房)。
【梶原清悟】1976年生まれ。大分県出身。2000年MAKIHAUS(株)入社2010年退社。2010年に独立しFANFAREco.,ltd.(株式会社ファンファーレ)を設立、同社代表取締役。福岡・博多を中心に活動中。

家の向きを気にしないトップライトの画期的プラン

構造はコストを大きく下げられるであろう四間真四角。1間(₌1820ミリ)というモジュールは、プレカットや運搬の面で無駄が出ないことからコスト削減でき、真四角という形は無駄な空間が生まれにくいだけでなく構造的にも頑丈になる。商品化するとなれば、全国どこでも建てることができ、玄関がどの向きであろうと対応できることが前提だ。

そこで着目したのが「トップライト」。採光は取れるため家の向きを気にせずにすむばかりか、照明をつけずとも曇りの日でも明るい室内を実現できる。眞木氏の頭には安藤忠雄の『住吉の長屋』が思い浮かんでいたという。

通常でも採光が取れない場合付ける事はあるため、特段目新しいことではないが『トップライトの住宅』を企画商品化するというのは眞木氏ならではの発想だ。

しかしトップライトだけでは不十分。採光と通風はどうするか?そこで梶原氏の出した案が縦スリット窓のプラン。このデザインが「casa cube」の顔となる。

縦スリット窓にすることで得られる多くの利点

縦スリット窓は一見閉ざされた雰囲気で通風や採光など物足りないのでは?と感じるが、実は利点が沢山あるという。外壁は1、2階を通した縦ライン状のデザインにすることで雨だれの汚れを解消できる。人の入れない細さにすれば防犯にもなり、外部からの目線やプライバシー保護の観点でもコストをかける必要がないという。また壁量も多くなる事から「飾る」ことができるため、自分らしい家を演出する楽しみもできるだろう。

通風に関しても、ウィンドウキャッチャー(扉状に開く窓)にすることによって、建物のの外側を流れる風をどんどん中に取り込めるため、風は入りやすく夏でも涼しいと梶原氏はいう。

限られた光をより自然に家の中に取り込む内装の工夫

天窓はあるが窓は小さい。できるだけ自然に家の中を明るくするために、光をより乱反射させるホワイトは何かを追求し壁や床を真っ白になっている。エンボスが入ったような床材は、ホコリや髪の毛といったゴミを目立たせない。

美しいデザインは「削ぎ落すこと!」

「デザインは削ぎ落し尽くせば絶対美しいものになる!」とお二人は言う。少しでも閉鎖感を排除するため、枠や幅木のディテール感にこだわり目に付く線はできるだけ消されている。その効果で隣の部屋との境界がなくなり、スッキリとした印象で部屋も広く感じられる。

また照明も後ろスペックの間接照明になっている。明るく開放的な昼間とは表情を変え、夜はムードのあるくつろげる空間を演出できる。

下がり壁をなくし、建具を天井高まであるものにしたことで、扉を閉めているときは一面壁のようにスッキリとして見え、開けているときは下がり壁による区切りがないため、隣の部屋へと空間が続くように感じることができるのだ。

商品となると建材も全国で扱えるものでないと意味がない。そこでサンゲツにあるラインナップの中から一番要望を満たしているものに更に手を加えオリジナル品番が作られている。

職人技が生きるシンプルで美しい外壁

職人が手間をかけ丁寧に塗っていった左官仕上げの壁は、重厚感があり美しいというだけではない。耐震性・耐火性・耐久性にも優れメンテナンスフリーのため、安全且つ光熱費や修繕費といった生涯コストも抑えられるのだ。

 

日本は土地が狭いため限られた空間をいかに工夫するかが課題であるが、「casa cube」は素材や採光の採り方、仕様など細部までこだわり工夫することで、機能性とシンプルな美しさを兼ね備え、生涯コストも抑えられるプロダクトデザインに仕上がった。

次回はさらに詳しいコスト削減の秘密と、casa cubeをどのようにプロモーションしたのか、そして住宅だけには納まらないcasa cubeの可能性に迫る。