他者への思いやりが感じられる、人にも自然にもやさしい空間「聖クララ教会」

その気候や風土、さらに戦後コンクリートが広く普及した経緯などから、和風とも洋風とも異なる独自の様相の建築が多く見られる沖縄県。島南部に位置する与那原町には、沖縄の戦後復興の一翼を担ったフェリックス・レイ司教が創立した「聖クララ教会」が建てられています。現在も、沖縄のために奔走した司教の遺志を受け継ぐシスターたちが、ここを拠点にさまざまな活動を行っています。

米国主導で建てられたカトリック教会

沖縄県与那原町の高台にある聖クララ教会(カトリック与那原教会)は1985年、米国から訪れたフェリックス・レイ神父の主導で建てられました。設計は当時在日米軍陸軍技術部隊建設部に所属していた片岡献。現在アメリカで最大級とも言われる建築設計事務所「スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル」(略称SOM)の協力を得て建築されたと言われています。当時は太平洋戦争末期の地上戦で多くの土地が荒廃していた時期でもあり、米軍から無償提供された資材も多く、今も手すりには当時米国で使用されていた角形の異形鉄筋が使われています。修道院としてはクララ修道院以外に、与那原第一修道院、与那原第二修道院が併設されており、どの修道院も現在も使用され続けています。沖縄県内で唯一、建築名選100選に選ばれており、島内外から観光客が訪れる人気の施設です。

沖縄の風土に溶け込む穏やかな建築

広々とした敷地内には様々な木々が植えられ、多くの花壇に咲く花々が彩りを添えます。

入り口から進み、修道院を左側からまわるように進んでいくと見えてくるのが、花ブロックとステンドグラスが印象的な聖クララ教会です。

建築は鉄筋コンクリート造で、北面にステンドグラス、西妻側の花ブロック、中央の屋根が低くなっているバタフライ屋根がの外観が特徴です。

何本もの梁がバタフライ屋根を支える礼拝堂内部は両側全面ガラス張り。

北側一面はステンドグラスになっており眼下には与那原の街が広がります。リズミカルに配置されたモザイク調のステンドグラスが、モダンな美しさを演出しています。

陽射しの強い南側は中庭と回廊が配置され、最小限の高さに設計された窓は直射日光が室内に降り注ぐことを防いでいます。

屋根は祭壇に向かって斜めに高くなっており、後方からでも祭壇が近く感じられます。

人にも環境にもやさしい設計

建築にはデザイン性のみならず、ここに集う人々を考慮した優れた機能性も多く見られます。病気療養中の信者がベッドに寝たままミサに出られるよう祭壇の脇に病室が設けられていたり、修道院内の廊下が高齢者でも歩きやすいようスロープになっていたりと、ここを訪れる様々な人々を想像し、それぞれに細やかな配慮がされています。

また、広い平屋根の屋上に雨水を集め、それを地下にある10トンの貯水タンクに貯めることで、トイレや洗濯など生活用水として使えるような環境に配慮した仕組みも。半世紀以上も前につくられた建築にもかかわらず、当時から人にも環境にもやさしいつくりとなっていたのです。

他者へのやさしさが伝わる空間

色とりどりのガラスが光を通して床や壁に映し出され、訪れる人々をやさしく包む「聖クララ教会」。日射と通風を可能にする花ブロックや、畳式と椅子式の座席など地域性も取り入れた建築は、作り手の想いが感じ取れるやさしい空間となっていました。

聖クララ教会
URL : http://www.naha.catholic.jp/yonabaru_church.html
所在地 : 〒901-1303 沖縄県与那原町与那原3090-5