赤い列柱が空間を形作る、沖縄の風土を取り込んだ象設計集団の代表作「今帰仁村中央公民館」

独特の気候と文化背景から数多くのユニークな建築が見られる沖縄。島北部に位置する今帰仁(なきじん)エリアには、沖縄の風土と建築文化を尊重した象設計集団が手掛けた「今帰仁村中央公民館」があります。コルビジェに師事した吉阪隆正から強い影響を受けたとされる彼らの建築には、沖縄の風土に対応する独自の試行が見られました。

モダン建築の先駆け 今帰仁村中央公民館

1975年竣工の今帰仁村中央公民館。真っ赤な柱と中庭に続く開放的な半屋外のデザインが特徴の建築です。完成から2年後の1977年には芸術選奨文部大臣新人賞芸術選を受賞したほか、近年では「日本におけるモダン・ムーブメントの建築197選」に選ばれるなど注目されています。

吉阪隆正を師に持つ象設計集団

1971年、コルビジェの弟子としても有名な吉阪隆正の下にいた大竹康市と樋口裕康、富田玲子、重村力、有村桂子の5名によって発足された建築家集団。設計上の原則として、「場所の表現」「住居とは何だろう? 学校とは? 道とは?」「多様性」「五感に訴える」「自然を受けとめ、自然に親しむ」「あいまいもこ」「自力建設」という7点を掲げており、東南アジア地域の気候や風土に順じた人々の伝統的生活形態や建造物のあり方から得た知見を多く取り込んでいるのが特徴。彼らの初期の活動の舞台が沖縄であり、代表作には日本建築学会賞を受賞した名護市庁舎(1981年)があります。

赤い列柱が構成する半屋外空間

入口を入ると、広い芝生をコの字に囲むように建物が配置されています。建築は沖縄の民家にしばしばある「アマハジ」と呼ばれる半屋外の空間をモチーフに、コンクリートブロックで化粧された500mm角、2,250mmスパンで並ぶ277本の赤い柱によって内外を緩やかに仕切るような緩衝空間によって構成されています。

この林立する柱の間に、分散して事務所やレクリエーションコーナーなどの諸室が配置された構造となっており、これらは一枚のRC打放しの大屋根に覆われています。

分舎的に配置された各室または各室を取りまいた柱によってできるアマハジという空間や、大屋根と柱だけで構成されるアサギといった伝統的な建築手法を多く取り入れることで、内とも外ともつかない空間を生み出しているのです。

ここでは食事会や、討論会、昼寝、展示会、大工仕事など、用途に捉われない多彩なアクティビティが可能になり、この半外部的空間は縁日の参道のような場として機能します。このように建物の内部と外部といった区分けをなくすことで、人々を打ち解けさせるような場となるのです。

散りばめられた要素が伝える刻と季節の移ろい

大屋根一面を覆ったパーゴラに這わせたウッドローズやブーゲンビリアは、季節の表情を豊かに彩ります。

床や屋根裏、軒先や梁に埋め込まれた貝がら模様は、潮風とともに海のざわめきを伝え、ひとつひとつ埋め込む手仕事のあたたかさを伝えてくれます。


日時計や列柱は1日の太陽の動きを的確に捉え、建物に深い陰影を与えます。パーゴラの頂上ではアルミ製の山バトが軽やかに動き回り、季節風のありかや夕涼み用の風の方向を教えてくれるのです。
大屋根に星座の形に打ち込んだガラスブロックは夜空の満天の星を連想させるだけではなく、昼には淡い光を室内に落としてくれる。
様々な手法で外部を内部に引き込むことにより、それぞれの境界は曖昧になり、無限に外に向かって拡がって行くような建築空間となっています。

半屋外空間が促進する人々の交流

沖縄ならではの風土と文化を取り入れた、内と外との緩やかな繋がりが人々の交流を促す「今帰仁村中央公民館」。風を通しつつ強い光を遮る赤い列柱が作り出す空間は、地域の気候、風土、文化、生活など綿密なリサーチによって生み出された、その土地の固有性を映し出したような建築となっています。

今帰仁村中央公民館
開館時間 : 8:30-22:00
休館日 : 土日祝

URL:https://www.nakijinson.jp/spot.php?id=159&ct=1
所在地:〒905-0401 沖縄県国頭郡今帰仁村仲宗根